「男はつらいよ」をリニューアル、『家族はつらいよ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『家族はつらいよ

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】山田洋次

【主演】橋爪功、吉行和子

【製作年】2016年


【あらすじ】

 三世代が同居する平田家。仕事を引退した周造は友人とゴルフを楽しみ帰宅するが、長年連れ添った妻から別れてほしいと離婚届を渡される。驚き戸惑う周造、やがて離婚騒動は子供たちを巻き込んで、混乱の度合いを増していく。


【感想】

 今さら山田洋次もないだろうと思ったりもしたが、「東京家族」を観てその考えを改めた。平成を舞台にしながら、小津安二郎を完コピし、瑞々しい家族の物語になっていた。極端な方向には走らず、堂々と普通のレンジで勝負し、観客の心を掴んでしまう。横綱相撲を映画にしたら、こんな感じなのかもしれな。キャスティングも冴えていて、名のある役者で普通の家族を作り上げていた。


 そして今回、「東京物語」とほぼ同じキャスティングで、新しいストーリーにチャレンジしている。目指すテイストは「男はつらいよ」。さすがに平成の世で「男はつらいよ」を再現しようとしても難しそう。無謀な挑戦にも思えたが、実際に映画を観てみると、またまた改めて山田洋次の凄さを見せつけられた。


 緻密でテンポのいいやり取りは、心地よくて全く飽きが来ない。“寅さん”のような濃厚なキャラクターは出てこないが、集団戦で「男はつらいよ」の雰囲気を再現していた。賑やかで明るい家族が、何度も飛び出してくる。家族の負の側面にスポットを当てる映画も多いが、家族の中に陽の側面を見せきっていた気がする。


 「男はつらいよ」が昭和のファンタジーに思えたりもするが、この「東京家族」は丁寧にリアルを積み重ねているようだった。ただ若い世代がこの映画を観て、どう感じるのかはよく分からない。こういう映画を面白いと感じるのは、もしかすると自分が歳をとった証拠なのかも。オジサン臭いと毛嫌いしていた世界が、次第に馴染んできた気もする。行き着く先は演歌とスナックか。