Sat 230701 京大過去問解説/京都今出川「epice」のランチ/廬山寺の桔梗 4401回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 230701 京大過去問解説/京都今出川「epice」のランチ/廬山寺の桔梗 4401回

 すでに20年分も蓄積してきた我々の「過去問演習講座」には、必ず冒頭に「全体概観」のコーナーがあって、その大学の入試動向や出題傾向を論じ、設問ごとの時間配分や解答の順番をアドバイスして、目指すべき得点をどうやって積み上げるか、懇切丁寧に解説することになっている。

 

 ワタクシも今までにたくさんの「過去問演習講座」を担当した。国公立なら名古屋大・広島大・岡山大・熊本大・三重大、私大の方は早稲田大の政経・法・文・国際教養と、明治大の文学部をずいぶん長い間解説してきた。

 

 さすがにあんまりたくさん働きすぎたので、最近はお願いしてギュッと絞らせていただき、一昨年あたりから京都大と名古屋大のみにさせてもらっている。担当すれば、当然のように「全体概観」のコーナーもキチンとこなさなければならない。

(京都御所そば、「廬山寺」奥の離れで、紫式部は執筆を続けた)

 

 しかし毎年続けていると、なんとなく「毎年同じようなことばかり言っている」「言ってることが去年と全く同じなんじゃないか」と、少し気が引けてくる。何しろ出題傾向でも入試動向でも、同じ大学学部でそんなに毎年大きく変化することはないのである。

 

 せいぜいで、「今年の京大英語では、この数年必ず出題されていた記述論述式の問題がなくなった」みたいなことを、ちょっと大げさな身振りと、ビックリしたような表情とで語ることになる。

 

 共通テストの解説授業でも「少し問題傾向が変わりました」「ますます長文の語数が増えました」とか、同じような話ばかり繰り返さなければならない。長く予備校講師をやっていると、これが結構しんどいのである。

 

 昔のセンター試験でも

「小説物語文がなくなりました」

「復活しました」

「整序英作文が増えました」

「減りました」

「発音問題がなくなって、アクセント問題だけになりました」

「今年はまた復活しました」

いろんな予備校でワタクシは「センター試験担当」だったから、消えたものが復活し、復活したものが消滅する長い栄枯盛衰の歴史を間近で眺めてきた。

   (廬山寺にて。「紫式部 邸宅跡」と刻まれている)

 

 何しろ過去の解説であって未来の予測ではないのだから、どんなに過去を語っても、その翌年には外される。予測屋として「当たった&外れた」で仕事をしているのではないから、過去を語って未来を外されても、そのこと自体に罪はないはずだが、物の見事に外されるとやっぱり後味が悪い。

 

 そこで「たまには若干の『異色』も悪くないな」と思い、特に話が「京都大学」ということになれば、過去問解説授業を受けている受験生諸君もマコトに賢い人ばかりだろうから、2022年の全体概観では、ちょっと思い切ってその「若干の異色」をやってみた。

 

 だって、「入試の動向」「出題傾向」なら、模擬試験の解説やら、予備校の通期授業に夏期講習に冬期講習、ほぼ全受験生が、すでに「耳にタコ」「聞き飽きた」「暗記するほど聞いた」「自分で解説できるぐらいだ」というレベルまできているに違いない。

(京都・廬山寺。「桔梗 咲いています」「源氏物語 執筆地 紫式部 邸宅趾」の看板と、「桔梗 咲き始めました」の小さな貼り紙があった)

 

 そこで2022年、キチンと了承を得た上で、ワタクシの京都大学・全体概観は、「京大入試の朝」のストーリーを話すことにした。

 

 実際には実際の動画を見ていただくしかないが、例えば京阪電車を終点の出町柳で降りて、鴨川というか賀茂川というか高野川というか、出町柳は微妙な位置にあるが、とにかく川を背にして百万遍キャンパスに向かいながら「受験生として何を思うべきか」みたいなことを力説したのである。

 

 100年以上の昔から、京都大学の学生たちがみんな歩いた道である。左に洋食屋「ミリオン」、右に「三高食堂」、その向こうに「大力餅食堂」、百万遍の交差点をわたれば、超大盛り洋食の店「hi-lite」。100年以上の間、京大生が元気に昼飯を貪った界隈である。

 

 入試の朝に、受験生としてどんな思いでここを歩いていくべきか、入学後の4年ないし6年、合計およそ1500日ないし2200日、京大生として毎日何を思いながらこの道を歩くべきか。「全体概観」の中で今井君は、そういうことも語ったのである。

 

 いや、もちろん最低限の必須事項はキチンと解説した上でのことである。各設問の目標得点、時間配分、そういう必須事項は語り尽くした上で、それ以上の詳細は各設問の実際の解説に委ね、残った時間で「受験の日の朝」について、「どんな思いで入試会場に向かうべきか」を熱弁した。

  (廬山寺の境内にて。クチナシのいい香りがしていた)

 

 6月中旬のある朝、大阪滞在中のワタクシは、ほぼノープランで京都にやってきた。大阪梅田を10時に出る阪急の特急電車に乗れば、京都河原町に11時に着く。薄曇りの蒸し暑い京都で、ワタクシは祇園四条から京阪電車に乗り換え、出町柳に向かった。

 

 何しろ「ほぼノープラン」だったのだから、出町柳から百万遍方面へ、昨年の「京大・全体概観」で述べた通りのルートで京大を目指してもよかったが、ふと思いついてそれとは逆の方向へ、鴨川を西に渡って京都御所のほうに向かった。

(廬山寺のキキョウ。みんなで太陽の方を向いて、若干いけずな感じ 1)

 

 目指したのは、「廬山寺」である。ちょうどキキョウが咲き始めたところで、門前にも「桔梗が咲き始めました」という貼り紙が掲示されていた。

 

 廬山寺は、「紫式部が源氏物語をここで執筆しました」という由緒正しいお寺であって、いやはや来年のNHK大河ドラマが始まってしまえば、全国各地どころか世界中から観光客がワッと押し寄せ、とても「キキョウの花をゆっくり眺める」どころではなくなってしまうだろう。

 

 廬山寺は、2022年2月以来、1年半ぶりの訪問だ。前回は「廬山寺の鬼法楽(おにほうらく)」を眺めにきた。赤・青・黒の鬼3匹が乱暴狼藉の限りを尽くし、しかしついにお寺の偉いお坊さまたちの法力に屈して、ほうほうのていで逃げていくというストーリー展開である。是非とも下の記事、読んでくれたまえ。

Sun 220220 京都・廬山寺で節分「鬼法楽」/子どもたちに鬼をやらせてあげたい 4170回

 

(廬山寺の斜め向かいの小学校。この校章もさすがだが、校章の下には「藤原定家 一条京極第跡」の石碑がある)


 可哀想な鬼3匹の姿を、1年半前のワタクシはホントに間近で食い入るように見つめたのだが、あの頃はまさにコロナが猖獗をきわめていた頃で、廬山寺を訪れる人は多くなかった。

 

 それでも廬山寺に集まった善男善女の皆様とともに、ワタクシもギュッとマスクで楕円の顔を覆い、オミクロン株と鬼3匹の退散を、お坊さまたちといっしょに熱く仏に祈ったのであった。

 

 どうやら、あの時の人々の祈りが実ったようである。デルタもオミクロンもどうやら一応は退散、鬼3匹も退散。だからきっと2024年春、次の廬山寺の鬼法楽も、2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の初夏のキキョウの花も、ドッと詰め掛けた観光客のはるか後ろからでなければ楽しむことはできそうにない。

(京都今出川、京町家フレンチ・epice(エピス)。暖簾にはエビス様の明るい笑顔があった)

 

 廬山寺に入る直前、ヨサゲなフレンチのお店を偶然に発見して、「ここでランチ」ということにした。店の名は「epice」。「百名店」にも選ばれている京町家のフレンチ、予約がなければ入れそうになかったが、丁寧にお願いしてみると、「どうぞ&どうぞ」とたいへん気さくに招き入れられた。

 

 カウンターに座ると、まず目につくのが頭上に美しく作られた欄間。カウンターの引き出しを開けると、お上品に言えば「カトラリー」、要するにナイフとフォークとスプーンが、1人分キレイに整理されて並べられていた。

 

 こうなると、何しろ最近の今井君は明るく元気に振る舞うことにしているので、店主のオニーサマといろんな雑談に花を咲かせた。飛び込みで入ってきた表六玉のクセに、お隣の席の高級オジサマやら高級オバサマやらに悪い気もしたが、店主は予想通り思い切り気さくに対応してくれた。

(今出川「epice」のカウンターにて。引き出しを開けると、そこにはキレイにカトラリーが整列していた)

 

 大満足で、廬山寺へ。鬼法楽の日とは比較にならないぐらい静かな境内に、あっちにちらほら、こっちにちらほら、キキョウの花の小さな群落が、初夏の風に揺れている。花はみんな太陽の方を向いているので、暗い廊下から眺めると、花の群が冷たくソッポをむいているように見える。

 

 この静けさの中で、紫式部は源氏物語を執筆したのだ(と言ふことになっている)。もちろん、紫式部の書斎は他にもいろいろ存在し、滋賀の石山寺なんかもその1つであるが、何しろあんなに長い物語だ、紫式部どんだって、一箇所に腰を据えて書いていたら、きっと退屈でもっと機嫌が悪くなっちゃったに違いない。

 

 ワタクシは明るく元気に他の人と話すのが好きなので、爽やかな風の吹き渡る廬山寺の廊下で、70歳代後半と思われる高級オバサマお2人と、大河ドラマその他について二言三言コトバを交わしてみた。仏頂面をしていても何の思ひ出も残らないが、これで今年の初夏の廬山寺のこと、5年も10年も忘れずにいられそうだ。

(廬山寺のキキョウ。みんなで太陽の方を向いて、若干いけずな感じ 2)

 

 珍しいことに、ワタクシは廬山寺でお土産を買った。小5の夏の田沢湖への遠足の時に、「宝船に乗った七福神の貯金箱」のせいで屈辱を味わって以来(大爆笑の詳細は、「Fri 090911 忙しい夏だった どれほど旅行しても、お土産を買ってこないのは何故か」を参照。後半部に屈辱体験の詳細がある)、今井君は常に「お土産を買う」という行動を避けてきたのだ。

 

 ホントに久しぶりにお土産を買ったのは、紫式部どんの影響かもしれない。購入したのは、桔梗の花のデザインの栞、100円。「パウチっこ」というかラミネート加工というか、水気に強い栞だから、お風呂での読書に最適かもしれない。

 

 それにしても諸君、「パウチっこ」って、今や死語になっちゃったんですかね。最近あまり聞きませんな。

 

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 3/6

2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES4/6

3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 5/6

4E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6

5E(Cd) Barenboim & Chicago:SCHUMANN/4 SYMPHONIEN 1/2

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