才能を引き寄せるニューヨークの磁力、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マイケル・グランデージ

【主演】コリン・ファース、ジュード・ロウ

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 大恐慌時代のニューヨーク、全く無名の作家だったトマス・ウルフは、有名編集者のマックス・パーキンズに自分の書いた原稿を持ち込む。どの出版社からも断れ続けてきたトマスは、当然断られるものと思っていたが、マックスはトマスの才能を見抜き、その場で出版を決める。そして二人は、共同で編集作業を開始した。

 

 

【感想】

 ヘミングウェイやフィッツジェラルドといった有名作家を世に送り出した編集者が、トマス・ウルフという無名の作家の才能を見出す、という事実に基づいた物語。トマス・ウルフは1920年代から30年代にかけて活躍した作家だが、その名前は全く知らなかった。もちろん小説も読んだことはない。ましてや編集者のマックス・パーキンズという名前は、知る由もなかった。しかし彼らの名前や作品を知らなくても、十分映画を楽しむことができた。

 

 

 ストーリーは男の友情もので、一種のサクセス・ストーリーでもる。ベテラン編集者が、無名の新人作家を鍛え上げ、有名作家へと育てていく。ボクシングのトレーナーが、才能豊かな新人選手をチャンピオンに育て上げていく感じに近い。ただ苦労話しや、感動めいた話しはバッサリと切り落とされている。二人の洗練された会話がメインで、シンプルで贅肉がない。タイトルを出すまでの、エピソードの綴り方は、洒落ていて格好良かった。

 

 

 そして、主演二人の掛け合いは、映画よりも舞台劇に近いように思えた。二人の距離感が、ヒシヒシと伝わり緊張感や開放感がタップリ味わえる。またジャズのリズムが、上手い具合に重ねられ、あの時代の色彩やノリを見せていた。仕事を通じて生まれる友情は確かにあると思えるが、どこか不安定で壊れやすいのかもしれない。才能の切れ目が、縁の切れ目になりそう。