「杵淵直知書簡集『ヨーロッパの音を求めて』」再版を考えるに当たって | 東京・新宿 輸入ピアノ.com オーナー伊藤のひとりごと

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他愛もない日々のつぶやきを、徒然なるままに。

 この度、本書の再版を考えるに当たって、まず、驚いたことは、1961年から1966年にかけて通算5年間に往復合わせて500通以上の手紙でのやり取りをなされたという事実です。

単純に計算しても、直知氏は、週に一通は確実に奥様の恵子さん宛に書簡をしたためたことになります。

 インターネットやemailない時代に手紙は当然としても、よくもまあお書きになったものだと感心しました。奥様が「刊行のことば」で書かれてるように、「その間の、心の会話は、一緒に暮らしていた時より数倍も多くの量」だったことでしょう。

 したがって、本書は、当時まだ日本ではよく知られていなかったピアノの技術や知識は勿論、ピアノ業界の事情にも詳しく触れられていることから、「ピアノの本」であると同時に、妻や子供たちを思いやる心情にあふれた「夫婦物語」としても面白い読み応えのある作品です。「ピアノの知識アラカルト」(杵淵直知著)の姉妹本として、お読みいただければ幸いです。

 この本を、読み直して、福島県の郡山市から新宿に単身赴任して2年近くになりますが、この間、妻との心の会話は、私は殆どしていないような気がします。何か身につまされる思いをしています。