生きるために裏切る、『われらが背きし者』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『われらが背きし者

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】スザンナ・ホワイト

【主演】ユアン・マクレガー

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 モロッコで妻と休暇を楽しんできた大学教授ペリーは、レストランでロシアンマフィアの幹部ディマと知り合う。その後、ディマからUSBメモリーを渡され、イギリスの情報機関に渡してほしいと頼まれる。ディマと家族は、組織の新しいボスから命を狙われていた。そしてUSBには、重要なマネーロンダリングの情報が収められていた。

 

 

【感想】

 あまり宣伝に力を入れていない映画だったが、クオリティーは高く、掘り出し物感のあるスパイ・サスペンスだった。主演はユアン・マクレガー。このキャスティングだけで勝負しているのかと思いきや、意外なほどスリルを感じる物語になっていた。「007」や「ジェイソン・ボーン」のような壮大な陰謀や国際テロリスト、ド派手な銃撃戦やカーチェイスは無かったが、緊迫感の作り方が丁寧で洗練されていた。

 

 

 ストーリーは、平凡な大学教授がロシアンマフィアの幹部から秘密情報を託され、情報機関の活動に巻き込まれていくというもの。登場人物は最小限に抑えられ、濃密さが浮かび上がる仕掛けになっていた。キーパーソンは主人公の他に、マフィアの金の流れを知るロシア人の大物幹部、MI6の仕事熱心な中堅エージェントといったところ。彼らが腐った悪党を相手に、一致協力して戦いを挑む。ただし戦い方はかなり地味。

 

 

 スパイ映画が人気を博し続けるのは、窺い知ることの出来ない世界の裏側を背景に、主人公のストイックさや腕っぷしの強さを見せるから。何といっても、情報機関の争う裏の世界では悪い奴らのキャラクターが豊富なので、ちょっとの正義でもたちまち輝きだす。背景が暗ければ暗いほど、光は強烈に映る。この映画では、ユアン・マクレガー演じる大学教授の凡庸さや善良さが、いい味付けになっていた。