若い芽は生まれ続ける、『グリーンルーム』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『グリーンルーム

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ジェレミー・ソルニエ

【主演】アントン・イェルチン

【製作年】2015年

 

 

【あらすじ】

 売れないパンクバンド“エイント・ライツ”は、人里離れた山の中のライブハウスで演奏することになる。しかもそこは、ネオナチの集まる場所だった。険悪なムードにも負けず演奏した彼らだったが、戻った楽屋で殺人事件を目撃してしまい、命を狙われる事態に追い込まれる。

 

 

【感想】

 物語の構図は、パンクバンドvsネオナチ集団。人数も武器の数もネオナチ集団が圧倒する中、パンクバンドは楽屋に籠城して応戦する。ゾンビに取り囲まれた状況と似ていることもあり、スプラッター・ホラーの側面もあったと思う。かなり痛いと感じさせるシーンもある。アイデアと勢いで勝負した若々しい映画。疾走感を失わず走り抜けていた。

 

 

 上手かったのは、ネオナチ集団のキャラクター。黒一色で塗りつぶすことなく、個々のキャラクターをしっかりと立たせていた。特にリーダーのキャラクターは秀逸。凄腕のネゴシエーターのようでもあり、甘い囁きめいた言葉に心が動いてしまう。本当に悪いヤツは硬軟巧みで、人の心を操るのが上手かったりする。悪役側が奥深いと、映画はグッと引き締まる。

 

 

そして籠城する側の心理もしっかりと突いていた。焦燥感や絶望感が溢れ、希望が現状認識を狂わせる。打って出れば敵の思うつぼ。攻守の切り替えが早く、1つ1つのエピソードがきちんとコントロールされているようだった。剛速球があるわけではなかったが、丁寧な配球とテンポの良さで魅せる映画になっていた。若さと才能を感じさせる一本。