今回も波に乗る、『帰ってきたヒトラー』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『帰ってきたヒトラー

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】デヴィッド・ヴェンド

【主演】オリヴァー・マスッチ

【製作年】2015年


【あらすじ】

 タイムスリップで現在のベルリンで目覚めたヒトラーは、訳が分からずただ茫然とさ迷い歩く。しかし落ち着きを取り戻したヒトラーは、徐々に現状を把握するようになる。そして売れない映像作家が、ヒトラーをモノマネ芸人だと思い込み、ヒトラーの映像を次々とネットにアップしていった。


【感想】

 ヒトラーの登場する映画は数多くある。大抵は極悪非道で、頭のいかれた人物として描かれることが多い。それでも時代の流れと共に、ヒトラーのキャラクターが徐々に変化してきた気がする。最近は悩める人間としてのヒトラーが、しばしば登場したりする。


 そしてこの映画では、大衆の心を掴む天才ヒトラーが現れる。映画はコメディーの味付け。第二次世界大戦末期に居たはずのヒトラーが、なぜだか現代のドイツにタイムスリップ。完成度の高いモノマネ芸人として人気を博していく。時代錯誤のヒトラーを最初は笑ってみていられるが、次第に雰囲気が怪しくなる。


 映画は、ドキュメンタリーとフィクションの境界線を行き来していた。荒唐無稽な設定なのに、いつしかリアルな世界に見えてくる。時代の波に乗ることに長けているヒトラーは、現代でも時代の寵児になってしまうのかもしれない。風刺映画のようでありながらも、近未来を予想した映画のようでもある。現代は何処へ流れていくのか、ついつい気になってしまう。