【タイトル】『GOEMON』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】紀里谷和明
【主演】江口洋介
【製作年】2009年
【あらすじ】
信長に忍びとして生きる術を叩き込まれた五右衛門は、信長の死後、盗人として自由気ままに生きる道を選ぶ。しかしある屋敷から南蛮の箱を持ち出したことで、運命が大きく変わりだす。五右衛門の周囲には、幼馴染で同じく忍びの才蔵や、師匠でもある服部半蔵が現れ、そして秀吉の魔の手が伸びてくる。
【感想】
天下の大泥棒“石川五右衛門”を主人公にした映画ではある。しかし、ごくごく普通の時代劇をイメージしていくと、間違いなくド肝を抜かれる。監督のスタンスは終始一貫していて、史実や時代考証などクソ食らえとしている。衣装や建物、小道具に至るまで、オリジナリティー溢れる様式やら品々やらが次から次へと登場してくる。
質素でシンプルな美しさを基調とする、和の匂いはほとんどしてこない。戦国時代を舞台とした時代劇であっても、映画のベースには西洋のスタイルが色濃く反映され、ゴテゴテとした絢爛な世界が広がっている。時にはイスラム調の建物が出現したりもする。NHKの大河ドラマや「水戸黄門」の影など全く見えない。
近い映画としては「300」かもしれない。ただ、この「GOEMON」は、徹頭徹尾常識を壊すことに主眼が置かれているようで、「300」のデフォルメが可愛らしく思えてくるほど。CGを多用し、今までにない世界が作られていた。間違いなく斬新な映画ではある。映画が着実に変化している様を目にしているようだったし、またハリウッドだけが、映像の進歩を担っているわけではないという意地を見ているようでもあった。
そして、ここまで徹底したCGを見せられると、ある種の爽快感も生まれてくる。とんかつにマヨネーズをかけたら美味かったので、刺身にも、ウナギにも、漬物にもマヨネーズをかけている感じ。確かにやり過ぎではあっても、既存の常識を打ち壊すにはこれくらいの非常識さが必要なのかもしれない。
ストーリーも、オリジナリティー溢れるものに変換されていた。やや甘めの味付けではあったけど、2時間さほど緩むことなく繋がっていた。主演の江口洋介もはまり役だったと思うし、織田信長を演じていた中村橋之助も存在感がありあり。ふと「鴨川ホルモー」の中で披露された濱田岳の“敦盛”と比べて楽しくなったりもした。映像と役者でコッテリ観ることのできる映画だった。