ジャガイモは偉大だ、『オデッセイ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『オデッセイ

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】リドリー・スコット

【主演】マット・デイモン

【製作年】2015年


【あらすじ】

 火星を探査中のクルーに、猛烈な嵐が襲い掛かる。ロケットの転倒を恐れた船長は、探査の中止と火星離脱の決定をする。だがロケットに乗り込む途中、マーク・ワトニーが風で飛ばされたアンテナに激突しそのまま行方不明となる。事態が切迫する中、船長はマークは死んだと判断しロケットを発射させる。だがマークは、死んではいなかった。


【感想】

 火星に取り残された男のサバイバル劇。誰もが死んだと思う中、どっこい生きてた主人公。サバイバル映画と言えば、当然のように悲壮感や生真面目さが前に押し出されるが、この映画の底流には朗らかさがあった。絶望的な状況に遭遇しても、絶望感に支配されることはない。あくまでも主人公の言動は、ユーモラスで前向きだった。


 きっと主演のマット・デイモンと、主人公のキャラクターが上手い具合に噛み合っていたのだろう。「インターステラー」のマット・デイモンとはかなり違っていた。サバイバル映画には珍しいコメディーの味付けが、この映画に輝きを与えていた。そしてコメディーの響きがありながら、緊迫感は次第に募っていく。小さなエピソードの積み重ねが、大きなうねりを生んでラストの飛躍に繋がっていた。


 この映画を観ていると、“人間万事塞翁が馬”や“禍を転じて福と為す”といったことわざが浮かんでくる。諦めない能力は凄い、というか人間の生命力も侮れないと思えてきた。またこの映画は、火星旅行の気分も味あわせてくる。おそらく行く機会のない宇宙旅行、せめてスクリーンの中で体験してみるのも悪くないかも。