平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『マンガ家、堀マモル』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】榊原有佑、武桜子、野田麗未

【主演】山下幸輝

 

 

【あらすじ】

 新人賞を獲得したもののスランプに陥った漫画家のマモルは、自分自身の過去と向き合うことでマンガを描こうとする。

 

 

【感想】

 漫画家の苦悩を爽やかに見せた映画。漫画家であり続けることは、苦行に匹敵するのかもしれない。自分の描きたいものを模索し、自分自身の内側を全てさらけ出そうとする。アイデア1つで軽やかに描けるわけではないのだろう。主演俳優の上手さもあって飄々とした雰囲気を作り、誠実な内容で押していた。ただ激しく暴れるような展開はなく、終始大人しく礼儀正しかった。監督が3人ということが影響したのか、荒々しさや若々しさとはちょっと無縁だった。

【タイトル】『ラストマイル』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】塚原あゆ子

【主演】満島ひかり

 

 

【あらすじ】

 巨大ショッピングサイトの物流施設長に就任した舟渡エレナだが、施設から発送した商品が次々と爆発する事件が起こり事態収拾のため奔走することとなる。

 

 

【感想】

 連続爆破事件というちょっと冒険的なストーリーで勝負しているサスペンス。ヘンな方向へ行きそうなところを、物流の現場のリアルを見せながら娯楽の波に乗せていた。無理そうなアイデアから、堂々と話しを作る手際はなかなか。プロの技を見た気がした。また主演二人の相性がよく、ドラマに強い勢いを与えていた。緩急ある波の揺さぶり方に身を任せていられる。

【タイトル】『モンキーマン』

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督・主演】デブ・パテル

 

 

【あらすじ】

 幼い頃村を焼かれ母親を殺害されたキッドは、街の底辺で生活し復讐を果たすときを待ち続けた。そしてようやくチャンスが巡り、上流階級の集うクラブのビルで働き始める。

 

 

【感想】

 インドの暗い部分を見せ、政治家や金持ちを悪役に据えたアクション映画。ストーリーはストレートな復讐劇で、怒りと憎しみを武器に主人公が無謀な戦いを挑んでいく。かつての香港映画のような輝きと暗さを見せ、ハードボイルド路線を突き進んでいた。アクションシーンは少なめだが、それでもラストの肉弾戦は圧巻で迫力十分。痛みが伝わってくる圧倒的なキレ味だった。インドがベジタリアンではなく、肉食系だと教えてくれる。寛容や無常の入る隙間はなかった。

【タイトル】『ソウルの春』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】キム・ソンス

【主演】ファン・ジョンミン

 

 

【あらすじ】

 1979年12月12日ソウル、軍司令官のチョンは秘密組織のメンバーと共にクーデターを画策。上官を拉致し権力を簒奪しようとするが、首都警備司令官が反乱軍を鎮圧すべく抵抗する。

 

 

【感想】

 韓国の現代史を教えてくれる一本。時系列でクーデター事件のあらましを見せている。大義もなく保身と欲望のまま突き進む反乱軍司令官と、軍人の責務と誇りで立ち向かう鎮圧軍司令官。この二人の善と悪のコントラストが分かりやすく描かれていた。説明調のストーリーにちょっと飽きもくるが、それでも主演俳優の演技は圧倒的。近所の薬局屋の親父のような男が、権力を掌握する過程をまざまざと見せつけていた。勢いは怖い。そしてこういう男の存在は、好景気を生むのかも。大義は後から作るもの。

【タイトル】『フォールガイ』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】デビッド・リーチ

【主演】ライアン・コズリング

 

 

【あらすじ】

 人気俳優トムのスタントマンを務めるコルトは、撮影中の事故で一線を退いた。しかし旧知のプロデューサーから復帰の話しを持ちかけられ、コルトは再びスタントマンとして現場に戻ってくる。

 

 

【感想】

 ふざけただけのコメディーなのかとちょっと思っていた。しかしライアン・コズリングを主演に据えただけに、厚みと安定感のあるアクション映画に仕上がっていた。スタントマンの仕事にスポットを当て、撮影現場のリアルを垣間見せてくれる。端的なストーリーと、派手で捻りの効いたアクションは観ていて楽しかった。リゾート気分で楽しめる映画なのかも。

【タイトル】『美食家ダリのレストラン』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ダビッド・プジョル

【主演】イバン・マサゲ

 

 

【あらすじ】

 1974年バルセロ、反政府活動に関わった弟と共にシェフのフェルナンドは、海辺のレストランに身を隠すことにした。

 

 

【感想】

 バルセロナ郊外のレストランを舞台にしたヒューマンドラマ。スポ根系を予想したくなるが、感情を大きく揺さぶるタイプの映画ではなかった。一風変わった珍妙な人々が、ちょっとズレたレストランに集ってくる。オーナーは崇拝するダリの来店を願い、またシェフは自作の料理に没頭する。のんびりとしたスペインの風景を映し出し、朴訥としたキャラクターが登場してくる。効率や合理性とは無縁で、気軽なスペイン旅行を味わえた気がした。

【タイトル】『ボレロ 永遠の旋律』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】アンヌ・フォンテーヌ

【主演】ラファエル・ペルソナ

 

 

【あらすじ】

 1928年パリ、作曲家のラヴェルはどこか満たされない日々を送っていた。そんなある日、友人のバレリーナから作曲の依頼を受ける。

 

 

【感想】

 音楽“ボレロ”の力強さを見せつける映画だった。オープニングでは様々にアレンジされた“ボレロ”が登場するが、あの確固たるテンポは揺らぐことがなくたくましい。詠み人知らずの楽曲を見ているようだった。ただストーリーは、虚ろでどこか弱々しいものだった。主人公の物憂げな表情が全てを語っていたのかもしれない。力強い楽曲の陰でストーリーは沈んでいた。

【タイトル】『ブルーピリオド』

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】萩原健太郎

【主演】眞栄田郷敦

 

 

【あらすじ】

 高校2年生の八虎は美術の課題で早朝の渋谷の絵を描き、描くことの面白さに目覚めてしまう。

 

 

【感想】

 絵を描くことの面白さを見せつける。ストーリーは、高校生が絵に目覚め芸大を目指すというもの。偏差値40の高校生が東大を目指すストーリーなら何となく想像も付きくが、芸大となると何だか興味が湧いてくる。絵に優劣を付け、合否を決める。かなり駆け足の展開で無理な筋を押していたが、それでも主要キャストの真摯さが映画にリアルさを与えていた。青春ドラマの王道を進み、スポ根ドラマの爽快感も味わえた。

【タイトル】『ツイスターズ』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】リー・アイザック・チョン

【主演】デイジー・エドガー=ジョーンズ

 

 

【あらすじ】

 NYで気象予報の仕事に就いているケイトは、友人の誘いに応じて故郷オクラホマの竜巻の調査プロジェクトに参加する。

 

 

【感想】

 竜巻がゴジラに見えてくるディザスター映画で、人間の無力を見せつけてくれる。主人公は気象学を学び天才的な感覚を持つ気象予報士。そして彼女の敵役となるのがカウボーイ気質のユーチューバー。自然の猛威を娯楽に仕上げている。竜巻のパワーは圧倒的で、スクリーンから風を感じる。カッチリとまとまったストーリーは分かり易いが、どこか物足りなさもあった。これがAIの描くドラマなのかも。コントロールされすぎると、世界は少し色あせる。

【タイトル】『モノノ怪 唐傘』

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】中村健治

【声】神谷浩史

 

 

【あらすじ】

 大奥に初出仕したアサとカメの二人を薬売りの男が見ていた。薬売りは、大奥にモノノ怪がはびこっていると睨んでいた。

 

 

【感想】

 プロ仕様のアニメだったと思う。大衆をターゲットにするよりも、業界に生きる人に訴え掛けている内容だった。サスペンスを基調にしているが、分かり易さで押していくストーリーではなかった。人の心の闇を描き、そこに言葉や理を載せていく。京極夏彦の世界を覗いているようでもあった。映像も冒険的で、個性を重視していた。現場が決定権を持っているようでもあり、また挑むことの覚悟を見た気がした。