Mon 220321 大徳寺大仙院/ご住職の抹茶/芳春院/淡交/串揚げ屋の「あさげ」 4176回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 220321 大徳寺大仙院/ご住職の抹茶/芳春院/淡交/串揚げ屋の「あさげ」 4176回

 2月の4日だったか5日だったか、まだロシアの許しがたい蛮行が始まる前の超早春の1日、京都でポッカリ丸1日お休みになったので、大徳寺の大仙院に石庭を眺めに行ってきた。

 

 と言うか、ごく正確かつ正直に告白すれば、今宮神社の門前「いち和」の炙り餅をワシワシ貪ったあと、まだ夕暮れまで時間があったので、「大徳寺にでも行くか」「庭園を見てきたとブログに書けば、オシャレで知的な人間と思ってもらえるじゃないか」と考えたわけである。

 

 晴れてはいたが、何しろ琵琶湖周辺で大雪が降った翌日のこと、夕暮れ近い京都北山は乾いた冷たい風が吹き荒れていた。しかし諸君、やっぱり節分と立春が過ぎれば、風に砂埃が巻き上げられて視界はボンヤリ霞み、その春霞だけでも「少し春が近づいてきたかな」と感じる午後だった。

 

 実は大徳寺は1月中旬にも訪れて、塔頭を2つ訪問した。「端峯院」と「龍源院」、どちらも石庭が有名。最も有名な「大仙院」を敬遠しておいたのは、大仙院はこの30年何度も訪問して、お庭の様子もすっかり脳細胞に刻み込まれ、あえて再訪しなくても、記憶の中でナンボでも訪問を繰り返せるからである。

     (大徳寺の塔頭「芳春院」を訪問する)

 

 しかし超早春のこの日、まさかまた「端峯院&龍源院」というわけにもいかない。それこそ我が強烈な記憶力の中に刻み込まれていて、訪ねる前から全てパーフェクトに思い出せるのである。

 

 そこでワタクシは「そういえば10年以上ご無沙汰している大仙院に、挨拶ぐらいはしておくべきだ」と判断。「ついでに東司を拝借して」と、良からぬことも思いついた。東司とは諸君、もちろん御不浄のこと、御不浄とはもちろんトイレのこと。

 

 今宮神社前の炙り餅屋で寒空にお茶をがぶ飲みしたから、この時の今井君の頭脳は「どこでいかにして水分を排泄するか」に集中していた。いやはや何とも情けないオヤジでいらっしゃる。

 

 その大仙院で、「お抹茶をいただこう」と決めた。大仙院は「写真撮影禁止」と言ふ意地悪な貼り紙がそこいら中に貼られていて、今井君はその種の意地悪が大キライなのであるが、貴重な文化財なんだからまあ致し方ない。写真は我慢して、せめてお抹茶ぐらい味わっていってもいい。

 

 そう思った瞬間、東司も御不浄も西浄も、お腹の余分な水分廃棄作業のことも、みんなすっかり忘れてしまった。お抹茶にお菓子がついて500円だったか800円だったか、普段ならそんな高価なお茶は飲まないが、「たまにはアルコールの混じっていない水分補給も悪くないな」と、マコトにつまらないことを考えた。

 (2月初旬、大徳寺大仙院の白梅が花を開き始めていた)

 

 ところが諸君、こういう思いつきが、珍しく素晴らしい経験につながることがあるのだ。大仙院内の小さな一室に入って抹茶を待っていると、出ていらっしゃったのは大仙院のご住職。世界的に超有名な塔頭のご住職と至近距離で対面する経験なんか、なかなか出来るものではない。

 

 抹茶を入れてくれたのも、このご住職。マコトに気さくに世間話を始め、大きな茶碗にポットから熱湯を注いで抹茶の出来あがり。茶道のメンドーな作法など一切ヌキで、ポットからジャーッとやってシャカシャカ、諸君、誤解してはいけない、むしろこういうお茶の方が、茶道の本筋にかなっているかもしれないのだ。

 

 今井君は、むかしからどうも仏教がニガテである。静岡大学総長を務めたワタクシの伯父は、彼の弟(つまり今井君の叔父)の葬式の席で「ボクは仏教を嫌悪しているんだ」と発言して物議を醸した困った御仁だったが、穏やかな性格の今井君は、もちろん「嫌悪」などという大胆不敵な仏敵なのではなくて、「ニガテ」というレベルにとどめている。

 

 それでも「仏敵」と判断されては、不動明王やら四天王やら十二神将の怒りが恐ろしいから、大慌てで弁解に勤めることにすると、何しろ今井君は18歳の夏から欠かさず人形浄瑠璃の舞台を観つづけている人間だ。仏教や神道の世界も十分に理解している。

 

 しかし、読書傾向もヨーロッパ寄り、好きな音楽も絵画も彫刻もヨーロッパ寄り、旅もほとんどがヨーロッパに中南米。「東洋」というマコトに奥深い世界が何となくニガテ、そりゃ仕方ないだろう。不動明王さまの背後にボーボー燃え盛る真っ赤なグレンの炎が怖くて堪らない。

      (大徳寺・芳春院の「老爺柿」 1)

 

 しかし諸君、イスラムでも仏教でもカトリックでもプロテスタントでも、「お坊さま」と言う存在はマコトに素直にありがたいものである。ローマ・サンピエトロ教会でローマ法王のお話を聞いた時も、クリスマスのパリ・ノートルダム大聖堂でパリ大司教のお話を聞いた時も、いやはや情けないほどカンタンに感激の涙が溢れ出てきた。

 

 その種の感激は、別にスーパー大寺院のお坊さまに限ったことではない。お坊さまのお話は、別にありがたいお説教じゃなくても、塔頭のご住職の世間話であっても、何だかいつの間にか心がゆったり落ち着くのである。

 

 大徳寺大仙院のご住職は、東芝だったか富士通だったか、確か大きな電気&通信機器メーカーの社員だった方。その後若くして一念発起、厳しい修行に修行を重ね、ここのご住職をなられた。今井君が身体が硬くてマトモに正座ができないのを見て撮ると、マコトに気さくに椅子をすすめてくださった。

 

 世間話というか雑談というか、ほとんど同世代の茶飲み話を10分ほどするうちに、ワタクシはポンポンの内部に溜まった水分廃棄の基本的欲求さえ忘れる始末。ついに東司も御不浄も利用せずに大仙院の外に出てしまった。残ったのは、庭園の清楚な美しさの記憶と、ご住職の温かい人柄についての思ひ出だけである。

      (大徳寺・芳春院の「老爺柿」 2)

 

 せっかくだから、塔頭をもう1つ訪ねていくことにした。だって大仙院、「写真撮影禁止」の貼り紙でいっぱいだったから、ご住職との世間話の温かい記憶を止めるヨスガが全くない。諸君、記憶を鮮烈にとどめるのには「ヨスガ」が不可欠。今井の強烈な記憶力には、常に何らかのヨスガが力を貸してくれる。

 

 訪ねたのは「芳春院」。塔頭とはいっても、数々の盆栽が展示された庭園を一回りするだけであるが、盆栽は「100年」「300年」「500年」など、腰を抜かすほどヨワイを重ねたものがズラリと並ぶ。

 

「コイツは享保の改革の頃から」「アイツは大阪夏の陣の頃から」と、その類いの感激を声に出しながら庭園を巡れば、やっぱり感激はヒトシオ。感動やら感激やらを噛みしめつつ、ついにここで「東司」のお世話になることになった。

 

 数々の盆栽の中でも「ローヤガキ」と名札のついた盆栽が気に入った。「老爺柿」と書いて、発音は「ロウヤガキ」。茶色に近い深紅の柿の実は、その1粒1粒がブドウの実の大きさ。すっかり傾いた春霞の夕陽を受けてキレイに輝いていた。

(大徳寺・芳春院にて。300年以上になる盆栽がたくさん展示されている)

 

 帰り道、と言っても宿泊していた京都宝ヶ池プリンスホテルへの帰り道であるが、春霞の夕暮れの中をぶらぶら散策することにした。北山を左に見ながら、地下鉄・鞍馬口駅まで、1時間近くの散歩は楽しかった。

 

 途中、大好きな出版社「淡交社」の本社を発見。「淡交」とは、荘子の名言「君子の交わりは、淡きこと水のごとし」から来ている。人との交際は、水のようにサラッとしているのがいい。ベタベタしつこく脂っぽくダラシなく付きまといあうのはイヤじゃないか。

 

 全国紙の第1面によく広告が掲載される雑誌「淡交」は、茶道裏千家がやっているこの出版社のもの。いやはや諸君、ワタクシはホントにベタベタ系の人づきあいがキライだから、今後もひたすら淡交を心がけていこうと思っている。

  (京都北山を散策中、「淡交」の出版社を発見する)

 

 さてこの日の夕食は、西洞院&三条の串揚げ屋で。個室が予約できたので、コロナ第6波の真っただ中でも安心して楽しい夕食を満喫できた。鞍馬口から地下鉄で南下、烏丸御池の駅で下車してお店に向かった。

 

 マコトに旨い串揚げの連続で、「コースで20本」という数字に最初はビクビクしていたが、20本を1時間もかからずにスカッと咀嚼&嚥下してしまった。いやはやホントに旨かった。

 

 それほど旨い店ならば、普段のワタクシは躊躇せずに店の名前を紹介するのであるが、しかし諸君、最後に何が起こるかは誰にも予測がつかない。モノゴトは最後の最後まで油断できないのだ。

 

 20本の串揚げを満喫した後、「最後に、胡麻団子か味噌汁か、どちらかを選択できます」と告げられ、すでに満腹していたワタクシは、迷わず味噌汁を選択した。こんなに旨い店の味噌汁、そりゃ期待値が高くて当たり前だ。

 

 しかし諸君、まもなく運ばれてきた味噌汁、どうも様子がおかしいのだ。表面に頼りなさそうに浮かんだネギが、みんな「ついさっきまでカラカラに乾燥してました♡」という約3mm角のシロモノ。どう見ても「あさげ」ないし「ゆうげ」にそっくりだ。

(大徳寺の近く、「大鏡」の冒頭で有名な「雲林院」を再び訪問する Sat 220212 予備校「副読本」の思ひ出/雪の金閣/雲林院で「大鏡」を思い出す 4166回

 

 というか、こりゃ意地でも「あさげ」そのものだ。千葉県松戸のボロ♡アパート「松和荘」で、大学学部4年間にわたって延々と「あさげ」をすすり続けた今井君が言うのだ。間違いない。今井自慢の長い長い「あさげ歴」にかけて、100%の自信で宣言しようじゃないか。これは何が何でも「あさげ」に間違いない。

 

 このシュールな味噌汁を前に、ワタクシはじっと考え込んだ。ホントに美味な串揚げ20本コースに免じて、お店の名前を思い切って紹介するか。それとも最後の最後に登場した「あさげ」事件を隠すために、お店の名前を伏せたままに終わらせるか。

 

 そしてワタクシは今日、迷わず後者を選択する。諸君、「九仞の功を一簣に虧く」を検索してくれたまえ。「きゅうじんのこうをいっきにかく」と発音する。どんなに地味な努力を営々と積み重ねても、最後の最後で手を抜けば、努力の全てが無駄になる。

 

 あんなにおいしい串揚げ20本。大学生女子のバイト店員さんも、頑張ってこの里芋オヤジの世話を優しく上手にこなしてくれた。しかしさすがに、ラストのラストに「あさげ」のヒラヒラ♡ネギ君が登場するようでは、むしろ「九仞の功を一簣に虧く」のモデルとして、ここに登場してもらうしかないのである。

 

1E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 3/18

2E(Cd) Haydon Trio EisenstadtJOSEPH HAYDNSCOTTISH SONGS 4/18

3E(Cd) George BensonLIVIN’ INSIDE YOUR LOVE

4E(Cd) George BensonLOVE REMEMBERS

7D(DMv) MAN ON FIRE

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