手作り豆腐 | 版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

                            手作り豆腐
版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-手作り豆腐


                                             自彩菜酒処「渓」



壊れた鍋に水が張ってあった


中には大豆らしき豆が見える


パンパンである


一夜に掛けて膨らんだのだろう


私はしばし眺めていた


膨らむところが見たい為である


しかし・・・変化は見られなかった


人間の目の限界か?


「ふ・・」肩を持ち上げ、両手を開いて、再び眠ることにした




今日は水曜日である


観光地の休日であった


休みの日は寝るのが一番である


休日に起きているとオヤジに怒られるのだ


起きていたら腹も空くし、なんやかんやと無駄だと言うのである


流石戦時中を乗り越えてきただけの事はある


しかし一度目が覚めると中々眠れないのも人間である


そして何より・・・


あの豆が気になってしょうがないのである




再び調理場に向かうとお袋たちがテーブルを囲んでいる


住み込みのおばちゃんと遅い朝飯を食べているのだろう


「まるでブランチですね」軽く声をかけた・・すると


「誰が豚の家だって」お袋に怒られた・・・


それはブタンチである・・・見方によっては見えない事もない?




ブツブツ言って豆を確認した


気のせいか一段と大きくなってきた様に思える


「この豆、どうするの?」聞いて見た


「え?豆が何だって」知らない様子である


多分オヤジが浸しているのだろう




そういえば山原屋旅館の板さんと手作り豆腐を名物にしようと話していたのを思い出した


私は興味津津であった


こんな山奥で名物を創り出そうと言うパイオニアオヤジたちを尊敬した


そして私も剛次郎たちと研究会と称して「ネーアナタ」のランチを食べに行くのであった




「・・と言う事なんだ」最近覚えたピザを片手に説明をした


「へー大豆から自家製豆腐を作るのかー」


「そうなんだよ俺たちも考えようぜ」





剛次郎もタバスコの使い方を覚えたらしい


テーブルの上に十円玉が置いてある


スキを見てはタバスコを振りかける


山の温泉の若者のブームとなっていた


「おー!ピカピカだっぺ」


歓声が上がる


「シ―」



奥でチョビ髭のマスターが睨んでいる


何でもタバスコの減りかたが5倍くらいになったとマスターが嘆いているそうだ


八百徳のゲンさん情報だが卸しているので信憑性は高い


何故か嬉しそうに話していた




ゴルフのショートコースを回り家路についた


今度は調理場でパイオニアオヤジたちがたむろを巻いている


山原屋旅館板前の羽柴さんとたぬき屋物産店の椎名さん、そして親父の3人である




「どうしたんです?暗いですよー」


冗談でなく本当に暗い雰囲気である


「どうすんべ」・・オヤジ


「しょうがなかっぺ」・・ムジナ、いや椎名さん


「もう終いだー」・・羽柴さん


「なにが、どうしたの?」・・オレ


「おめー調理場の豆を見たっぺ」オヤジが涙目であった


「ああ・・それがどうしたの?」




オヤジは説明をしてくれた・・それは至高の手作り豆腐プロジェクトであった


あの大豆は農業職人「畑中伊介名人」作の国産無農薬献上大豆だったのだ


山の温泉は特産品を作るように町長に命じられ献上大豆を預かったそうである


名人はその年収穫された大豆の中から色、形、艶などを厳選した


僅か一升ほどだった


山の温泉旅館協会は老舗旅館「山原屋」に任命した


これは旅館にとって大変名誉な事であった


そして・・・


羽柴さんは高雄温泉の山奥から半日をかけて岩清水を運んで来た


しかし・・いざという日にフリ―の団体客が入ってきた


(当時は法事の帰りに急遽泊ろと言う事が有った。しかもバス1台という信じられないが本当である)


そして寿屋に預けることにした・・と言う事であった




「へー凄いじゃないの。でも何で?暗いの?」


羽柴さんが涙目でテーブルを見つめている


「?」


目の前には益子焼の器に煮物が盛りつけられ日本酒とグラスが置いてある


しかし誰一人手を付けていない


私は不思議に思い目を凝らすと


塩鮭の頭と大根下し、ニンジン、油揚げ、酒粕の風味・・そして大豆


「えー!大豆!!」私にも状況は把握できた「なんていう事したの!皆で!!」




そしてオヤジが首をフリフリ一枚の紙を見せてくれた


それは新聞チラシの裏にマジックインキで書かれていた


『スミちゃんと出かけてきます』


『お父さんの好きなシモツカレー作りました。酒のつまみにどうぞ!妻より』




この話はこれで終わりです


あまりの悲惨さに続きを書く事は出来ません


しいて言えばオヤジは怒られました


しかしも母を含む数人からでした・・龍?