シトリン夫婦は夕食のみを一緒に食べる「夕食婚」である。
自宅を本宅と呼び、仕事場を別宅と呼ぶ。
シトリンは夕食のみを旦那様と食べるために本宅に帰っているのである。
最近、別宅のお向かいさんのサトちゃんネタが多い。
インターホンが鳴る。
「産んだよ」
「分かった。降りる」とシトリン。
ゆで卵のことである。
別宅に越して8年が過ぎた。
当初は朝ごはんから昼ごはん、夕ご飯まで作ってきてくれていた。
そうそう、メンバーさんたちのおやつも。
まだ1階にシトリンが居たころは、日に何度も出入りしていたサトちゃんだ。
シトリンが2階を事務所にしたため、2階までは上がってこない。
階段を上る体力がないのか、2階に何かを感じるからなのかは聞かないことにしている。
サトちゃんも言わないし・・・・
サトちゃんはシトリンより7つ年上。「なんか作るのがおっくうになった」という。
ここ2~3年シトリンが2階で料理を作るようになったので、食事は届かなくなった。
それでも「ビルまわりの掃除はわたしがやるから」と朝からボランティアで掃除をしてくれる。
料理がおっくうになったサトちゃんはゆで卵を茹でたときには、シトリンに1個持ってきてくれる。
「いま産んだから」とアツアツのゆで卵を手渡ししてくれるのだ。
シトリンが2階のドアを開けたときに、お向かいのサトちゃんと目が合うと
サトちゃんは片手をグーにしてお尻に持っていき、手を開きパーにする。そしてシトリンを見る。
「ゆで卵あるけど食べる?」という意味である。
さすがにご近所さんの手前2階に向かって「産んだよ~」とは叫ばない。
シトリンも人差し指を下に向けて「降りるよ」のジェスチャーをする。
夕方、インターホンが鳴った。サトちゃんだ。
小さな声で「産んだよ」という。
「すぐ降りる。うちも孫が増えたから見せるわ」とシトリン。
先日雑貨屋さんから連れて帰ったあの子を背中に背負って階段を降りた。
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