(2)チルトローター機の共通点-1
チルトローター機のローターの回転方向は、オスプレイと同じ方向しか考えられません。
実際、オスプレイ以外のチルトローター機であるバローやAW-609も、同じ方向に回転しています。
シングルローターのヘリコプターのローターの回転方向は、アメリカのシコルスキー社製は、上から見下ろして反時計周りに回転します。
ところが、フランスのエアロスパシアル社製は、シコルスキー社製とは反対の時計周りに回転します。
タンデムローター機も、ローター同士は反転しますが、回転方向自体は制約がありません。
例えば、シコルスキー社のCH-47は、前が反時計回り、後ろが時計回りですが、ロシアのYak-24は、前が時計回り、後ろが反時計回りと、シコルスキー社製とは反対の回転です。
ヘリコプターでは、ローターの回転方向に、制約はないのです。
でも、チルトローター機の場合、逆回転はあり得ません。
左翼のローターは、正面から見て時計回り、右翼のローターは反時計周りです。
この理由を理解している人は、かなり少ないだろうと思われます。
と言うのも、チルトローター機のローターの回転方向についての解説を、私は見たことがありません。
解説されているのは、反動トルクを打ち消すため、左右が逆回転している事までです。
それ以上の解説は、見たことがありません。
なので、自力で考える力がある人か、当ブログを見た人くらいしか、チルトローター機のローターの回転方向がこの方向である理由を知らないはずです。
左側面から主翼断面を見た時、主翼の表面を時計回りに流れる気流があると、考えることができます。
つまり、主翼前縁では、気流は下から上へ向かう流れとなっています。
この流れが強いほど、揚力は増します。
チルトローター機は、ローターブレードが長く、主翼の長さとほぼ同じです。
そのため、ローターブレードが起こすプロペラ後流の影響を、受けやすくなります。
オスプレイの左翼を例に考えてみましょう。
オスプレイの左翼のローターは、時計回りです。
よって、プロペラ後流も、時計回りの渦を作ります。
プロペラ後流が時計回りなので、主翼がある側のプロペラ後流は、下から上への流れになります。なので、主翼前縁には、プロペラ後流の下から上へ向かう気流が、同方向に重なります。
前述のように、主翼の前縁を下から上へ流れる気流は、揚力を大きくします。
オスプレイだけでなく、全てのチルトローターが同じ方向にローターを回転させるのは、この方向なら揚力を強める働きがあるからです。
逆の回転では、主翼の前縁には上から下へ向かう気流がぶつかり合うため、本来より揚力が小さくなります。
態々、揚力が小さくなる方向にローターを回すような、愚かな設計はしません。