【タイトル】『黄金を抱いて翔べ』
【評価】☆☆☆（☆５つが最高）
【監督】井筒和幸
【主演】妻夫木聡
【製作年】２０１２年
【あらすじ】
裏社会で調達屋をしている幸田は、生まれ故郷の大阪に戻り知人の北川に誘われるまま、銀行から金塊を強奪する計画に参加する。無謀とも思える計画に加わったのは、二人の他にＳＥやエレベーター技師、北朝鮮出身の爆弾のエキスパートたちだった。だが彼らの前に次々と障害が立ちはだかり、金塊の強奪計画はより一層困難のものになっていく。
【感想】
この世に何種類の犯罪があるのか知らないが、銀行から金塊を盗み出すという犯罪は憧憬の対象にもなりそうで、犯罪の中のホームラン王といった気がする。衝動に突き動かされた犯罪や、弱い立場の人間をいたぶる犯罪とは格が違っている。金塊の強奪という言葉にはどこかロマンが秘められているし、紙幣とは違う重みがある。
この映画は、金塊の強奪に殉じようとする男たちの姿を描いている。そしてキャラクターがしっかりとしている部分があり、キャラクター映画としての一面を持っていた。映画を引っ張っていたのは、妻夫木聡と浅野忠信の二人。この二人の安定感が、映画のベースラインを強固なものにしていた。
妻夫木聡が演じていたのは、暗い過去を感じさせる男。「マイ・バック・ページ」の雰囲気を継承している。池の中を機敏に動く小さな魚といった感じ。一方、浅野忠信はトラックの運転手役。これが全然と言っていいくらい魅力的ではない。どこにでもいそうなスポーツ狩りの冴えないオッサンだった。ただ、これが上手さなんだとは思う。華やいだり強烈な存在感を残すだけでは、役者としては不十分なのだろう。
決してつまらない映画ではなかったけど、期待していた金塊強奪のプロセスはちょっと薄味だった。ハードボイルドに徹しきれないのが邦画の弱さなのかも。銃撃や爆破、強奪のシーンで緩むのは残念。ここでも決定力不足が顔を出す。香港映画でリメイクしたら、もう少しテンポとキレ味の増す映画になるのかもしれない。