第2回目は【解雇】についてです。
第1回目で【解雇予告手当】についてご説明しましたが、【解雇予告手当】とは、
『使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に予告をしなければならない。
また、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない』
という、解雇される社員の金銭面での補償を明確に規律した法律でした。
これを見ると、会社は30日分の平均賃金を払えば、いつでも【解雇】できるように思ってしまう人もいます。
民法上では、【契約自由の原則】ですから、自由に出来てもよさそうですが、これだと会社が都合よく社員をクビにしてばかりいそうなので、裁判所が『ちょっと待て!』と制限をかけました。
『確かに会社には解雇権はあるが・・・、それには制限を設けます。つまり「客観的で合理的な理由がない」解雇は、【解雇権の濫用】として、解雇は無効となります。
と制限をかけました。
これを【解雇権の濫用】と呼んでいます。
また、平成19年3月1日に【労働契約法】という法律で、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法第16条)と規定されました。
この法律により、法律で解雇権が制限されることになりました。
では、「解雇の客観的合理的な理由」ってなんでしょう?
これまで認められてきたものには、①傷病等による労働能力の喪失や低下②能力不足や適格性の欠如③非違行為④使用者の業績悪化等の経営上の理由等があります。
この“客観的”っていう判断が難しい。
簡単に言うと、『他人から見ても・・・』っていうことです。
つまり、『他人から見ても、能力不足や適格性が欠けていたら解雇できる』っていうことです。
また、「社会通念上相当」ってどういうことかというと、
簡単に言うと、世間一般で『誰が考えても解雇が相当だろう』っていうことです。
これもまた判断が難しい。人それぞれ立場によって考え方が違うわけですから・・・。
両方とも、結局は最終的には裁判所が判断することになるのでしょうが・・・。
裁判官って、本当に世間一般の常識を持っているかというと・・・。疑問に感じますよね。
だから、裁判員制度ができたくらいですから・・・。
頭のいい人、法律の知識のある人は、特に法律は弱いものを守るという側面がありますからどうしても「労働者が弱く、企業が強い」って思います。
悪徳な経営者で、いつも社員をどなりつけてる社長で、社員がビビッてばかりいる会社なら、労働者は弱いかもしれませんが・・・。
今の時代、ほんまにそんな会社ばかりでしょうか・・・。
一生懸命、自分の財産をなげうって社員のために給与を払っている社長、社員が頑張ってくれるように研修を受けさせたり、旅行に連れていったり・・・。
中小企業はそんな社長がほとんどじゃないでしょうか?
でも、正直いまだに裁判官は、「労働者が弱く、企業が強い」って思っているのです。
解雇された社員が、裁判所に『【不当解雇】だ!』って訴えた場合には、よほどのことがない限り、【解雇】でもめた場合は、残念ながら会社が負けています。
私自身、『ほんまかいな・・・』っていう判断はいっぱいありますし、『実質的に会社に【解雇権】なんてないんではないか・・・』と思うケースもいっぱいあります。
とにかく、どうしても解雇したい社員(正社員、パート社員、アルバイト社員、契約社員、嘱託社員等)がいる場合でも、冷静に判断して解雇しないと、社員から訴えられて、多額の賠償金を支払わなければなりません。
また、裁判で負けたりしたら、賠償金を支払うだけでなく、社会的な信用もなくなり、経営上大きな損害をもたらすことになります。
解雇が裁判で有効か無効か判断されるのは一律ではありません。
それぞれの事例における具体的な事情や、企業規模、新卒か中途採用か、専門職採用か総
合職採用か、等々個別の事情により判断が分かれます。
【解雇】したい社員がいる場合には、感情に流されるのではなく冷静になって判断されることをお勧めします。
一時の感情で判断したら、えらいことになる・・・ってケースもありますので。
そんな時は、労務の専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めします。