どこか兵どもの夢の跡、『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』 | 平平凡凡映画評

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映画を観ての感想です。

【タイトル】『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ロン・ハワード

【主演】ザ・ビートルズ

【製作年】2016年

 

 

【あらすじ】

 1962年、レコードデビューを果たしたザ・ビートルズは、瞬く間に人気ロックバンドとなり、世界各国を回るツアーを敢行する。世界中の都市で熱狂的に迎えられ、1966年には武道館で来日コンサートが開かれる。しかしメンバーは、ツアーに対する情熱を次第に失っていく。

 

 

【感想】

 ザ・ビートルズのツアー映像を中心に集めたドキュメンタリー。マーティン・スコセッシ監督がザ・ローリング・ストーンズのライブ映画を撮ったことに影響されたのか、このドキュメントを監督しているのはロン・ハワード。調べてみると1954年生まれという事なので、10代の前半にビートルズの洗礼を受けたことになる。その年代の人々にとって、ビートルズの音楽は、記憶の深い部分に刻み込まれているはず。

 

 

 1960年代の初頭、ビートルズの音楽を浴びた当時の若者の衝撃は相当なものだったと思う。改めて楽曲を聞いてみると、どれも名曲ばかり。映画には熱狂し絶叫する若者の映像がしばしば登場するが、あのリズムや勢いに接したら、叫ぶくらいしかできないのかもしれない。1960年代のリズムがビートルズを通して現れ、そのリズムを増幅しながら、いつしか時代を牽引する存在になっていた。そんな気がする。

 

 

 更に驚かされたのは、超多忙なスケージュールをこなしながら、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが数々の楽曲を作り出していたこと。しかもそのどれもが名曲揃い。一曲ヒットさせるだけでも難しいのに、これだけの名曲を次々と生み出した才能とエネルギーには唸るしかない。ツアーの移動中に曲を作り、ツアーの合間にレコーディングを行う。20代でこれを成し遂げていたのだから、モーツアルトと比較されるのも当然と言えば当然。

 

 

 映画は、終始ビートルズに優しい眼差しが注がれていた。膨大な映像を、監督が愛情をもって編集したためなのだろう。確執や不信といった負の色合いは、ほとんど出てこなかった。今も存命のポールやリンゴも、当時を温かな眼差しで思い返していた。有名なアップルレコード本社屋上でのライブシーンも挿入されていたが、以前観たときに感じた倦怠や退廃といった雰囲気はなかった。どこかメンバーが、イタズラを楽しんでいるようにも見えてきた。そして何よりみんな若かった。