その信号を伝える役割をもつ、METという受容体型チロシンキナーゼがあります。
METは、腫瘍の増殖に関与しています。
MET活性の調節不全が腫瘍の転移を引き起こすといわれています。
さて、このMETは、どのように調節されているのでしょうか?
前回も取り上げました下記Hector Peinadoさんたちの論文から引用してみます。
Melanoma exosomes educate bone marrow progenitor cells toward a pro-metastatic phenotype through MET. Nature Medicine.18, 2012 June: 883-891
この題名は、おおよそ次のような意味になります。
メラノーマのエクソソームが、骨髄の原始細胞を教育し転移する前状態に導く。
そこにMETが介入しているようです。
すなわち、がん細胞由来のエクソソームは、骨髄の細胞を転移しやすい状況を作るように教育するということです。
この教育された骨髄細胞をBMDCと名付けました。( BMDC: Bone marrow derived cell )
その根拠となるのがつぎの実験結果です。
まず、悪性度の高いメラノーマのエクソソームをマウスに28日間注射します。
高悪性がんのエクソソームで教育されたBMDCをつくるためです。
その後、その教育されたBMDCを取り出します。
放射線によって骨髄細胞を亡くしたマウスに、教育されたBMDCを移植します。
4週間で新しい骨髄ができます。
皮下に低悪性メラノーマの細胞を移植してがん病巣をつくります。
原発巣です。
教育されたBMDCをもつマウスと、通常の骨髄をもつマウスを比較しました。
原発巣は、ともに大きくなりましたが、30日で、前者が1.2c㎥、後者は0.7 c㎥でした。
新たに動員されたBMDCは4.3倍、血管の増加は3倍の違いがありました。
肺転移は3倍、肺内のBMDCは2倍の違いがみられました。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140708/08/imsyamatomam/82/27/j/o0649045912996727731.jpg?caw=800)
このように、高悪性のエクソソームに教育された骨髄細胞は、悪性の性質を受け継ぐように働くということがわかりました。
エクソソームは、METを調節してがんの増殖や転移において大きな働きをするようです。