似た者同士ということで、『THE NET 網に囚われた男』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『THE NET 網に囚われた男

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】キム・ギドク

【主演】リュ・スンボム

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 北朝鮮で漁師として生計を立てていたナムは、スクリューに網が引っ掛かるトラブルでエンジンが停止、そのまま韓国へと流されてしまった。ナムは、スパイではないかと疑われ厳しい取り調べを受ける。妻子を思うナムは北朝鮮に帰りたいと願うが、取調官は聞く耳を持たなかった。

 

 

【感想】

 毎年のように映画を撮り続けるキム・ギドク。この製作ペースと質の高さは、ウディ・アレンに匹敵している。ただし軽やかでシニカルなウディ・アレンとは違い、キム・ギドクの映画は血や泥の匂いがたぎる。それでいて、滑稽味を失わないのが大きな特徴。数年間、映画を撮れなくなった時期があったというが、復活の契機となった「アリラン」は強烈だった。自分自身を撮ったドキュメンタリーだが、凡庸さとはまるで無縁で、鬼才ぶりを見せつけていた。

 

 

 この映画は、朝鮮半島の南北問題を題材にしている。主人公は北朝鮮の漁師。船の故障で韓国に流され、そこでスパイ容疑を掛けられる。更には強引に韓国で暮らすよう勧められ、主人公はソウルの繁華街に置き去りにされてしまう。この辺のアイデアはさすがといった感じ。主人公に韓国の良さを見せようとして、思いも掛けず暗部を見せてしまう結果に。切実な南北問題を、人間臭いドラマに仕上げていた。

 

 

 ただキム・ギドクの作品としては、それほどアクが強くはなかった。かなりストレートで、分かりやすい内容になっていたと思う。いつものようにもうちょっと暴れてもいいのかなと思ったりもしたが、年を重ねて無駄が削られてきたという見方もできそう。それでも非常識な部分で遊ぶのがキム・ギドクのスタイルは健在だったし、今後老成していくキム・ギドクにも興味が湧いてきた。