平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ナースコール』

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ペトラ・フォルペ

【主演】レオニー・ベネシュ

 

 

【あらすじ】

 病院での遅番勤務に就いた看護師のフロリアは、欠勤のいる中で満床の病室を担当する。次々となるナースコール、患者の要望やクレーム、同僚からの応援要請が積み重なっていく。

 

 

【感想】

 看護師の傍らでその仕事を覗き込んでいるような感覚になる映画だった。通常業務に加え、突発的な仕事が押し寄せてくる。そして瞬時に判断し手際よく捌いていくが、さすがに限界の近さがうかがえる。主演女優の看護師ぶりが堂に入っていて、まるでドキュメンタリー映画を観ているよう。非常識や非協力が募り、不穏な空気が漂い始める。そして案の定というべき終盤に向かうが、そこには看護師を辞めていく人の多い理由と共に、看護師を目指す人が絶えない理由があったと思う。ラストでは、不思議な爽快さを感じることができた。

【タイトル】『花緑青が明ける日に』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】四宮義俊

【主演】萩原利久

 

 

【あらすじ】

 立ち退きを迫られていた花火工場に立て籠る敬太郎は、幻の花火の制作に全身全霊を注いでいた。そして強制執行の当日、敬太郎は兄や幼馴染の協力で一発の花火を打ち上げようとする。

 

 

【感想】

 予告編で観た絵がきれいだったので惹かれたアニメ映画。水彩画のような淡い輝きを放ち、印象的なシーンがいくつもあった。ただストーリーには動きが乏しくやや停滞気味。キャラクターにも躍動や深みをあまり感じられず、ラストの花火までが遠かった。定跡通りの陣形を築いても、ストーリーやキャラクターを動かすことに苦戦していたのかも。きれいな絵が動くだけでは満足できなくなったしまった。

【タイトル】『正義廻廊』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ホー・チョクティン

【主演】ヨン・ワイロン

 

 

【あらすじ】

 両親を殺害した容疑でヘンリーは逮捕される。そして友人のアンガスと共謀して殺したことを認めるが、アンガスは殺人を否定したため、陪審員たちはその真偽を見極めようとする。

 

 

【感想】

 “十二人の怒れる男”を元ネタにした香港映画だが、ストレートなリメイクではなく色々な仕掛けを施していた。被告人の妄想を映像化したり、舞台劇のように陪審員が殺人現場に現れたりする。アート系を目指したのかもしれないが、成功していたかは微妙なところ。異彩を放つ役者の存在感は大きかった。それでも陪審員制度について考えさせられ、司法の不完全さの責任を無名の市民に背負ってもっているように思えた。冤罪や量刑の不適当は仕方がない、という開き直った制度なのかも。法曹界の専門職の傷を最小限に収める工夫といえそう。裁判は今も運に頼る部分がある。

【タイトル】『木挽町のあだ討ち』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】源孝志

【主演】柄本佑

 

 

【あらすじ】

 江戸時代、木挽町の芝居小屋の傍で仇討が為された。一年半後、一人の浪人が事件の詳細を知ろうと関係者に話しを聞いて回る。

 

 

【感想】

 原作の小説を読んでいたので、映画版はかなり薄味の内容になるのかと思っていた。しかし登場人物たちのエピソードを大胆に刈り取り小さな玉のサイズにし、その玉に主演で探偵役の柄本佑が巧みに糸を通していた。謎解きとしてきれいな円を描き、人情話しとしての側面も味わえる。また渡辺謙の存在感が大きく、その周りで出演者たちが自由に動き回っているようだった。冬の時代と言われて久しい時代劇に、反転の兆しをはっきりと感じさせてくれる一本だったと思う。

【タイトル】『レンタル・ファミリー』

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】HIKARI

【主演】ブレンダン・フレイザー

 

 

【あらすじ】

 日本で細々と活動しているアメリカ人俳優のフィリップは、“レンタル・ファミリー”という会社に雇われる。フィリップはリアルの世界で夫や父親、記者や友人の役を演じることになった。

 

 

【感想】

 アメリカ人の目線で描かれる、奇妙な国の体験記なのかと思っていた。「ロスト・イン・トランスレーション」の最新版といった感じ。しかし実際は、人間の寂しさや優しさといった情感が自然と湧き上がってくる良質なヒューマンドラマだった。主人公が他人の人生を伴走しながら旅するうちに、自身も思いもしなかった場所にたどり着いてしまう。演技とウソ、そして演技とホントの境界線を何度も行き来する。伏線の張り方も洒落ていて、ちょっとしたシーンにも豪華さがあった。角を立てずに丸く収める日本のスタイルも悪くはないと思えてきた。

【タイトル】『センチメンタル・バリュー』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ヨアキム・トリアー

【主演】レナーテ・レインスベ

 

 

【あらすじ】

 女優のノーラは、母の葬儀の後で長年連絡を取っていなかった映画監督の父親と言葉を交わす。妹を含めた三人で再開を喜んだが、後日父親から新作映画の出演を依頼され怒りを爆発させてしまう。

 

 

【感想】

 久しぶりに観た気のするヨーロッパの映画らしい映画。大人の映画をいってもいいのかもしれない。父親と二人の娘をメインキャストにした家族の物語で、映画や演劇の舞台裏を覗かせてくれる。出演陣が素晴らしく、熟練した強豪チームの手際を見ているようだった。ありふれた小さな世界にスポットを当てながらも、優しくそして力強い波を奏でていく。丁寧で精緻に進みながらも時折大胆に場面が動き、虚実の混ぜ方もお洒落だった。

【タイトル】『ブゴニア』

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ヨルゴス・ランティモス

【主演】エマ・ストーン

 

 

【あらすじ】

 大企業の女性CEОが二人の男に拉致される。男たちはCEОが宇宙人で、人類の滅亡を計画していると信じていた。

 

 

【感想】

 どれだけ突飛なアイデアを出せるかで勝負しているような映画。美しく有能な女性CEОと、貧しい生活に甘んじている二人の男がメインキャスト。男たちが信じているのは、宇宙人によって地球が侵略されているという陰謀論。この3人による会話劇で物語が進むが、まるで噛み合わない話しなぜか気持ちいい。一方は理路整然とした科学的素養を、もう一方は確信をもって陰謀論をぶつけてくる。あたふたとした滑稽な姿に、重々しい音楽が重なり不思議な世界が広がっていた。次第に宇宙人の侵略を信じる男の姿にシンパシーを感じるようにもなる。キャスティングが抜群に上手く、後半の混沌とした暴れっぷりには清々しさを感じた。

【タイトル】『クライム101』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】バート・レイトン

【主演】クリス・ヘムズワース

 

 

【あらすじ】

 証拠も残さず怪我人も出さず完璧な盗みを続けてきたデーヴィスだが、些細な失敗で窮地に陥ってしまう。そしてそこから抜け出すため大きな賭けに出た。

 

 

【感想】

 ロサンゼルスを主人公にしたような内容で、富豪と貧困にあえぐ人々の姿が映し出される。金こそが苦境を脱するための唯一の鍵で、主人公は馴染みのある場所で犯罪を繰り返す。そこに組織の中で喘ぐ刑事や保険会社の社員が絡んでくる。懸命に優しさや品格を保とうと苦闘するが、ままならない状況に追い込まれていく面々。野獣や下劣な人間にならずに生きていくことは、今のロサンゼルスでは難しいのかもしれない。滅びゆく人種を見ているようでもあった。

【タイトル】『メラニア』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ブレット・ラトナー

【出演】メラニア・トランプ

 

 

【あらすじ】

 2025年、大統領選就任式が迫る中、ファーストレディーとなるメラニアはパーティーや着用するドレスの選定に余念がなかった。

 

 

【感想】

 大統領夫人であるメラニアの姿を追ったドキュメンタリー映画で、自身のプロモーションを狙っていたのだと思う。ただ効果があったのかどうかは微妙。前面に出していたのは美貌とファッション。次々と服装を変え、整った佇まいでカメラの前に現れる。なにか綺麗な包装紙を見ているようだった。箱の中身やその形や色すらも分からない。それでも権力の中枢をカメラが捉えていく。満面の笑みで擦り寄ってくるファッション関係者、不愉快そうな警備担当者に、どこか薄気味悪い側近や家族たち。そんな中で、トランプだけは裏表もなく徹底的にトランプだった。ブレないその姿に誠実さを感じ、支持される理由を見た気がした。ちょっと捻ったプロモーション映画だったのかも。

【タイトル】『ツーリスリストファミリー』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アビジャン・ジービント

【主演】シャシクマール

 

 

【あらすじ】

 スリランカ人のダースは、妻と二人の息子を伴いインドに密入国する。一家は身分を偽り静かに暮らそうとするが、次々と騒動に巻き込まれていく。

 

 

【感想】

 どうしてもガンジーのイメージが強く、マッチョな男の登場するインドのアクション映画を観るとつい違和感を覚えてしまう。そしてこの映画は心温まるホームドラマで、山田洋次風。ただインドの民族構成や言語についての知識がないので、多くの疑問が頭の中に浮かんでくる。それでもシンプルなヒューマンドラマに仕上がっていたので、話しの流れから取り残されることはなかった。またインド映画らしさも健在で、冗長で無駄に見えてしまうシーンが続き、更には出演者たちのダンスシーンも付け加えられていた。カットしてもいいのではないかと思ってしまうのは、インドの理解が浅いせいからなのだろう。