【タイトル】『海よりもまだ深く』
【評価】☆☆☆☆（☆５つが最高）
【監督】是枝裕和
【主演】阿部寛
【製作年】２０１６年
【あらすじ】
１５年前に文学賞を受賞した良多だが、その後は鳴かず飛ばずで、現在は探偵事務所に勤務していた。それでも小説家への夢を捨てきれず、また別れた妻子にも未練を残し、団地で一人暮らしをしている母親に心配を掛け続けていた。
【感想】
日常の風景を切り取ったような映画。主人公は夢を諦められないダメ男。言うことはでかいが行動が伴わず、ギャンブル癖も抜けない。団地で暮らす母親のもとを訪れては、小金をこっそり持ち出そうとする。探偵の仕事も腰かけ気分で身を入れず、妻にも愛想を尽かされ離婚された。こんなダメな男に、母親は惜しむことなく愛情を注ぐ。
映画のトーンは、ほのぼのとした軽めのコメディー。ダメ男に哀愁を背負わせ、滑稽さと切なさを含ませる。ただ主人公へは寛容な眼差しがベースで、こういう人間がいてもいいんじゃないか、といった大らかさが漂う。思い通りにならない人生を、苦笑いしながら飲み込んでいる感じ。大器晩成という言葉は、なかなか有り難い。
出演者の層は厚く、中でも樹木希林の存在感はさすが。いつものブレることのない樹木希林だった。映画の中にリアルを強く打ちこんでいる。一方の主演の阿部寛は、ちょっとデカ過ぎた気がした。もっと普通サイズの俳優の方がハマったのかも。大きくスウィングするよりも、小さく振った方が面白かった気もする。