長編物語ブログ -19ページ目

長編物語ブログ

 うんざりするほど長い物語です。
 でも不思議と中毒性があるかもしれません。
 
 
<チームイミタン>
イラスト担当:t2 文章担当:イミタン

 荒い呼吸を繰り返しながら少女は辺りを窺った。
 壊れた外灯が点滅し森閑とした路地の片隅で、セーラー服はボロボロであった。
 外灯が点滅し、見目麗しい日本人形のような容姿が顔を覗かせた。
 黒髪はすらっと伸び、大和撫子を思わせる容貌は、この状況をまるで映画の中か何かのシーンに思わせた。
 少女は唇を引き結び、
「ルーシー」
 と、親友を呼ぶようにか細くいった。
「ここに」
 はたと現れた。
 外輪は青白く恍惚とし、瞳は研ぎ澄まされ、毛髪は銀。
 この夜闇がなくば、一見すれば犬だと映るが、その姿態の大きさと光る相貌で犬ではないと理解に及ぶ。
 銀狼は少女の傍らに堂々と屹立していた。
「永遠にパパに会えなくなっちゃった」
 少女は銀狼に言った。
「主よ、我は思う、鬼どもは人の魂を糧にして生きているが、ワードパクト(禁忌)の呪いがかかっている。それを解消できたなら、父君も元のお姿に……我の攻撃では効かぬ……」
 銀狼は主に鼻をすり寄せて言った。
「いつかはこうなると思っていた。私はあの溜め池に守られていたから」
 少女はそう言って震えだした。
「母君の結界も破れてしまった今、状況を打開するには父君をお助けし、他の幻獣と協力を」 
 銀狼は少女に決意を促した。
「ルーシー私は絶対、パパを助ける今はこれでいいよね……だったら鬼退治ね、私は浦島太郎ね、ルーシー奴らを許さないよ!」
 少女は唇を噛みしめて言った。言葉は語尾になる連れてはっきりとした。
「御意」
 少女は半眼になると、瞳を閉じた。
「風よ、自由を尊ぶ風よ私に力を貸して」
 そう言葉を放つと少女の周囲の大気はぐんと重くなった。
 初めはそよぐような、次第にそれは強まり厚みを増した。
 少女の身体の周りには強風が吹き荒れた。
 それらは少女を守っていた。
 銀狼は気づいてた。自分たちがいる地点の数目トール先にある電柱の天辺に鬼がいると。
 銀狼は疾風のごとく駆けだした。
 すると鬼も電柱から飛び降り、銀狼に迫った。
 一合目はここに始まった。
 初撃、鬼の拳は空を切った。
 銀狼はこぎみよく後方に避けると、無防備に硬直した腕に牙を立てた。
 鬼の痛覚に届く前に、銀狼は腕から放れ距離をとった。
 少女はこのチャンスを逃さなかった。
「風よ舞い散れ」
 少女にまとっていた大気は、うねるように小さく圧縮し球体になった。
 その幾つかが頭上にが浮かぶと、鬼に向かって肉薄した。
 鬼は血を流し数歩よろめいたが、持ち直すと少女に向かって大きく跳躍した。
「主!」
 銀狼は慌てたが、少女はにんまりと笑っていた。
「鬼子は逃げたか……まあでもね、貴方見てるでしょ、パパは取り戻すわ、必ずね」
 少女はそう言って、意識を集中させた。
「風よ吹き荒れよ」
 少女の回りの大気に鎌のような大きな爪が顕現した。
 それは跳躍して向かってくる鬼に深々と突き刺さった。
 鬼は倒れ藻掻いたが、しばらくすると、まがまがしい姿態が朧気になり、砂に変わった。
 少女は、掌を口元に充てて、息を鬼に向かって吹きかけた。
 鬼として存在していた身体は砂になり風に消えていった。 




 幻獣の守人 プロローグ
 昔は多くのもの扱っていたが彼は困窮し、アンティークショップの小作りな棚を蹴倒した。「春さんだからいったじゃないっすか、撲はね、貴方のね要らないものと要る物を見分ける人じゃないって、なんだよそのゴミ」
 彼女は目をぎゅっと閉じ、口を膨らませた。
 このアンティークショップのオーナーである、桜井正治を凝視している。
「だって正治さんが言ったんだよ、目利きも仕事のうちだってだから私さ」
 峰岸春はそう言ってぽっちりとした身体を揺らした。
 黒髪はロング目鼻立ちは小作りだがくっきりと、彼女の仕草は容姿を更に可愛くさせた。
 正治は口を半分開けて、寝癖の髪に更に手を入れグシャグシャにした。
「あのね、何でも言葉を額面通りにとる癖やめなよ、ね、春さん強弱あるじゃん普通」
 正治は自ら椅子に腰掛け、ぶっきらぼうに春にも椅子を寄せて言った。
 大手町商店街の一郭にあるアンティークショップ、「すめらぎ」は、正治の祖父の代から続いており彼は三代目社長であるが、最近オープンした大型デパートに押され、商店街は閑古鳥が鳴いていた。
 正治は思い入れのある商品を常連以外のコレクターや、オークションを利用し売り捌いていた、そんな状況を少なからず呪っていた。
 今、ダンボール二つ分持ってきた彼女は、市長の娘でこの商店街を寂れさせる原因を作った関係者である。
「見て見て、これ可愛いでしょう」
 彼女はにんまりと笑顔を称え、何やらアヒルのキーホルダーを正治の目の前で揺らして言った。
 正治は腕を組んで黙り。
「実はね本当の用事はこれじゃないんだ、最近起きてる怪事件知ってる? 行方不明になるって、現場には必ずブリキのおもちゃがある、なんかBCコミックとかにでてそうな」
 春は淡々と語りだした、椅子に浅く腰掛け、前のめりの姿勢で正治は眉を微動させ興味を表し目線で先を促した。
「パパがね探偵を雇うって言ったから、正治さんならわかるでしょうそういうの、得意でしょう? お金は払うよ」
 彼の頭は春の発言によりオモチャで埋めつくされていたが、お金という単語が出てからは、 恥ずかしい顔になった。
「春さんあれだ、それ持ってきたやつは置いて帰りな、うん俺がきちんと見ておく」
 正治がそう言ったので、春は、
「もう調子いいんだから!」
 と、アヒルのキーホルダーを彼の掌を開いてその中に収めた、それも乱暴に。
 正治は立ち上がる。因果なものだ、敵を助けるはめになるとは、
 思えば古い物達はときどき言葉があるように囁いているようにも思う。
 それは思い出と同化し繋がるからだろうが、
 彼はそこはかとなく感じた。
「契約成立だな」
 彼はそう言って春に向かって手を差し出した。
 最悪の事態になることを知っていた夜に、私は洋一をそのまま職場に向かわせた、もうそのことで何年も苦しんでいる。
 彼はその日セイコムのセキュリティを発動させ、会社の戸締まりを確認して外に一歩踏み出したところで、包丁で十二回切り刻まれた。
 長身の彼が抵抗できなかったのは、刑事の話では一番始めに刺された所が悪かったそうで、第一発見者の新聞配達員は、洋一がバク転のような姿勢だったと語っていた。
 私は全てを受け入れることはできなかったが、最後の最後まで、同棲するこのアパートに帰ろうともがいていたと、彼の真意を受け取った。
 やるせなかった。私が彼を止めることができなかったからだ。
 ときどき私は予知ることがある。それは順当な予測から外れた未来を探すことになるのだが、洋一の事件のときは、ストーカーの話しは聴いていたし、私の主観が彼の死を想像したのだろうと思った。
 世の中は甘いものでできていて、その甘さの加減を測り間違えてしまった。
 私は生きる上で、ずるがしこくなり、当時を振り返るとすでに他人をそのフィルター越しに眺めていたように思う。
 順当に予測できる範囲ならば助言で良い、しかしそれから外れた予知は私の中で当たり前でも他人の中にはノイズとしてしか映らない。
 洋一は違った。あの海のように広い優しさに私は溺れていたのかもしれない。
 失うということは、存在証明を証拠として突きつけられることだ。
 彼といった喫茶店、二人で話した冗談その全ての記憶たちが輪郭をなして、私の中に溶け込んできた。
 しばし私は彼が亡くなって葬式までの多忙な階段を登り切ると、ばななのあの小説のように寝ることでしか癒せなくなっていた。
 冬がようやく終わり春になる頃、私は二人でよく向かった溜め池に足を踏み入れた。
 湖面の回りにはびっしりと桜の木があり、今か今かと春を待っていたが、私にはただの枯れ枝のように見えた。
 二十六歳になって初めてお化粧をした。
 彼がどれだけ、私に、
「ねぇ洵ちゃん綺麗になってよ」
 と、懇願してきても私は歯牙にもかけなかったのに。
 溜め池を歩いて、トイレで鏡を見たらまるで売れないホステスのような顔つきになっていたので、
「こんなのでいいの洋ちゃん」
 と、苦笑いして独白した。
 湖面を一望できる高台までくると私は風に吹かれたまま、考えた。
 他人との境界線を知らない彼は、そのいきすぎたストーカー女の自己愛に殺されてしまった。 あれで彼が不細工ならば世の中大体が解決してるんだ。
 私は彼の可愛いらしい顔を時々憎らしく思った。
 夜になると私の心はざわざわしてきて、少しずつ眠れなくなる。(今日も会えるかな?)ってね。一時から二時にかけて電話が鳴って、彼が上ずった声で、
「今終わったよ」
 と、言えばああ起きてて良かったなんて思う。
 それから私は彼の奉仕者にならないように、自分を出しつつ彼の帰宅を待った。
 ナショナルスペアリー彼はその映画が大好きだった。なので、DVDをセットした。
 もう何回と見ただろうか、何度見ても彼はヒロインが最後は猫になった場面で号泣してしまう。映画の中に入り込んでしまったんじゃないかって思うほど感情移入して、
 彼の様々な特定の愛着は私の好きな物へと繋がった。
 私は時計を確認した。一時二十八分だった。秒針に目を落とした瞬間、あれは現実だったんだと逆らえない気持ちになった。
 想いとは続けば私の場合は現実になった。予知ることと繋がる。
 だから心配な気持ち、確定された気持ちをそっちのけで、私はナショナルスペアリーのDVDを再生した。
 彼は映画が終わっても帰ってくることはなかった。
 そのときわたしは、涙とは流れるものでなくどうしようもなく湧き出るものだと知った。