2024年3月24日に公表された宮古島での陸自ヘリの墜落(2023年4月6日)の事故調査は、疑問点が多く残る内容でした。
これまでに上げた疑問点を羅列してみます。
・2023年5月24日公開の音声は、それぞれ、どのタイミングの音声なのか?
・警報音は、どんな異常を伝えていたのか?
・エンジン・ロールバックは、異常音が聞こえるのか?
・エンジンの異常音は、第2エンジンなのか?
・ロールバック発生から20秒で第2エンジンは停止したが、異常音も消えたのか?
・「高度を保とう」の前には、どんな会話があったのか?
・高度維持に注力する状況について、パンパンやメーデー発信の相談はないのか?
・警報音に対して、故障部位の確認の声は録音されていなかったのか?
・「あっ」は、何時何分何秒に記録されていたのか?
・激突音は、録音されていなかったのか?
・56分00秒の「緊急操作」とは、右エンジンの緊急操作(停止操作)か?
・緊急操作は「最終確認」とあるが、前回の「緊急操作の確認」は、いつか?
・昨年5月公表の会話との位置関係は?
・CVRはマイク毎にチャンネルを持つが、どのマイクで何が録音されていたのか?
・3度も確認の会話をしているが、実行したのか?
・オートスロットルをオフ(手動)にする目的は、何か?
・右エンジンのシャットダウンで、オートスロットルのオフが必要なのか?
・そうなら、なぜ右エンジンのシャットダウン・チェックリストに含まれていないのか?
・ロールバックで、エンジンの異常音を発するのか?
・ロールバック開始時に、警報は鳴るのか?
・右エンジンの出力がなくなった時、ローター駆動系から切り離されたのか?
・右エンジンが推力を失うか、切り離された際に、警報はなったのか?
・エンジンの異常音は、左エンジンからではないのか?
・右エンジンのロールバックで、ローター回転数は低下したのか?
・オートスロットルをオフ(手動)にする目的は、何か?
・右エンジンのシャットダウンで、オートスロットルのオフが必要なのか?
・そうなら、なぜ右エンジンのシャットダウン・チェックリストに含まれていないのか?
・右エンジンが切り離されると、自動的にオートスロットルはオフ(手動)になるのか?
・確認した時には、オートスロットルは、オフに切り替え終わっていたのか?
・オートスロットルは、オフ(手動)にしたのか?
・オートスロットルは、自動的にオフになったのではないか?
・オフにしたのなら、操縦士は二人とも認識できていたのか?
・オートスロットルの切替を相談する前に、オフにしていなかったか?
・オートスロットルをオフにした後、オンに戻そうとしていないか?
・オンに戻そうとした際、オンになったのか?
・スロットルレバー操作は、どちらが担当するのか、確認していたのか?
・スロットル操作は、適宜行われてていたのか?
以上が、これまでに上げた疑問点の一覧です。
大きくまとめると、一つが、ボイス・データ・レコーダとフライト・データ・レコーダの内容の間の疑問点、もう一つは、コクピットの会話と実際の操作の間の疑問点です。
今回は、主として後者を見ていきます。
過去に、同型機のロールバックの記事を見つけたので、読みました。
この記事でわかったことは、「ロールバック」は、エンジン出力がアイドリングまでロールバック(戻される)する現象であって、それを引き起こす特定の原因があるわけではないようです。
単純にエンジン出力が低下するだけなら、「ロールバック」は特別な異常には思えません。
ロールバックを、他の要因によるエンジン出力低下と区別する理由があるのか、態々に「稀な現象」と言う必要があるのか、疑問に感じます。
更には、「2基のエンジンが相次いで出力が低下する例は初めて聞く」との防衛省の発表ですが、前述の例では、2基同時のロールバックです。
防衛省が初めて聞いたのは、同時ではなく、相次いで出力が低下したことでしょうか。
防衛省の「右エンジンの停止はロールバック」との見解に、説得力を感じません。
さて、前述の事例では、ECU(エンジン制御ユニット)の過熱が、推定されたようです。
防衛省の発表にも、「エンジン制御装置へ空気を送り込む管の詰まり」がありますが、冷却の送風管の詰まりのことのようです。
前述の例では、エンジンの出力が低下しただけなので、エンジンの異常音はなかったようです。
こうなると、「エンジンの異常音」は何だったのか、気になります。単純に、燃焼音の変化、または脱調した後の回転数の低下を、表現したのでしょうか。
どちらにしても、ロールバックの原因は、サッパリわかりません。
ロールバック発生時の対処方法は、通常の片肺飛行と違いはないように思います。
むしろ、火災や振動等がないので、対処は落ち着いてできそうに思います。
手順は、片エンジン停止時の手順であり、今回なら、右エンジンを停止して、片肺で飛行するだけです。
その手順に、オートスロットルの手順があるのでしょうか。
おそらくは、ないでしょう。
手順あるなら、オートスロットルの手順について話した後に、右エンジンの緊急操作を話すはずがありません。
ロールバック発生時、高度300mの低空を飛行していました。
通常の右エンジン停止手順をしている間に、危険な高度まで降下してしまうと考え、その前に左エンジンの出力を上げやすいように、オートスロットルをオフにすることは、考えられないでしょうか。
機長以外の乗員の誰かが、そんな風に考え、オートスロットルをオフにしたことは、考えられないでしょうか。
左エンジンの出力は、15時55分21秒からの数秒間に、一気に下がっています。
その後、30秒近くは、ほぼ一定の出力を出しています。
その後、ゆっくりと出力が下がっています。
これは、スロットルが放置されていたと考えても、説明できます。
15時55分21秒にオートスロットルをオフにしたなら、そこからスロットルレバーに相当する出力まで低下したと考えることができます。
もし、出力の単位がkWなら、軸トルクと回転数と定数の積になります。
コレクティブ・レバーを引けば、エンジンの回転数は下り、スロットル開度に変化がなくても、kW単位の出力は下がります。
高度の変化を見ると、55分21秒から急激に降下しますが、20秒余り後に降下のペースが鈍くなっています。僅かに遅れて、エンジン出力も低下しています。
コレクティブ・レバーを引いて高度を維持しようとしていたなら、出力の変化を説明できます。そして、昨年5月に公表された「高度を維持しよう」との会話にも、繋がります。
事故の流れは、次のようなものではなかったかと、私は推測しています。
15時54分44秒:右エンジンのロールバックが始まる。
15時55分04秒:右エンジンの出力がゼロになる。
15時55分21秒:オートスロットルを手動に切り替えたが、操縦士は知らなかった。
15時55分25秒:スロットルレバーの位置までエンジン出力が低下し、安定する。
エンジン出力が足りないため、高度が下がり始める。
15時55分54秒:高度を維持しようと、コレクティブ・レバーを引き上げた。
エンジンの負荷が増えて回転数が下がり、出力が低下し始める。
15時56分09秒:ローターブレードが失速し、一気に揚力を失った。
これは、私の推測で、事実かどうかは不明です。
私が知りたいのは、事故の詳細な経緯と、それを基にした再発防止策です。
上記の推定は、左エンジンの出力の変化がオートスロットルをオフにしていれば、説明できると思います。
オートスロットルの状態は、フライト・データ・レコーダに記録されているはずです。
記録されているなら、是非、公開してほしいところです。
記録の対象外なら、その旨を、公開してほしいところです。
また、出力の単位、若しくは計測方法も、公開してほしいところです。
これらが公開されれば、私の推定が正しいか、間違っているか、わかるでしょう。
私は、誰がオートスロットルをオフに切り替えたのかには、興味はありません。
知りたいのは、オートスロットルの切替が原因なのか、それ以外に原因があるのかです。
それがわかれば、防衛省の対策が効果のあるものか、効果を期待できないのか、見えてきます。
国民にも、UH60JAが安全に運用されているのか、チェックする権利はあります。
私達の頭の上に落ちてこないのか、チェックする権利はあります。
また、自衛隊員も日本国民です。
同じ日本国民である自衛隊員が、安全に任務に就けるようにしなければなりません。
これを踏まえた上で、続報を期待しているのですが・・・
仕方がないので、私目が・・・・・〈次回〉・・・・・
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