淡く儚くさり気なく、『永遠の僕たち』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『永遠の僕たち

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ガス・ヴァン・サント

【主演】ヘンリー・ホッパー

【製作年】2011年


【あらすじ】

 交通事故で両親を亡くし自らも臨死体験をしたイーノックは、見知らぬ人の葬儀に参列することで心の安らぎを見出していた。しかしある日、イーノックの挙動を不審に思った係員に詰め寄られてしまう。そんな彼を救ったのはアナベルという少女だった。二人は強く惹かれ合うが、アナベルは余命3ヶ月の病を患っていた。


【感想】

 恋愛映画に興味を持たない人間にとっては、とりあえず避けておこうと思うような映画に見える。両親を不慮の事故で亡くし高校を中退した主人公と、余命3ヶ月の少女の恋の物語。何が何でも泣かせようとするド直球のお涙頂戴劇にしか思えなかった。それでも予告編の映像がきれいだったのと、監督がガス・ヴァン・サントということで観に行ってみた。


 ガス・ヴァン・サントの映画には不思議な間合いがあったりする。「エレファント」や「パラノイドパーク」、「ラストデイズ」は何となく記憶の隅のほうに引っ掛かっている。柔らかい光を映画の中に取り込んでいるような印象もある。そしてこの「永遠の僕たち」は、瑞々しい鮮度を映画の中に取り込んでいた。


 ガチガチでありきたりの恋愛劇とは一線を画していた。きっと監督の個性やセンスといったものが色濃く出ていたのだと思う。1つ1つのシーンが、繊細な生菓子のように形作られていた。淡さと儚さを絶妙なタイミングで切り取っている。安っぽい加工品や模造品とは違う本物の素材を、生きたまま映画の中に閉じ込めているようだった。


 主演二人の演技力の高さも大きかったのかもしれない。どのシーンも温かみのある絵になっていた。幽霊役の加瀬亮も違和感なく存在していた。リアリティーの輪郭をファンタジーが程よく曖昧にしていた。ファッションや音楽もバランスがよく、映画に心地いい手触りを与えていた。ちょっとした温もりを感じる映画。