映画を観てきました。
「アサミはこの人知ってる?」と座長に訊かれるまで知らなかった”新宿タイガー”さん。
なんてファンキーなファッション!
このフライヤーでは全身がわからないけど(左下に自転車にまたがった全身像がありますが)、とにかくトータルで見たい素敵さです。
黄色いトラのお面にピンクのカツラ・・・最初はアフロかと思っていたら、羽根なんですねぇ。
絶妙なバランス…なんなのこのセンス!
タイガーさんのお仕事は新聞配達。
雨の日も風の日も、このいでたちで新聞を配って40年以上…1日に6時間を歩くそうです。
この映画はそんなタイガーさんのドキュメンタリー、シネマと美女とお酒をこよなく愛するタイガーさんの物語、そう思っていたら…それだけではありませんでした。
タイガーさんの歴史は新宿の歴史でもあります。
タイガーさんを通して、新宿という街の姿が浮き彫りになる。単純なドキュメンタリーではなく、そこも見応えがありました。
東京に住んだことの無い私には、新宿は芝居を観に行く場所というだけでしたが、この映画を観た後では違う味わい方をしたくなりました。
この映画は明るくて、楽しく観ることが出来ます。
こんな言い方をしては失礼かもしれないけれど、タイガーさんは可愛くて、スクリーンを観ながら「ふふふ」となってしまう。
でもその楽しい気分と同時に、なんだろう、どうしてだろう、どうしようもなく孤独感が押し寄せてくる、この人の内側にはどれほど深い孤独があるのだろうかと思ってしまう。
愛する美女を前にとても幸せそうなタイガーさんの紳士的なふるまい、スクリーンにかぶりつく子供のような表情、行き交う人と会話をしながらかける「ありがとう、ありがとう」という言葉、饒舌なタイガーさんを見るほどにそんな気持ちになりました。
変わりゆく時代や人の心を前に、変わらないことを貫くのは、とてもしんどいことではないかと思います。
でもそれが自分の選択だからと、この人は歯牙にもかけず、ただ風のように正体をつかませないままこの街に在る、それが故に想像をかきたてられるのかもしれません。
タイガーさんは新聞よりも遥かに重そうな、沢山のぬいぐるみやら造花やらお面やらを肩にかけています。
映画の中で花園神社の祭りでお神輿を担いでいる光景を見たら、タイガーさんの背で小山のようになっているあの荷物が、タイガーさんの神輿に見えました。
本物のタイガーさんにも遭遇してみたいけれど、スクリーンの中のタイガーさんにもう一度逢いにいきたいな。