新しい昔話のかたち、『クボ 二本の弦の秘密』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『クボ 二本の弦の秘密

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】トラヴィス・ナイト

【声】アート・パーキンソン

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 三味線を弾き折り紙を自在に操ることの出来るクボは、病身の母親と二人でひっそりと暮らしていた。クボの片目は魔力を持つ祖父によって奪われ、祖父は今もクボを探し続けていた。

 

 

【感想】

 昔の日本を舞台に選んだ作品。思わず、勘違いをベースにしたトンデモ映画を覚悟していたが、実際に観てみると完成度の高さに驚かされる。アメリカの寿司屋に入ったら、経験したこともない美味しさや美しさに出会ってしまった感じ。こういうまさかは、嬉しくなる。日本の伝統や文化を利用しながら、日本人には思いもつかない映画を作り出している。海外から眺めると、日本は面白いコンテンツなのかもしれない。

 

 

 ストーリーは、オーソドックスな冒険もの。三味線を弾く不思議な能力を持った少年が、猿とクワガタを供にして旅に出る。昔話らしいシンプルで無駄のない展開は、推進力満点。そして映像がビックリするくらいに美しい。オープニングの海を舟で渡るシーンから、目が釘付けだった。どうやって波の映像を作っているのか、想像もできない。その後も、コミカルだったり幻想的だったりするシーンが次々と登場してくる。

 

 

 そしてエンドロールを見て気付いたのが、案外日本人のスタッフが少ないこと。日本人の名前がちょこちょこと見つかるくらい。無理に現実との整合性を求めるよりも、自由な発想の広がりを選んだのかも。そして最後の最後に出てきた字幕で、サブタイトルの意味が理解できた。そういう意味だったのか、と自分の迂闊さがちょっと恥ずかしかった。三味線を上手く使っている。