平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『キングダム 大将軍の帰還』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】佐藤信介

【主演】山崎賢人

 

 

【あらすじ】

 秦に侵攻した趙の大軍と戦うため、信は仲間と共に戦場を駆け回る。そして主力を率いる王騎将軍と合流し、敵の本陣を目指して突き進んだ。

 

 

【感想】

 春秋戦国時代をよく知らないので、国の関係や歴史的事実を把握できないまま観ることになる。過去の3作品の記憶も曖昧なので、物語の推進力を感じられなかったのかもしれない。今回の作品は、かなり力を溜めた内容になっていた。派手さよりも、下半身を鍛えている感じ。スケールの大きさよりも個々人の言葉の応酬で見せていた。そして最も活躍していたのが大沢たかお。ほとんど映画を独り占めしていた。好戦的な言葉が胸に響く。平時に乱を忘れてはいけないのかも。

【タイトル】『お母さんが一緒』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】橋口亮輔

【主演】江口のりこ

 

 

【あらすじ】

 母親の誕生日に温泉旅行をプレゼントした3姉妹だが、到着早々長女と次女の間でバトルが勃発する。

 

 

【感想】

 原作の舞台劇が観てみたくなるような熱量溢れるコメディーだった。ほとんど温泉旅館の一室でドラマが展開する。3姉妹による遠慮会釈のない言葉の応酬は、格闘技に通じていた。ノーガードで打ち合いながらもギリギリの線を維持し、きちんと喜劇の枠組に収めていた。友人や同僚との間では決して見せられない本音のやり取りが、物語に勢いを与える。気遣いや礼儀の向こう側で、強い絆は生まれるのかも。出演者たちが次第にアスリートに思えてもくる凄技だった。

【タイトル】『言えない秘密』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】河合勇人

【主演】京本大我

 

 

【あらすじ】

 留学を途中で終え帰国した音大生の湊人は、ピアノへの情熱を失いかけていた。そんな時、取り壊し予定の古い校舎で、ピアノを弾く雪乃と出会う。

 

 

【感想】

 ヒットした台湾映画のリメイク作品。リメイクはストライクゾーンがキッチリと示されているので、作りやすいのかとは思う。しかし反面、真ん中に投げなければ行けないというプレッシャーも掛かるはず。オリジナルを模した脚本に、そこから外れないような演出が為される。この映画もこなれて、しっかりとまとまっていた印象だが、もっと大胆で伸び伸びとした世界があったような気もした。大胆さと伸びやかさは、オリジナル作品の特権なのかもしれない。

【タイトル】『フェラーリ』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マイケル・マン

【主演】アダム・ドライバー

 

 

【あらすじ】

 1957年、フェラーリの創業者であるエンツォは、会社経営と私生活の両面で危機に陥っていた。そしてレースでの勝利で、全てを解決させようとする。

 

 

【感想】

 イメージしていたものと少し違っていた。もっとレースシーンが豊富で、アクション性の高い内容を考えていた。しかしこの映画では、苦境に立たされたエンツォ・フェラーリの内面に肉薄しようとしている。表情や歩き方、車や時代背に熱量を注いでいた。気迫が伝わってくる反面、どこか作りモノめいた不自然さもあった。リアルの作り方は難しい。いとも簡単に、思い入れが思い込みに変わったりする。情熱と力みは紙一重。

【タイトル】『クワイエット・プレイス DAY1』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マイケル・サルノスキ

【主演】ルピタ・ニョンゴ

 

 

【あらすじ】

 余命僅かでケアハウスで暮らすサミラは、介護士と共にかつて暮らしていたマンハッタンを訪れる。だが音に反応する謎の生命体の襲来で、ニューヨークは大混乱に陥る。

 

 

【感想】

 音に反応する生命体、という設定が秀逸で“クワイエット・プレイス”は2作品連続でヒットした。音とホラーの相性は抜群にいい。そして今回が3作目、登場人物を一新して臨んでいる。同じ路線を予想していたが、意外にもホラー映画の作法にあまりこだわっていなかった。特に中盤以降は思い出のニューヨークを歩き、ヒューマンドラマの要素が強かった。ジャズとピザが輝いてくる。

【タイトル】『ボーン・トゥ・フライ』

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】リウ・シャオシー

【主演】ワン・イーボー

 

 

【あらすじ】

 卓越した技量を持つ空軍パイロットのレイ・ユーは、次世代型戦闘機のテストパイロットとしてスカウトされる。そして過酷な訓練を経て、開発途中の最新鋭機のテストに参加した。

 

 

【感想】

 どっからどう見ても“トップガン”に憧れた中国映画。ただし、どこか歪んだ感情が露わになっている。ストーリーは、テストパイロットである主人公が次世代型戦闘機の開発に携わり、大きな挫折を味わいながらも成長しアメリカを凌駕する戦闘機を作り上げるというもの。国威発動が至上命令のようで、どうしてもストーリーの足枷になっていた。ドッグファイトのシーンも少なく、当然ながら“トップガン”には及ばない。キレやブッ飛び方が足りなかった。ある意味、中国映画の課題が見えてくる内容だったと思う。

【タイトル】『朽ちないサクラ』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】原廣利

【主演】杉咲花

 

 

【あらすじ】

 県警の広報課に勤務する森口は、親友の記者にウッカリ警察の裏情報を漏らしてしまいスクープが報道された。森口と親友の関係がギクシャクするが、その後親友の他殺体が発見される。

 

 

【感想】

 引き締まった警察モノで、途中まで名作の予感がした。たださすがに後半、サスペンスの筋が息切れしてしまい、ストーリーの推進力は失速していた。それでも1つ1つのシーンを作る力量は卓越していて、演出力や映像にかなり魅せられた。上手い役者が揃っていたこともあるが、監督の才能も大きかったような気もした。しっかりと監督の名前を覚えておきたくなる映画だった。

【タイトル】『ホールドオーバーズ』

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アレクサンダー・ペイン

【主演】ポール・ジアマッティ

 

 

【あらすじ】

 1970年マサチューセッツ州、名門の寄宿学校ではクリスマス休暇に入ったが、自宅に戻れない生徒たちは寮に残ることに。そしてこの年、歴史教師のポールが監督役を務めることになった。

 

 

【感想】

 主要なキャストは欠点が多く、運にも見放されている。主人公の歴史教師は、狭量で怒りっぽく生徒や同僚から毛嫌いされていた。そんな教師が嫌々ながら学生寮の監督役を務め、我儘で独善的な生徒の相手をする。学校での日常が重ねられ、次第に心の内に隠された哀しみや苦痛が露わになる。誰も楽には生きていない。そして後半、奇跡のような瞬間を目撃し、何の共通点もない彼らが本物の家族に見えてくる。ダメな人間が見せる一発逆転劇。その後の散り方も切なく余韻に浸れた。

【タイトル】『バッドボーイズ RIDE OR DIE』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー

【主演】ウィル・スミス

 

 

【あらすじ】

 マイアミ市警のマイクとマーカスの二人は、職務中に死亡した元上司が汚職に関与していたと知らされ、その疑惑を晴らすため調査に乗り出した。

 

 

【感想】

 シリーズものでありながら、ダレることなく新鮮味を維持していた。娯楽映画の王道を行き、スクリーンからは現場の楽しさが滲み出ていた。誰もが自分の役割を知り、肩の力を抜いてその責任を果たしている感じ。きっとこれが楽しみながら仕事をする、ということなのだろう。見せ場のアクションシーンにもキレがあり、アクロバチックなストリーも軽やかに決めていた。観客を安心して楽しませる、上級者の映画作りを堪能できた。

【タイトル】『ザ・ウォッチャーズ』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】イシャナ・ナイト・シャマラン

【主演】ダコタ・ファニング

 

 

【あらすじ】

 アイルランドの森の中で道に迷ったミナは、人の気配を感じその跡を追って一軒の建物に辿り着く。そこには3人の男女がいて、不可解な生活を強いられていた。

 

 

【感想】

 薄気味の悪い状況設定のサスペンス・ホラーで、監督はM・ナイト・シャマランの娘が務めている。父親の映画と似た雰囲気を漂わせ、ラストのオチで勝負する内容だった。堂々とした佇まいで、二代目を襲名するのに十分の出来だったと思う。ストーリーも虚実どの方向に転がるのか分からず、最後まで緊迫感を維持していた。きっとこれからは父親の呪縛との戦いもあるのかも。意表を突く次回作を観てみたい。