Wed 220907 9月の受験生も心配だ/夏祭のあと/もう授業には出ないと言ふ人々 4263回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 220907 9月の受験生も心配だ/夏祭のあと/もう授業には出ないと言ふ人々 4263回

 むかしむかしのそのむかしから、「9月は一番さみしい月」ということになっていて、1979年、確か「マリウチ・タケヤ」という女性シンガーが、デビュー3曲目のシングル「セプテンバー」で、その辺をマコトに哀切に訴えかけたのである。

 

 もちろん「マリウチ・タケヤ」などというのは冗談であって、我々の世代にとって憧れの的だった竹内まりやどんは、出雲大社の目の前の老舗旅館のお嬢さま・イリノイ州の交換留学生・慶應義塾大学で英米文学を専攻。知性的な女子にメロメロなタイプの男子は、こぞって彼女のトリコになった。

 

 1枚目のシングル「戻っておいで 私の時間」が伊勢丹のCMソング、2枚目のシングル「ドリーム・オブ・ユー 〜 レモンライムの青い風」もキリンレモンのCMソング。マコトに恵まれたスタートだった。

 

 何しろあの当時は「CMソングならほぼ例外なく爆発的に売れる」という昭和レトロな時代。しかも21世紀の日本とは違って、女子アイドルが集まってアニメ系&電子音系の高音で歌い踊るような時代ではない。ホンの少し遅れ気味に歌う、彼女のゆったりとした知的中低音の声に、メロメロになる男子が多かった。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 1)

 

 その集大成が「駅」であって、もともと中森明菜どんのために彼女が書いた曲だったが、それを1987年に自らカバーして大ヒット。もう35年も昔のことだが、ワタクシの古い古い友人なんかも、当時「涙が止まらない」と言ってワナワナ震えたものだった。

 

「駅」の影響がどれほど大きかったかは、カバーしてシングルを出したシンガーの数を見ても分かる。主なところだけでも、徳永英明・布施明・甲斐よしひろ・中西保志・大橋純子・森山良子・岩崎宏美・弘田三枝子が名を連ねる。

 

 何故か演歌歌手にも名乗りをあげる人々が多くて、美川憲一やら石川さゆりやら、「おやおや、紅白歌合戦の常連がほとんど、この曲のカバーシングルを出してるんじゃないですか?」と、ワタクシなんかは驚きの声をあげるわけである。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 2)

 

 さて、このあたりで本題に入らなければならない。「そして9月は ... いちばん寂しい月」。竹内まりや3枚目のシングル、決して「駅」に負けない名曲「SEPTEMBER」を、読者諸君にもぜひ聞いてもらいながら(ようつべ利用のこと)、受験生にとって「そして9月は一番アブナイ月」であることを認識していただきたい。

 

 夏祭の、湯気がもうもうとあがるような激しい興奮は、すでに去ったのである。汗まみれの人々が激しく引っ張り回した夏祭の山車は、もうとっくに解体されたか、暗い倉庫にしまいこまれて、11ヶ月後の出番を大人しく待っている。山車以上に汗まみれの男女が、豪勢にもみにもんだお神輿も、やっぱりどこか静かな片隅に鎮座して、来年の夏を待ち受ける。

 

 もちろん9月にも10月にも、「秋祭り」というものがあって、それはそれで大いに楽しみだけれども、どうしてもあの「汗まみれ」「汗だく」の興奮からは遠い。人々はどこか上品にオスマシして、なりふりかまわぬ夏の興奮ぶりを忘れてしまっている。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 3)

 

 受験生にとっての夏祭はもちろん夏期講習であって、何しろ4月下旬から5月中旬にかけて予備校講師たちがこぞって宣伝しまくった夏期講習だ。浪人生も現役生も、その夏祭に参加して踊りまくり、汗まみれの1ヶ月を過ごせば、驚くべき学力&実力の向上は確実だと信じて過ごしてきた。

 

 その夏祭を楽しみにするあまり、「6月」という最も大切な時期をないがしろにしてしまう危険については、すでにこのブログで詳しく述べておいた(Wed 220601 6月の受験生が心配だ/復習/授業を+評価/ランチを楽しみたまえ 4229回

 

 つまり、「夏休みに汗まみれの大騒ぎに参加すれば、何らかのミラクルが起こって、大した努力もしないのに奇跡的に実力が伸びる」、その種の誤解である。

 

 営業に熱心すぎる塾と予備校、自己宣伝に自らの将来をかける講師たち。初夏の頃の生徒諸君は、夏祭の広告と宣伝に踊らされてしまいがちだ。実際の6月がどうだったか、今ちょっとだけ反省してみるといい。

 

 予習も復習も、音読も授業への出席率も、6月は惨憺たるものだったんじゃないか。夏祭の宣伝に相勤めた講師諸君も、結局1学期のテキストにたっぷりのやり残しがあったんじゃないか。「テキストさえやっていれば大丈夫」と胸を張った予備校の側も、そういうテキストのやり残しを「量より質だ」とか言って放置したんじゃないか。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 4)

 

 そして7月、例年通りの夏祭がやってきた。今井君は18歳の頃に生徒としても夏祭に参加したことがあるし、講師として夏祭を満喫した歴史は、河合塾・駿台・代ゼミで合計15年に及ぶ。どれほど夏祭が楽しいか、骨身にしみて熟知している。

 

 その激しい興奮は、青森のねぶたにも、秋田の竿燈にも、徳島の阿波踊りにも、決してヒケをとるものではない。いつもは浪人クラスと現役クラスもちろん別々であるが、夏祭の期間中は浪人&現役入り乱れて大教室に集うわけだから、たとえ「コロナ」という事情があっても、そのスッタモンダぶりは別格である。

 

 講師サイドも「ここが勝負のしどころ」であって、ありとあらゆる裏ワザ&得意ワザを繰り出して、満員の生徒諸君をアッと驚かせ続ける。特に将来のかかっている若いセンセたちは無我夢中、岸和田のダンジリを先頭で引っ張るぐらいの気概がないと、この夏祭を生き抜くことは出来ない。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 5)

 

 17歳や18歳の男女がこんな狭い空間でシノギを削り合うわけだから、校舎の中でも外でも、当然のように「アオハル系エピソード」などと言ふ微笑ましいものも、たくさん渦巻き始める。

 

 何しろ夏休みの予備校の世界だ。女子のメイクも自由、ファッションも自由。いやはや、秋田の田舎でマコトに地味に生活していた18歳の今井君なんか、あんまり周囲がヒラヒラ花やかなので思わず気分が悪くなり、夏期講習中は休み時間のたびにトイレに駆け込む始末だった。

 

 もちろんワタクシは、アオハル系エピソードやら、受験生カップルのスッタモンダの世界が「勉強の妨げになる」とか、そんな不粋で陳腐なことを言ふつもりはサラサラない。女子の多くはアオハル系スッタモンダの真っただ中でもマコトに地道に学力をつけていくし、男子にもそのおかげで飛躍的に伸びる諸君が少なくないのである。

 

 問題はやっぱり、「そして9月はいちばん寂しい月」という寂寥感にあるようだ。夏祭は、去った。9月8日、9日、10日、夏休みの終わった予備校の2学期が始まる。すると、静まり返った教室内のあまりの寂しさに、多くの生徒は冷たい衝撃を受けるのだ。

 

 だって諸君、またまた浪人クラスと現役クラスは別々の授業になって、要するに教室内の生徒数は半分になる。夏祭の汗だくの熱気は完全に消滅して、そのガラガラ感はどうしようもない。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 6)

 

「アオハル系カップルは?」と思って探してみると、自習室で2人、またはコーヒーショップで2人、あるいは予備校の食堂で2人、何だか嬉しそうに&楽しそうに、同じ参考書に取り組んでいる。

 

 友人として「オマエたち、授業には出ないのか?」と問い詰めると、「もう授業なんか出ている場合ではない」「結局は自分で問題を解く力をつけないと」「オマエ、まだ授業なんか出てんの?」「だって授業って、雑談ばっかでムカつくじゃん」「時間の無駄なんじゃん?」「ねー♡」「ねー♡」と言い返される。

 

「確かに、その通りなのかもしれない」と思うのもムリはない。9月中旬、意気揚々と教室に現れたセンセは、授業冒頭からいきなり「冬期&直前講習」の説明を始める。だって9月下旬には冬期講習と直前講習の申し込みがあるから、自分が年末から年始にかけてどんな講座を担当するか、詳しく説明しなければならないのだ。

 

 そういうスッタモンダばかりで、9月の予備校の授業はオシマイになる。だから「もう授業には出ない」「自分で過去問をやる」という熱いカップルの言いぶんのほうが、はるかに正しいように思えてくる。

   (夏祭の熱気。8月1日、大阪・住吉大社にて 7)

 

 そこで「オレも授業はもうヤメた」「ワタシも自分で赤本をやる」という人々が加速度的にズンズン増え、教室はますますガラガラ、それでも講師たちはマイクを異様に口に近づけてボソボソ話すばかり。「オレについてくれば大丈夫」と、春にはあんなにニコヤカだったのに、冬期講習の申し込みが終わった瞬間、どうも心はここにないようだ。

 

 以上が諸君、9月の受験生が晒される状況である。焦りに苛まれ、とりあえず第1志望と第2志望の赤本を買って帰宅する。予備校の授業は、「まあ今日は出なくていいんじゃないか」「どうせ雑談と宣伝だ」と、いくらでも自分に言い訳はできる。

 

 夕暮れに帰宅して、新しい赤本をペラペラめくって、「傾向」とか「対策」とか「講評」とか、要するに読んでもあまり意味のないページを拾い読みして、深い溜め息をつく。だって、どうも問題をマトモに解けそうな気がしないのだ。

(大阪・住吉大社駅前で、こんなお店に入った。春場所の頃、有名なお相撲さんたちもたくさんこの店に来たそうな)

 

 で、一番危険な日曜日がやってくる。朝9時、「時間を計って、やってみよう」と赤本を開くわけだ。8月に受けた模擬試験の成績がどんなに惨憺たるアリサマであっても、何しろ8月の模試は「夏期講習の成果が出る前のこと」だ。あれから1ヶ月が経過して、奇跡的に学力がついているかもしれない。

 

 しかしもちろん、そんな奇跡は起こるはずがないから、赤本を広げ、アラームで時間も計って、30分も経たないうちに呆然とする。浪人生の場合、「むしろ今から半年前、受験直前の2月の方がどんどん問題が解けた気がする」「この半年でずいぶん力が落ちた」と実感したりする。

 

 以上が諸君、大ベテラン今井が「9月の受験生が心配だ」とタイトルをつけた理由である。特に浪人生の場合、全身から血が引いていくような絶望感を感じる。

 

 現役生の場合、ここでほぼ冗談のつもりで「浪人するのもいい経験かもしれない」と考え、「高校の先生方も『うちの高校は4年制なんだ。4年目は河合塾に(駿台に)行くんだ』、そう言っていたはずだ」と思い出し、「それもいいかも」と呟いて、浪人前提の「18ヶ月計画」を立て始めたりする。

(住吉大社の駅前で、クラシックな海老フライカレーを注文。徹底的にクラシックで、たいへんオイシューございました)

 

 そこでもちろん大ベテラン今井としては、そういう危機の中にいる受験生諸君のために、ここで何らかの処方箋を書かなければならない。受験生諸君のためばかりではない。むしろ受験生の周囲にいてハラハラしているオトナの皆さんへの処方箋も必要だろう。

 

 しかし今日もまた、やっぱり長く書きすぎた。話は次回に続く。9月10日はもう中秋の名月。今年の中秋の名月はピッタリまんまる満月なのだそうだが、その前までにはどうしても続きを書かなければならないだろう。

 

1E(Cd) Luther Vandross:YOUR SECRET LOVE

2E(Cd) Luther Vandross:SONGS

3E(Cd) Luther Vandross:I KNOW

4E(Cd) Luther Vandross:ANY LOVE

5E(Cd) Luther Vandross:LUTHER VANDROSS

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