コンタミネーション粒度分布測定装置 誕生秘話 その3 | 顕微鏡画像処理解析システム設計者のブログ

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 目視検査などの自動化装置をシステム設計・製作エンジニアです。

 光学機器や画像処理解析装置、アルゴリズムについて、徒然なるままに記述していきたいと思いますので、ぜひご覧ください。

初号機(1995年)で開発した、もしくは採用した、従来製品や他社製品には無い特長は次の通りです。

①走査方式
試料であるメンブレンフィルターは直径47mmおよび55mmです。
これらの全域を、光学顕微鏡有効視野(約6.4mm*4.8mm)で走査し、過不足無く粒子を測定するための走査方式を新規開発しました。

②カメラの強制調整
それまでの機材ではカラーカメラを採用したものであっても、カメラ調整の頻度は低かった(画面がおかしいな?と、思ったら実行する程度)。
初号機では測定毎にカメラの調整を強制するようにしました。これも以前の会社での経験があったからこそ、その重要性を認識できました。
カメラを適正に調整できていないまま測定を実行すると、画面全体の明るさや色合いが適正でないため、測定結果が正しく取得できません。

③無停電電源装置の採用
電源供給が不安定であると、光源その他機材の能力が不安定になります。
本機材では、常時インバータ方式の無停電電源装置を採用しています。


大手自動車部品メーカーさまから受注した装置(1999年)のために、新たに開発した、もしくは採用した特長は次の通りです
①画像前処理方法、金属粒子の認識方法
従来装置では原画像を単に2値化して、「白粒子を金属粒子、黒粒子を非金属粒子」と、定義されていましたが、実際には背景の明るさや照明ムラによって、正しく粒子を検出することが困難でした。
本機材では背景の明るさムラによらず安定的に粒子を検出する方法を開発、また一部分しか光沢を示さない金属粒子を1個の粒子として認識する画像処理アルゴリズムを開発しました。

②粒子個数総数の安定的測定
従来装置において「金属粒子と非金属粒子の個数の総和」は、正しくないことの方が多かった。
理由は簡単で「独立したパラメータで金属粒子と非金属粒子を検出したため」と、「金属粒子が複数の粒子として検出されるため」でした。

この両方の問題を解決しました。
 ヨーロッパで開発された「コンタミネーション粒度分布測定装置」は日本のユーザー様ご要望レベルとは異なっていたため、上記のように私が新たに開発したわけですが、輸入販売業社である前職では会社の都合により積極的に営業できなかったにもかかわらず合計6社さまにご購入いただけました。

 なお、ここまで述べた機能などについては、2005年の自動車部品工業システム展に出展および講演した情報です。

さて、弊社製品のMRIMS Ageno F-50 においては、さらに機能と信頼性が向上している。具体的に挙げると以下の通りです。

①カメラ調整操作の完全自動化
カメラ調整操作は測定毎に実行しなければならないのもだが、人為操作である場合それが正しく実行できたという保証を得るのが困難でした。
MRIMSではこの操作を完全自動実行するため、測定操作におけるヒューマンエラーの危険性を低下できました。

②自動ズームアップリロケーション機能
電動ズーム顕微鏡を無人制御し、検出されたコンタミネーション粒子のズームアップ画像を自動で得られるようになりました。

③無段階ズーム機能
従来は測定を定倍率でしか実行できませんでしたが、ズーム可能範囲全域での空間較正を自動実行できるようにしたため、測定時の倍率も任意に設定できるようになりました。
このことにより、1台の装置で広範囲の大きさの粒子測定が実行可能となりました。

④結果データ管理機能
測定結果はデータ閲覧機能によっていつでも確認することができ、同一製品について任意のパラメータ(粒子径や面積など)によってトレンドグラフを作成する機能を有します。
 現在弊社では更なる機能向上を目指し、「磁性金属粒子判定機能」の付加を研究しています。
 最終的には金属粒子の組成同定が目的であるが、そのためにはもう少し時間が必要です。