全般的な感想および時代背景
公演のウェブサイトによると、女性の労働環境改善に向けた労働運動という感じで、労働組合の団体が後援しているのかなという雰囲気を感じていました。(実際は、そういう後援関係はないようです。)
ちょっと難しい問題を扱っている作品なので、重苦しいことになるのかなと想像していました。
時は1845年ころの時代。
この頃の日本はというと、1853年が黒船来航、有名人は、遠山金四郎、歌川広重、井伊直弼といった人物の活躍の時代。
そういった時代のアメリカのお話。
女性のお給料が男性の半分。意味かの給料は、女性のお給料のさらに半分。というような感じで、雇用者側が圧倒的に優位な立場で、搾取しているという風に描かれていました。
さらに、これらの労働力は使い捨て、病気になったら解雇してまた別の人を雇う。何か、今の日本の非正規雇用に似たところがあります。ワーキングプアーそのものみたいな世界です。
そこで、そのような労働環境の改善を求めた運動を起こしていくという展開。
まっ正面からの活動をするのが、サラ・バグリー(柚希礼音)、雇用者側と適当な距離を保って何とか改善しようとしていくのが、ハリエット・ファーリー(ソニン)。
この二人の活動と、ふたりの関係性というのが大体のストーリー。
中でも、ソニンさんの役柄が非常に難しい役どころで、表情と歌でで心情を表現していました。6列目で拝見しましたが、この列からでも、表情を双眼鏡を使って観ていました。(^_-)-☆
すごいすごいと思いながら見ていましたよ。
対して、柚希礼音さんは、行動力で一本道の行動でした。
それぞれの役者さんが雰囲気をよく出していました。
物語で取り上げられていて勉強になったこと。
当時の夜間の作業用の照明が鯨油ランプだったそうで、それがひどい悪臭だったそうです。
1850年代には、灯油ランプが使用され始めたので、もう少しで、この悪臭から解放されたようです。
署名を集めて州議会に労働環境の改善を申し立てたが、申し立ては、却下となった。
女性の選挙権のなかった時代で、選挙権を持つ雇用者側と州議会の関係を考えると、当然の結果になったと思えます。
紡績工場の生産力向上の仕方として、
作業時間の延長 : 夜間の作業時間の延長のため、鯨油ランプを使用するが悪臭のため、労働環境悪化。
生産機械のスピードアップ : 機械の回転数を上げると、巻き込まれとかの事故が発生しやすくなる
というようなことが描かれていました。
公演中の写真撮影は禁止ということで、舞台の始まる前の撮影はいいのかなという感じで、観客の皆さん舞台の写真を撮っていました。
後援の感想はこちらのQRコードにて送信してくださいという案内看板。
公演の中で気づいたことを書きます。
ミュージカルの基盤であるバンドメンバーが舞台の後方に位置して、物語が始まるとバンドの手前の幕が降りて、舞台に集中できるような形にしている。
バンドの中にバイオリン奏者がいらっしゃったのですが、位置関係からどの位置にいらっしゃったのか見えませんでした。(しょうがないことですけどね)
ミュージカルでは、珍しくストレートプレイに近いような形で、無音状態の中でお芝居がされる場面がたびたびあって、新鮮でした。
その間は、空調音のみのシューという音の中で会話がされていました。
音楽が、物語の中で効果的に使われて、調子よく行っているときや、これから運動するぞという時の音楽は、そういう雰囲気の音楽・歌で構成され、調子の悪い時は、重苦しい音楽になって、いて、非常にわかりやすい。
もしもストレートプレイで構成していたとしても、こういう音楽をバックを流すだろうという雰囲気でした。
ダンスを皆さん一生懸命頑張っていました。製糸の機械を小道具(人の背丈ほどあります)として、それを運びながらダンスするのはなかなか難しいと思いました。基本的に手の動きがほとんどの振り付けではありましたが、ダンスミュージカルではありませんから、この程度の動きで丁度良かったです。
カーテンコールがちょっとあっけなかったです。
送り出しの音楽が終わって、もう一度出演者登場してほしかったです。これまで見てきたメジャーな舞台公演では、送り出し音楽が終わって、その後に出演者が登場して、その時に観客のスタンディングオーベイションが向けられて、観客と出演者の一体感が醸し出されるのですが、送り出し音楽が終わったら、館内アナウンスで、これにて、本日の公演は終わりました、お気をつけてお帰りくださいでは、なんとも余韻がないです。
まあ、コロナ禍からずいぶん平和な世界になってきましたが、それでもあちこちで出演者の体調不良発生で公演が中止になっているところもある中で、無事に公演できて良かったです。
久しぶりにメジャーな舞台を観劇して、さらにその後、親しい観劇仲間と会合をもって、感想を話し合えたのも楽しい経験でした。