【タイトル】『MW ムウ』
【評価】☆☆(☆5つが最高)
【監督】岩本仁志
【主演】玉木宏、山田孝之
【製作年】2009年
【あらすじ】
16年前、沖之真舟島で住民が秘密裏に虐殺される事件が起こった。美智雄と祐太郎の二人の少年は、辛くも難を逃れ生き残ることができた。その後、美智雄は銀行員となるが、裏では16年前の事件の関係者を惨殺する冷酷な殺人鬼の顔を持っていた。祐太郎は美智雄の裏の顔を知りながらも、殺人を止める術を持たず悩みを深かめていく。
【感想】
原作は手塚治虫のマンガとのこと。「鉄腕アトム」とは全く趣が異なり、本当に手塚治虫の作品なのかと訝しく思えてくるほど。とてもではないが、少年向けの内容ではない。マンガが子供のものだった時代に描かれていたことを考えると、手塚治虫の凄さが分かるような気がする。安全なマンガだけを描いていたわけではないようだ。映画の出来映えよりも、原作のマンガの内容の方がよっぽど気になってしまう。
一応映画は、ハリウッドの大作を視界に入れて作られていた。オープニングはタイでの誘拐劇だったし、アメリカ軍の戦闘機とまでは行かなかったがヘリコプターは登場してきた。狙いとしては、「羊たちの沈黙」と「スピード」を掛け合わせたものを作りたかったのだろう。サイコスリラーとアクションの組み合わせ。成功していれば、ハラハラとワクワクが波のように押し寄せてくる映画になったはず。
しかし残念なことに、狙い通りの成果は得られていないように思えた。とりあえず、細部に穴が多すぎた。オイオイと突っ込みたくなるシーンが、次から次へと押し寄せる。ハリウッドの大作がCGを駆使している時代に、こちらは相も変らぬ書割で対抗しているようだった。途中から恥ずかしさも込み上げてきた。
何とかストーリーに勢いを持たせようと、音楽だけは重々しく大音量で流れ続けられる。まるでマッチョな映画にすべく、ステロイドを投与しているようだった。不自然な盛り上方は、観ていて疲れてくる。音楽と深刻な演技だけでは、さすがに限界がある。日本を舞台としたテロ云々の映画は、時期尚早なのかもしれない。日本が本物にテロに巻き込まれるか、戦争に突入するかしないと、映画にリアリティーは生まれないような気がする。