韓国では刑事よりも検事なのか、『アシュラ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『アシュラ

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】キム・ソンス

【主演】チョン・ウソン

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 刑事のハンは、妻の医療費を稼ぐため汚職市長の後始末を請け負ってしまう。だが市長の不正を暴こうとする検事に弱みを握られ、市長の犯罪の証拠を持ってくるよう強要される。次第にハンは身動きが取れなくなり、命の危険を感じ始める。

 

 

【感想】

 毎年のように、ガツンとくる韓国の犯罪映画に遭遇する。「インサイダーズ」や「新しき世界」も似た匂いがあった。日本のヤクザ映画のように無理に仁義を追い求めたり、冷たい悪をひたすらに描こうとしたりはしない。地を這うような生命力と、高みを目指す上昇志向がバランスよく混ざり合う。そして田舎者めいたふてぶてしさや開き直りが妙に可笑しく、悪辣な世界に人間味を与えている。

 

 

 この映画も悪いヤツらが集いに集い、戦いを繰り広げる。その中心は汚職まみれの悪徳市長。表と裏の顔があり、悪魔的な人心掌握術を見せる。ある意味、政治家らしい政治家だが、完全に一線を越えてしまっている。この市長に対抗するのが太った検事。正義の味方と思いきや、自己中心的で目的のためには手段を選ばない。市長と検事が暴力と法律を駆使して戦い、その間で主人公の刑事が苦汁をなめさせられる。

 

 

 狂った狼vs太った豚といった構図になるが、太った豚も手強くなかなか食えない。俳優陣も振り切った演技を披露し、凄まじい世界を作り上げていた。市長を演じていたファン・ジョンミンは、この間観た「哭声」で踊る祈祷師を演じていたが、この映画では危ないオジサンになり切っていた。韓国映画の充実ぶりを見た気もした。いつもの泥臭さに血生臭さも加わり、ラストでは血みどろの戦いが繰り広げられる。かなり痺れる混沌だった。