若さを注入、『スター・トレック』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『スター・トレック

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】J・J・エイブラムス

【主演】クリス・パイン

【製作年】2009年


【あらすじ】

 乗員を救うため自らの命を犠牲にした伝説的な艦長を父に持つカークは、才能に溢れながらも自堕落な日々を送っていた。そんなカークの前に父親の親友が現れ、士官になるよう勧められる。カークは父親と同じ道を歩むことを決め士官候補生となるが、血の気が多く次々とトラブルを起こす。だが遂に艦隊勤務の命令が下される。


【感想】

 SFアクションの正統派とでも言いたくなる「スター・トレック」。テレビドラマとして見た記憶もあり、更に映画版も何作か観たような気がする。ただ、「スターウォーズ」のような派手やかさには乏しく、はまるようなことはなかった。設定やキャラクターがしっかりと出来上がり、冒険を軸としたストーリーでありながら、冒険とはどこかほど遠い安定感が飛び抜けていた。


 安心して見ていられる物語でありながら、ついつい退屈を覚えるような話しでもあった。人によっては強固なブランドとなっているが、一見さんが気安く観るタイプの映画ではなさそうだった。唯一面白かったのが、この「スター・トレック」をパロディーにした「ギャラクシー・クエスト」。「スター・トレック」に敬意を払いながらも、「スター・トレック」ネタで徹底的に遊びまくっていた。かなり笑える映画だと思う。


 そしてこの映画では、従来のイメージをほどよく壊している。設定を若かりし日のカーク船長の時代にし、今までの思慮深い勇敢なキャラクターを変えている。若いカークは、無鉄砲で喧嘩っ早い。それでいて情に厚く、どこか“坊ちゃん”を思わせるキャラクターだった。ついでに若いスポックにも当然のことながら若さが出る。


 確かに、今までの「スター・トレック」に足りなかったのは若さだったのかもしれない。思慮が足らず、我慢も足りない。でも若いからこそ許容される思いっきりのよさが、映画に喝を入れていた。落ち着き払った面々よりも、感情を爆発させながらぶつかり合うクルーの方がドラマとしては盛り上がる。


 今回の「スター・トレック」では、今まで希薄になっていたハラハラやワクワク、ドキドキといった感覚を体験できる。人間が老成するのは悪いことではないが、映画が保守的な方向に凝り固まってしまうのは何ともつまらない気がする。今回は上手い具合に過去のしがらみや、お約束となりつつあった枠組みを取っ払っていた。きっと温故知新のいい例になると思う。こういうSFアクションなら簡単に飽きはこない。