アワビの恋 | 版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆

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私が各地で出会った美味しくて不思議な一品をご紹介。さーて今日は何を食べようかな。

恋の「寿命」ってどれくらい? ブログネタ:恋の「寿命」ってどれくらい? 参加中
本文はここから

「磯の鮑の片思い」


自分だけが恋い慕っているだけで、相手は何とも思っていない。


アワビが一枚貝の為であり、相手がいないと言うことなのだろう。


しかし、こんな事で引き合にされてはアワビもいい迷惑である。


訪ねた訳ではないがアワビだって思っているに違いない。



そして本題の恋の寿命だが、短い方が良い。


想いが通じて結ばれれば、恋が終わり愛となるからである。


私は食べ物に良く焦がれるが1週間が限度だと思う。


大事に取っておいても賞味期限が来てしまうからだ。


そして食べ物の場合は愛とならず、想いが通じた後は眠くなるので注意が必要である???


私に、この課題は多少無理があったかなーと自覚した。


版画家・君島龍輝 オフィシャルブログ☆たっちゃんの今日は何食べる?☆-アワビ

                     煮アワビ


それは奇跡と誰もが信じた・・・


私はオリジナル版画を制作する為に東京の会場に向かった。


そこには既に、数名の依頼者が待ち受けていた。


私は、何時もの道具を、何時ものように調え、そして何時ものように彫り出していた。


しかし、そのご婦人は何時もの客と違ったのである。


「こんにちは」私は二度目の挨拶を交わした。


一度目は階段ですれ違った時に会釈をしていた。


「先生、今日は私の娘たちを彫って頂きたいのです」会場の入口付近に一人の少女がいる。


私と目線が合うと軽くお辞儀をした・・・娘たちと言ったように聞こえたが?



「もう一人の娘は後から来ます」聞き違いでは無かったようだ。


そして、ご婦人が衝撃的な発言をした。


「娘たちの前にもう一枚彫ってほしい物が有るのです。それは観音様なのですが・・・」


私は話を聞くことにした。それは深刻な内容だった。ご主人が先日、肺癌だと検査で発覚したそうである。そして来週には手術をするというのだ。話は続いた・・・それは医師から転移が体中にあり、手術の成功は見込めないと言い渡されたという事だった。


「私はこの先、彫って頂いた観音様と娘たちで生きて行きたいのです・・・」


「どうか宜しくお願いします・・・」涙目で話されたのだ。さすがに私も冗談は言えなかった。


目を瞑り板の表面を磨き始めた。


これは彫る前に集中力を高める為である。


下絵を描かずに一気に彫る為、心を無にする必要があるからだ。


私は徐に目を開け板を見た・・・そこには観音様のイメージが浮かばなかった。


「イメージが浮かばないのですが私の好きなように彫って宜しいでしょうか?」尋ねると


「はい・・」と小さく返事をした。


ご婦人の顔を見ると一心に願いを込めて制作中の手元を見ているのを感じた。


私のイメージはご婦人であったのだが、前頭部には観音様を彫り込んでいた。


そして仕上がったのが薬師如来のご婦人に十一面観音がオーバーラップした作品だった。


私には全く意味が解らなかったが、ご婦人には大そう喜んで頂けた。


「前向きに考えて貴方がご主人を看病してください」と付け加え作品を手渡したのである。


3人はそれぞれの版画を持ち帰りその日は終了した。


***


そして一ヶ月後の制作会で、そのご婦人が再来したのだ。


私はご主人の事が気になっていたが私からは言いだせる雰囲気ではない。


「先生・・・主人、手術を受けなかったのです・・・」ご婦人が口を開いた。


私は真っ先に思い浮かべた事は、手の施しようが無い状態だったのか・・・で、あった。


返す言葉が見つからないうちに、ご婦人が続いた。


「主人、癌が消えたのです・・・」自分の耳を疑った・・・「え?何ですか」聞き返した。


「本当なんです・・・癌が突如消えてしまったのです・・・」まだ理解できなかった。


それは、手術当日にレントゲンを撮ったそうである。医師は別の写真では無いかと呟き、確認をしたそうだ。しかし間違いなくご主人のレントゲン写真だたのである。しかも、何処にも癌の影は無かったそうだ。


当然癌が無くなったのだから手術は中止となった。それでは最初に手違いが有ったのかというと日本最高峰の病院でそれは考えられない。信じられない事だが癌が消えた事だけが事実だった。


「先生、先生のお陰です。有難う御座いました」・・・?「え?」私が何かしたのだろうか。


「私は何もしていませんし、そんな力も有りませんから・・」本当に何もしていない。


しかしご主人が癌で無かった事は喜ぶべきである。その後も感謝の言葉は続くのだった。


そして、私なりに考えてみた。私はアーティストとしてインスピレーションを感じ取る事が出来る。あの時ご婦人の切なる願いを受け止めたのだろう。それがあの作品で、ご主人の病を治したのは紛れもなく奥さんの想いで有ったのだろう。この世の中には常識では説明できない事が有るとつくづく思わされた。


そして数ヵ月後、ご夫妻にお会いした。


ご主人を紹介する時の奥さんの目は嬉しそうに本当にそれは嬉しそうだった。


その瞳からは、恋をする乙女の光が、いつまでも、いつまでも、輝いていたのである。





絵・文 君島龍輝


PS:これは信じられませんが実話です。


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