サカオ・ナイト☆ | ミクロネシア連邦 ポンペイ州観光情報

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ローカルメディシンの
最終日4日目には、
いつもの治療の後、ドクターに感謝の意を表して簡単な贈り物をし、
そして同じ日から治療を始めた患者全員でサカオという飲み物を飲んで、治療の終了を祝います。


このサカオという飲み物は、

ポンペイの文化を語る上で
欠かすことのできない重要な要素の一つです。


ポンペイ人がサカオの話をする時は確実に顔が嬉しそうだし、
みんなマイサカオについてのこだわりを持っています。


サカオは一言でいうとポンペイのお酒みたいなもの、と私は思っていますが、
アルコール分は含まれておらず、その成分、効能は非常に独特です。


サカオは、コショウ科のサカオという植物の根から作られます。
植物自体に弛緩、鎮静作用の成分が含まれていて、
特に根茎には麻痺性のあるアルカロイドのメテスミン、
カバインが含まれています。


お酒を飲むとハイテンションになりますが、
サカオはそれとは反対に、一般的に静かになり、
無口になり、どんどんローに落ちて行きます。
そして最終的には非常にリラックスした感覚を
味わうことが出来るのです。


また、サカオを飲むと眠くなり、疲労回復の効果もあるため、
ポンペイの人たちには日常的に飲まれています。


ここまで聞くと、なんだかちょっと怪しげですが、習慣性や禁断症状はなく、
抜歯治療や骨折整骨の鎮痛剤など医療用に用いられるほか、
スペースシャトルに乗り込む宇宙飛行士の緊張緩和や睡眠剤として
使用されたこともあります。


サカオは元々伝統的な儀式の時のみに飲まれていたのですが、
お酒と違って飲んだ後暴力的になることがないため、
次第にポンペイではお酒より頻繁に飲まれるようになって行きました。


今では重要な儀式ではもちろんのこと、
パーティーや週末のちょっとした集まり、
好きな人はそれこそ毎日、本当にお酒代わりに飲まれていて、
ポンペイ人の生活には必要不可欠な飲み物なのです。


さてさて、そんなサカオはどのように作られるのでしょうか。


まず、サカオの根を獲りに行きます。
現在ポンペイにあるサカオは全て栽培されているもので、
手頃な現金収入になるため、サカオを栽培しているポンペイ人は多いです。


サカオは大体人間の背の高さほどの木で、それほど大きくはありません。
根の長さは大体50cmくらいで、枝ぶりも細いです。


そしてその根をバケツでじゃぶじゃぶと洗います。
結構な量を洗うので、水はすぐに真っ黒に。
しかし大体水をかえることなく最後まで洗いきってしまいます。


いつもこの行程を見るたびに、流水で洗うとか、
もうちょっと丁寧に洗って欲しいなーとついつい思ってしまいます。


そして、ここからがサカオ作りの一番の見せ場。
厚さ10~15cmくらい、
直径1m前後のペイチェールと呼ばれる平たい石のテーブルの上で、
これまた丸い野球ボールサイズの石でサカオの根を叩いて潰していきます。


この行程は大体3~4人がかりの男性によって行われます。
この時男性は上半身裸になるのですが、
これは毒や怪しい物質をサカオに混入していないという証拠を
示した習慣の名残だそうです。


完全に根を潰すまでには30分くらいかかるでしょうか。
石のテーブルに石を打ち付けるので、
コーン、コーンという硬質の高音があたりに響きます。
この音が幾えにも重なるとまるでそれ自体が一つの音楽のようになり、
神秘的なムードが高まります。


また、家に帰ってこの音がすると、
あ、今日はサカオだなーと思ったりするわけです。


根が程良く潰れたところで少しずつ水を混ぜて行きます。
そしてハイビスカスの樹皮に根を包み、
布を絞るような感じでギューッと絞ります。
最初の絞り汁はネバネバとしていてかなり濃度が高いです。


何度か水を混ぜ、程良い濃さになったところで、
ココナッツの殻で作られた器で最初のサカオを受けます。
そして参加者全員で順番に回し飲みをして行きます。


ハイビスカスの樹皮からネバーッと絞り出されるサカオを見ると、
確実に飲む気が失せます。
しかしサカオを断ると、ポンペイの人々は非常に悲しそうな顔をするので、
もしサカオに誘われたなら
ここは勇気を出して一口グイッと飲んでみましょう。


味は、率直に言って、
激しく、恐ろしく、マズイ」です。

見た目はぞうきんのしぼり汁、
質感はとろろ、
味は食べたことないけど「泥」です。


そして麻酔性の成分が含まれているため、
ちょっとピリッとします。

いかにもマズそうでしょ?


ポンペイ人でさえ、
「Feeling is very good, but taste is very bad」
と、そのマズさを認めています。


サカオは一回の自分の順番に一口しか飲めません。
なので、サカオを飲むときは目をつぶれと言われます。
なぜなら非常にマズイので、
飲むのには気合いがいるから。


飲んでる最中の人々の険しい顔つき、
飲んだ後の壮絶なしかめ面、
ほとんど涙目になっている人もいて、
なぜそこまでして飲むの?と思わず聞きたくなるほどです。


しかし、みんな自分が飲める限界の量を必死に口に注ぎ込みます。
その後に待つ「good feeling」を求めて。


サカオがあまりにもマズいため、
みんなそれぞれ口直しのマイチェイサーを持っています。
一番一般的なのはビールや水ですが、
サイダーとか、牛乳とか、マンゴーの漬物やスナック菓子、
キュウリなどをポリポリ齧る人もいます。


サカオを飲むと無口になる、と聞いていたのですが、
人によっては饒舌にもなるそう。


杯を重ね、酔いが回るごとに、
20人あまりの人々がだんだんと騒がしくなってきました。
ただお酒のように強烈な感じではありません。
あくまでものんびりとした平和的な陽気さです。


ギターによるローカルミュージック演奏も始まり、
これが何とも言えないノスタルジックなメロディー。
人々の喧騒、オレンジ色の灯り、優しい歌声、風が流れ、
不思議ととても居心地のいい空間が出来あがっていくのでした。


更に酔いが回り、だんだんと場が静かになったらお開きに。
みんなドクターへの感謝の言葉を口にしながら帰路につきます。

結局残念ながら「感極って泣く」ことはありませんでしたが、
なんだか2~3年は寿命がのびたようなローカルメディシン治療の4日間でした。


その後たびたび誘われるサカオ。
まだあんまり量が飲めないので、今は少しずつ練習しています。


サカオはこうした儀式のほか、サカオ・バーでも飲むことができ、
また瓶詰めになったものやパウダー状のものを購入することもできますので、
ポンペイにお越しの際はぜひお試し下さい。


写真は絞り出されるサカオ。