Fri 240412 赤本コーナーのこと/伏見稲荷の初午大祭/千本鳥居1本目は電通だ 4515回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 240412 赤本コーナーのこと/伏見稲荷の初午大祭/千本鳥居1本目は電通だ 4515回

 本日掲載する写真は、そのほとんどが京都・伏見稲荷大社でのもの。赤い鳥居がどこまでも続く「千本鳥居」は外国人観光客に強烈な人気で、今や伏見稲荷で日本語を耳にすることが稀なほどである。

 

 ワタクシは伏見稲荷の名店「稲穂」で「スズメ」をいただくのが大好き。さすがにスズメ、頭からかぶりつくと全身の骨にド根性があって、噛みくだくのに四苦八苦し、その後の嚥下と咀嚼にもたいへんな努力を必要とする。

(京都・伏見稲荷大社の千本鳥居。ワタクシは、ふと赤本コーナーを思い出す 1)

 

 しかし軟弱なグルメ番組独特の「やわらかーい!!」「噛む前に溶けちゃったぁ!!」「何だこりゃぁ!?」の類いの馬鹿騒ぎが大キライな今井君としては、やっぱりこういうド根性の感じられる、野生味あふれる食べ物がいいのだ。

 

 最近は伏見稲荷に外国人観光客が殺到するせいで、「稲穂」への入店は困難を極める。常に満員、満員の外国人観光客が目を白黒させながらスズメを咀嚼&嚥下しているかどうかは分からないが、店員さんは「ほぼパニック」の泣きそうな表情で、客さばきに右往左往していらっしゃる。

(京都・伏見稲荷大社の千本鳥居。ワタクシは、ふと赤本コーナーを思い出す 2)

 

 しかも、露店の数が半端ではない。チョコバナナに、カニ肉棒に、広島焼きに、小籠包。発泡スチロールの白い小皿に熱々の小籠包を山盛りにして欧米とアジアの若者が走り回る状況では、危なっかしくて伏見稲荷なんか落ち着いて参拝していられない。

 

 かく言うワタクシ、昔から伏見稲荷が苦手なのである。なぜ苦手なのか、最近までよく分からなかった。というか、一昨日になってやっと「なぜ伏見稲荷が苦手なのか?」の正解が、うすうす分かりかけたところである。諸君、ワタクシが苦手なのは、あの千本鳥居の立ち並ぶ異界の光景なのである。

(京都・伏見稲荷にて。千本鳥居の1本目は、「株式会社 電通」だ。向こうには「花王」の文字も見える。ふと赤本コーナーを思い出す)

 

 まあ諸君、ニヤニヤ笑いながら、失笑寸前の呆れ顔で読んでくれたまえ。圧倒的な千本鳥居の、あの仄暗い朱色の光景が、受験生時代に本屋で立ち尽くした「赤本コーナー」のイヤな記憶を蘇らせるのだ。

 

 ま、ホントに失笑してくれたまえ。高3の今井君は、10月末まで医学部志望。すでに志望校も決まっていて、医系やら理系やらを中心に、赤本も数冊購入して過去問演習を始めていた。

 

 しかし11月に入って文転を決意。医系の赤本をみんな片付けて段ボール箱にしまい込み、何だか呆然とした気持ちで書店の赤本コーナーに出かけた。購入したのは、「東大文科」「早稲田大政経学部」の2冊だった。

(京都市営地下鉄「国際会館」駅にて。赤本の圧倒的な広告看板に思わず全身が震える)

 

 文系のことなんか丸っきり知らない今井君の前に、京大やら東大やら早慶やらの難問が詰まった大量の赤本が、まるで伏見稲荷の圧倒的な千本鳥居のように迫ってきた。「ほれ、やってみろ」「ほれ、解いてみろ」と、1冊1冊がニヤニヤ、自信満々の今井君に笑いかけてきたわけである。

 

 あれから幾星霜、はるかな駿台講師時代には慶応義塾大SFCの青本の執筆もした今井君としては、もはや赤本なんかコワくも何ともないどころか、むしろ戦友であって、むかしむかしのその昔から「赤本には間違いが多い」と悪評にさらされてきた赤本シリーズの味方として、擁護の記事も書いてきた。

 

Fri 081010 赤本には間違いが多いという噂で悩むな 過去問の正解で右往左往するな

 

 赤本擁護のこの記事は、毎年10月ごろからアクセス数が増えて、年が明けて1月から2月ぐらいまで、熟読し安心してくれる読者も多い。「赤本 間違い」で検索すると、真っ先に今井ブログの擁護記事が出てくる。

(国際会館駅にて。70周年を迎え「赤本」の表紙デザインを一新するんだそうだ)

 

 京都大の某教授が「赤本はすでに1つの文化である」と発言して話題を呼んだが、ワタクシも心底から同感するのである。出版している「教学社」は、正式名称「世界思想社教学社」であって、「世界思想社」というあたりにホンの少し怪しげなニオイを感じないこともないが、マジメな素晴らしい出版社である。

 

 この5年余り、ワタクシの京都での定宿は宝ヶ池プリンスホテル、正式名称「ザ・プリンス 宝ヶ池」であるが、赤本の教学社はプリンスホテルから徒歩10分のところにある。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 1)

 

 プリンスホテルは、隣接する国際会議場で医学系の学会がしょっちゅう開かれ、学会に集まる医学界の人々がホテルのロビーに溢れて、マコトに知的で静謐な雰囲気に満たされる。

 

 ホテル前の大通りを北に進めば同志社大学岩倉キャンパスがあり、その前で左に曲がれば、まず「餃子の王将」があって、「世界思想社教学社」の控えめな本社ビルはそのすぐ先である。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 2)

 

 その本社ビル内の会議室でかどうかは分からないが、「赤本の表紙デザインを刷新しましょう」と決まったらしいのだ。

 

「今までのデザインでは、受験生に圧迫感があるんじゃないか」「通過儀礼としての高い赤いハードルに見えはしないか」、そういう懸念を払拭するためのデザイン一新なのだという。

 

 さすがマジメな教学社の人々だ。かつてこの今井君も書店で圧倒されたあの朱色の鳥居の連続、難攻不落の赤い城のような赤本コーナーの圧迫感を、出版社としてよく気がついてくれた。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 3)

 

 そこで、教学社から至近の京都市営地下鉄「国際会館」駅には、新しい看板が出た。赤い千本鳥居が受験生を心理的にギュッと圧迫するような従来の看板をやめ、新しい表紙デザインを強調したスッキリ軽い感覚の看板である。

 

 我がMac君に「きょうがくしゃ」と打ち込むと、まず「驚愕者」と変換してよこすが、初めて赤本コーナーを訪れた受験生は、まさに驚愕者。コワゴワ赤本を解いてみて、丸っ切り解けないことを思い知り、彼女も彼氏も再び驚愕者。赤本とは、2度も3度も愕然として全身ワナワナの驚愕者を大量発生させる、高く赤いハードルだったのだ。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 4)

 

 2月13日、伏見稲荷は「初午大祭」であって、外国人観光客は普段よりますます多く、初午大祭を満喫しようと訪れた生粋の京都人の皆様も多かった。

 

 外国人女子は「いかにも&いかにも」なレンタル着物、腹巻みたいにゴムで締める「帯」、履き物は草履ではなく真っ黒いゴツいスニーカー、いやはやマコトに自由で斬新な着物姿で伏見稲荷を闊歩していた。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 5)

 

 あまりの混雑に、とても「稲穂」どころではない。「稲穂でスズメでも咀嚼するか」と楽しみにしてきた今井君は、もうガッカリして稲荷寿司もいらないし、きつねうどんも食べたくない。

 

 仕方がないから、一番苦手な千本鳥居のほうに向かい、嬉しそうに写真を撮りまくっている外国人観光客に混じって、1本1本の鳥居をしげしげと眺めてみた。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 6)

 

 すると諸君、千本鳥居の1本目には黒々と「株式会社 電通」の文字。向こう側にはやっぱり黒々と「花王」の文字がある。朱色の柱に太く黒々とした文字を眺めると、やっぱり受験生の頃に圧倒された赤本コーナーの思い出が蘇る。

 

 あの時は「東大文科」「早稲田大政治経済学部」の文字。まだ日本史も世界史もほとんど手をつけていなかった高3理系クラスの今井君に、東大日本史と東大世界史の記述論述問題が重くのしかかった。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 7)

 

 早稲田の古文なら何とかなりそうだったが、東大の古文に漢文となると、医系志望から文転した直後の今井君としては、少なからず手を焼きそうだった。あの赤本コーナーの重い驚愕を、これからの受験生には出来る限り味わせたくないのである。

 

 赤い柱に黒々と大書された「株式会社 電通」「花王」その他の文字を眺めると、今度はふと就職活動の諸君の暗い驚愕を思うのである。大学受験から4年、長くとも6年、彼ら彼女らは類似形というか相似形というか、ほぼ同じような驚愕に晒されるわけだ。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 8)

 

 しかも今度は「赤本」もないし、過去問演習みたいなものもない。どんな問題が出るか、設問にどう取り組み、どう解答すればこの鳥居をくぐり抜けられるかも分からない。さまざまな都市伝説があって、「コネクションがなきゃムリ」「コネなしじゃ話にならない」と失笑される場合もあるだろう。

 

 ふと暗澹とした気持ちにもなるのだが、だからこそ諸君、せめて大学受験の時代ぐらいは、赤本なり過去問演習講座なり、われわれ予備校の世界が1世紀もの時間をかけてヒタヒタと作り上げてきた文化遺産を徹底的に利用して、明るく楽しく勉強していただきたい。

    (2月13日、初午大祭の伏見稲荷大社にて 9)

 

 実際に、東大でも京大でも、北大でも名大でも、阪大でも九大でも、早稲田でも慶應でも、過去問演習講座でのワタクシたちは、すべての鳥居を軽々とくぐり抜けられるように、最高の解説授業を展開している(はずだ)。

 

 いやはや、その点はもちろん、われわれのライバルである赤本シリーズでも同じこと。これからも同じ一種の文化遺産として、切磋琢磨していこうと考える。その点、あらゆる予備校関係者の思いは同じである(はずなのだ)。

 

1E(Cd) Knall:BRUNNER/MARKUS PASSION 1/2

2E(Cd) Knall:BRUNNER/MARKUS PASSION 2/2

3E(Cd) Diaz & Soriano:RODRIGO/CONCIERTO DE ARANJUEZ

4E(Cd) Akiko Suwanai:BRUCH/CONCERTO No.1  SCOTTISH FANTASY

5E(Cd) Lenius:DIE WALCKER - ORGEL IN DER WIENER VOTIVKIRCHE

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