Thu 230622 リクライニング/コドモ男子との戦い/犬吠埼と高浜虚子/ぬれ煎餅 4393回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 230622 リクライニング/コドモ男子との戦い/犬吠埼と高浜虚子/ぬれ煎餅 4393回

 ヒコーキでは、ワタクシはあんまりリクライニングを使わない。国際線に踏んぞり返ってヨーロッパや中南米を目指す時ならいざ知らず、国内線では飛行時間が短すぎて、とてもリクライニングなんか倒している暇がないのである。

 

 国際線の場合、ワタクシはほぼ確実にエコノミー席を選択する。別に「オカネがない」という訳ではないが、会社のオカネで豪華海外出張というなら別のこと、自分で苦労して稼いだオカネで乗るとなると、ファーストもビジネスもどうしてもコスパが悪すぎる。

 

 ビジネスクラスに乗るときは、かかる費用を飛行時間で割ってみるといい。12時間のフライトで、もしも48万円払っているとすれば、1時間4万円。60万円なら、1時間5万円だ。自分の給料を時給換算して、時給4万円とか時給5万円とか、そのレベルの人って、そんなにたくさんはいないんじゃないか。

(銚子電鉄、「犬吠」の駅。白壁にアズレージョ、こりゃポルトガルのイメージだ 1)

 

 ファーストクラスとなると、いやはや、もう「時給10万円♡超」の世界。確かJAL系ホテルだったと思うが、「ファーストクラスのシートをイメージしたカプセルホテル」というのを作って、ファーストクラスを売り込もうとしたことがあった。

 

 しかし、ということは諸君、ファーストクラスとは「カプセルホテルとそっくり」ということだ。ファーストクラスに乗って12時間で120万円も支払うとすれば、同じ時間をカプセルホテルに宿泊して120万円支払うのとおんなじだ。その勇気は、ワタクシにはどうしても湧いてこないのである。

(銚子電鉄、「犬吠」の駅。白壁にアズレージョ、こりゃポルトガルのイメージだ 2)

 

 というわけで、ワタクシの外国旅行はほとんどがエコノミークラス。機体の一番後方、トイレとギャレーの近くに席を予約すると、「お隣が空いている」という僥倖に恵まれる確率が高い。お隣さえ空いていれば、空間的余裕はビジネスクラスとそんなに違わない。

 

 一番後方の席がいいのは、「真後ろの席にコドモが座る」という危険がゼロだという点である。

 

 もちろんワタクシには子育ての経験があるから、コドモは大好きだ。普段のワタクシは恐ろしくなるほどコドモに優しいし、コドモに甘い。

 

 自分自身いまだに精神年齢は一般的コドモ以下だから、コドモの気持ちもスゲーよく理解できるし、ヨソの子が暴れたり泣きじゃくったり、大人の言うことをどうしても聞こうとしないとき、すぐに「おお、コーラを買ってほしいんだな」「アイスを買ってほしいんだな」と、すぐに分かってあげられる。

(犬吠駅の構内。ポルトガルは一変して、ただひたすら「ぬれ煎餅」の世界に変わる)

 

 その「分かってあげかた」もまた詳細を極めている。コドモがコーラを買ってほしいときは、決して店で買ってほしいのではない。自動販売機で買ってほしいのである。

 

 自動販売機から出てきた冷たいコーラをギュッと握って、ライバルとして周囲にいる他のコドモたちに、優越感たっぷりの笑顔の視線を送りたいのである。

 

「オレは買ってもらったぞ。オマエは?」「えっ? 買ってもらえないの?」「オレの勝ちだな、かははははは」。コドモどうしのそういう視線のやりとりを、今井君もハッキリと覚えている。

         (快晴の犬吠埼 1)

 

 しかし諸君、国際線ヒコーキの中では話は別だ。何しろ12時間の長丁場だ。すっかり大人になったワタクシにとっても、コドモ、特に男子のコドモは、国際線フライトでは最大の要注意人物とみなしたほうがいい。

 

 真後ろの席に6歳か7歳の男子が座ってみたまえ。座席に座るやいなや、前の座席をボンボン容赦なく蹴り上げ始める。なぜ蹴るかというに、「そこに席があるから」であって、目の前に座席がある限り、彼は12時間ノーストップで席を蹴り続ける。

 

 やがて機内食の時間になって、座席前のテーブルを下ろしていいことになる。すると今度は男子君、テーブルをバンバン容赦なく叩き始める。

 

 なぜ叩くかというに、「そこにテーブルがあるから」であって、食事が済めばママが取り出してくれたシールブックで遊びながら、テーブルを情け容赦なく、和太鼓かティンパニみたいにリズミカルに叩き続ける。ママが気づいてテーブルをしまおうものなら、今度は激烈な泣き声をあげながら、前のシートへのキックがいっそう激しいテンポを刻むのである。

 

 要するに、国際線エコノミーで後ろにコドモ男子が座ってしまったら、12時間の地獄絵図はほぼ確定的。「眠る」などと言ふノンキなことはまず不可能であって、どうしたらキレずに目的地に到着できるか、精神の安定のほうを気遣わなくてはならない。

 

 だからワタクシは、国際線でエコノミーを予約する場合は必ず「最後部席」。後ろさえ空白ならば、男子に蹴られ続けることもなければ、後ろのテーブルが和太鼓化する危険性も皆無なのだ。

         (快晴の犬吠埼 2)

 

 新幹線となると、ワタクシは遠慮なくリクライニングを使用させていただく。後ろの席の人に「リクライニング、倒していいですか?」と尋ねることはしない。万が一「イヤです」「席を倒すのはヤメてください」などと言われたら、そこから目的地までのお互いの気まずさには耐えられない。

 

 あれは、黙って倒せばいいのである。後ろで読書やスマホや音楽を楽しんでいる人に、あえてそれを中断してもらって「倒していいですか?」などと質問すれば、相手だってかえって煩わしい。

 

 黙って、静かに、ゆっくりと倒す。あとはあくまで静かに過ごす。だってせいぜい1時間か2時間の旅だ。あんまり礼儀&礼儀と強調しすぎると、「慇懃無礼」という逆効果になりかねない。

 

 むしろ今の世の中は、例えば「咳をしがちな時にはキチンとマスクをする」「座席でPC操作をする時にはキー音が大きくならないように最大限の注意を払う」「同僚と乗る時には、座席で仕事の話をしない」、そういう配慮の方が圧倒的に大切だ。

         (快晴の犬吠埼 3)

 

 ところで、どうして今日のワタクシがリクライニングの話をしたかというに、A4版3枚も書いた後でそれを告白するのも驚きだけれども、「うーん、日本列島って、太平洋にどっかと腰をおろし、かなりゆったりリクライニングシートを倒したみたいな姿だな」と思ったからなのである。

 

 北海道がアタマ、九州から沖縄にかけてが膝から下のアンヨ、関東が腰に該当する。「よっこらしょ」と大っきな太平洋に腰を下ろし、ちょっと大きめのアタマである北海道を座席のピローに預けて、実にゆったりと穏やかに休憩をとっている姿なのだ。

 

 6月8日のワタクシは、そういう日本列島の本州の東端まで旅してきた。千葉県銚子は、関東の地図だけ見ていると思わず「本州の東端」に見え、銚子から銚子電鉄で20分あまり、「犬吠」の駅で降りて犬吠埼の灯台の足許に立てば、「ついに本州の東端まで旅してきた」の感慨は深い。

   (犬吠埼灯台。「見よ 立てり」の現場である)

 

 高浜虚子どんも、この犬吠埼まで来て感激の一句を残している。

「犬吠の 今宵の朧 待つとせむ」

 

 さすが俳諧師だ、マコトに飄々としているが、「ついに東端までやって来た」という感動というか感激というか、「本州最東端の犬吠埼、茫々とした太平洋に昇る朧(おぼろ)月を待つことにしよう」と、ずいぶん感動も大きかったようである。

 

 ただし諸君、正確にはここは「本州の東端」ではない。最東端は別の場所、岩手県三陸海岸「魹ヶ埼」こそ、本州最東端だ。「魹ヶ埼」と書いて「とどがさき」。トドって、漢字で書くと「胡獱」または「海馬」でもいいが「魹」もOK。毛の生えた巨大な魚にでも見えたんですかね。

(犬吠埼、高浜虚子の句碑。「犬吠の 今宵の朧 待つとせん」)

 

 ワタクシの感激もまた大きかった。何に感激したかというに、諸君もちょっと見てくれてまえ(Wed 230607 アイドル♡娘義太夫/どうする?どうする?堂摺連/再び大河のこと 4381回)、銚子に旅立つ前日の記事に、ワタクシは何とこの高浜虚子のことを書いている。

 

 娘義太夫に夢中になった俳諧師として高浜虚子に触れたのだったが、この数ヶ月ワタクシは自分の予知能力について「すげー」「すげー」と自ら感動し続けている。高浜虚子のことを書いた翌日に高浜虚子の句碑に出会ったりすれば、そりゃ誰だってビックリする。

(高浜虚子の句碑もあれば、佐藤春夫の詩碑もある。21世紀の日本も理系一辺倒じゃなくて、もっと句とか詩とか、文系いろいろ頑張っていきたいですね)

 

 犬吠の駅は、ポルトガルのイメージ。駅名表示もポルトガルのアズレージョ風デザインで、駅舎の白を際立たせている。しかし一歩中に入れば、もうひたすら「ぬれ煎餅」「ぬれ煎餅」、ひた押しに押してくる。

 

「何が何でもぬれ煎餅、それ以外は許しません」という気合いにはタジタジであるが、それもまた「絶対にあきらめない」という素晴らしい営業努力の一環。ワタクシは大いに評価するのである。

 

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10

2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10

3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 10/10

6D(DMv) HAVOC

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