高級車と名優がもったいない、『アウトバーン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『アウトバーン

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】エラン・クリーヴィー

【主演】ニコラス・ホルト

【製作年】2016年


【あらすじ】

 車の窃盗を得意にしていたケイシーは、アメリカを離れドイツの裏社会に片足を突っ込んで暮らしていた。だが恋人と真剣に付き合うようになり、堅気の生活を始めた。全てが順調に行くように思えた矢先、ケイシーは大金を入手する必要に迫られる。そして再び裏稼業で、一獲千金を狙う賭けに出た。


【感想】

 今一番勢いのある役者はと聞かれたら、真っ先にベン・キングズレイの顔が浮かぶ。長年無意識のうちに「ガンジー」のイメージを持ち続けていたが、最近スクリーンの中で見るベン・キングズレイは、ノリにノリ勢いよくぶっ飛んでいる。この映画でも、コカイン中毒で娼婦をはべらかす裏社会の男を演じていた。ガンジーからの飛躍が凄い。


 演じているのか、遊んでいるのか判断するのも難しい。これが心の欲するところに従って矩を越えず、という実例なのかもしれない。70歳を越えるベン・キングズレイの姿は、孔子の描く理想像に近い気がする。更にこの映画では、贅沢にもアンソニー・ホプキンスとの絡みが用意されていた。二人の会話は、アトラクションの波を作り出している。


 ただ大御所の二人と、最近話題の若手俳優ニコラス・ホルトの出演にも関わらず、映画自体はイマイチな内容だった。見所でもあるカーチェイスは至って普通、謎解きの面白さは弱含み、そして恋愛話しはかなり拙いものだった。バランスも流れも悪く、勢いやスピードが生まれる瞬間がほとんどなかった。盛り上がらないカーアクションは、観ていて辛い。