Wed 210616 辻褄合わせとでっちあげ/ナマか映像か18(ウィーン滞在記31)4074回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 210616 辻褄合わせとでっちあげ/ナマか映像か18(ウィーン滞在記31)4074回

 長々とシリーズ物を書いてきたが、要するにワタクシの主張は「論理的思考力もいいが、多面的な思索力を育てましょう」と言ふことである。四半世紀にわたって延々と超人気♡予備校講師を続けてきた人間が、こんなに頑張って主張するんだ、まあそんなにバカにしないでくれたまえ。

 

 気がつけば、すでにシリーズ18回目。新書版なら150ページに近い。写真に図表にグラフで容積を水増しすれば、カンタンに新書版一冊ぐらい出来あがる。くだらないダジャレさえなかったら、なかなか読み応えのある論考じゃないか。心ある諸君、ぜひ他の人たちにも勧めて、みんなで最初から通して読み返してくれたまえ。

(12月28日、新年が迫ったウィーンのお菓子屋にはたくさんのブタさんが並びはじめる。ピンクのブタは幸運を運んでくるらしい 1)

 

 一般に新聞や雑誌記事は、豊かな思索に含まれるブラウン運動的な部分を、無理に排除したがり過ぎるのだ。論理的思考と称する極太のベクトルは、実は思考でも何でもない。最初に作った結論を導くためにでっちあげた言い訳、または辻褄合わせに過ぎないことが少なくない。

 

 まず、何らかの主張か結論が存在する。そこでとりあえず、レポートや記事のタイトルを決定する。「タイトルを先に決める」という段階で、すでにそれは思考でも思索でもないのだが、本人は全く気づかない。出発点と結論を直線的に結ぶための辻褄合わせを論理的思考と勘違いする。

 

 そこで、誰かその問題で悩んでいる具体的な人物を設定、「直撃取材」を試みる。匿名でも実名でも、インタビューを巧みに編集して、記者の主張に少しでも近づくように切り貼りする。

(12月28日、新年が迫ったウィーンのお菓子屋にはたくさんのブタさんが並びはじめる。ピンクのブタは幸運を運んでくるらしい 2)

 

 続いて「この問題に詳しい専門家」のご意見を切り貼り。専門家の示すデータの説明と解説。ほぼ議論の方向性が定まったところで、「街の人」数名が登場。もちろん100人取材しても2人か3人に絞るんだから、ここでも激しい切り貼りがあって、採用されるのは当然、もともと存在した主張を後押しするものだけでいい。

 

 最後にスタジオに戻って、ひな壇芸人または「コメンテーター」が、強烈な同調圧力の中で発言。同調圧力に不安があれば、スタジオに招いた一般人の拍手とか笑いとか溜め息とか、そういうものを効果音として利用。ベクトルが100%結論に向いたところで、キャスターが笑顔でCM送りする。

 

 新聞雑誌の場合、ひな壇芸人の発言で同調圧力を高める代わりに、定番のコメンテーターの発言が並ぶ。「コメンテーター」は、その世界の有名人であってもいいし、大銀行や証券会社の中堅幹部であってもいい。「エクィティアナリスト」みたいにカタカナのステイタスがあればもっといい。

(12月28日、新年が迫ったウィーンのお菓子屋にはたくさんのブタさんが並びはじめる。ピンクのブタは幸運を運んでくるらしい 3)

 

 例えば、2021年に始まった「大学入学共通テスト」の記事を書くとする。「東大王」から「ドラゴン桜」、朝日毎日系週刊誌が1年中飽きずにやっている「東大合格者ランキング」まで、世の中は「東大はエラい」ということに1mmの疑いも持っていないから、一番いいのは東大現役合格者のインタビューで始めることである。

 

 すると彼または彼女は、まず例外なく「塾には頼らず、自分で論理的思考力を磨きました」と発言する。「塾には頼らず」というのが朝日毎日系の定番、または望ましい受験生の枕コトバなので、この一言は絶対に外さない。というか、塾に頼った人のインタビューは容赦なく切り貼り、または「なかったこと」にされる。

 

 東大だけだと、まあそれなりに批判も考えられるから、北大か名大か阪大か九州大の合格者のインタビューも切り貼りして、とりあえず都合のいい「合格者の声」を3つ4つ並べ、「塾には行くな」という結論への極太ベクトルを製作する。

 

「塾に頼らず」「自分なりの方法で」「暗記とか知識ではなく、自分で論理的に思考しました」「受験テクニックは通じません」など、記事を書いている人物本人の主張が、東大生や難関大合格者の大半の経験と一致するかのように印象を操作される。

 

 ここから、いろんなスピンオフも期待できる。「東大生の思考法」「ノート術」「東大に合格させた親の習慣」「東大合格生のノートは必ず美しい」「天声人語を毎日無反省に書き写してました」その他、要するに筆者本人の主張がサポートされれば、それでいいのである。

(12月28日、新年が迫ったウィーンのお菓子屋にはたくさんのブタさんが並びはじめる。ピンクのブタは幸運を運んでくるらしい 4)

 

 そこへ、当然のように「専門家の意見」が登場。この段階での専門家は、まあ教育評論家として名のある人がいいだろう。有名大学の教授であればいうことはないので、関西に気を使えば京大か阪大のセンセ、私大系に気をつかうなら早大教授、早稲田嫌いに気を使うなら慶応教授が狙い目だろう。

 

 その辺はよりどりみどりというか、知り合いのセンセに電話取材を申し込めばいいし、「明後日の16時までにコメントをいただければ幸いです」「謝礼はでご勘弁ください」ぐらいで、教育再生会議のメンバーぐらいからホイホイ返事がかえってくる。

 

 新聞雑誌の記事ならここで終わってもいいし、これ以上頑張って書き続けても、どうせ筆者の上司が切り貼りしてしまう。何しろ「限られた紙面」であり、週刊誌の教育関連は、激しいスキャンダル記事でもせいぜい見開き2ページなんだから、テレビの場合の「ひな壇芸人」のシーンは、まあ割愛で済まされる。

(12月28日、新年が迫ったウィーンのお菓子屋にはたくさんのブタさんが並びはじめる。ピンクのブタは幸運を運んでくるらしい 5)

 

 それでも紙面が余れば、「銀行&証券のエクィティアナリスト」系がここで登場する。「有名予備校の担当者に取材すると」というパラグラフがそれである。この辺まで来ると、筆者の熱意もエネルギーも磨耗してしまい、電話取材も「手軽な相手で済ませちゃえ」感が強くなる。

 

 だからこの場面、どの新聞にも雑誌にも、ほぼ同一人物が繰り返して登場する。諸君はあまり気にしていないだろうが、ここで登場する人物は、かつての3大予備校の広報担当、部長クラスの「準♡幹部」ばかりである。

 

 朝日新聞だと、最初に必ず河合塾の教育文化研究所のオカタの意見が登場。その後その意見を補完するように、S台の石原さん、Yゼミの坂口さん、「大学通信」の安田賢治さんの名前が続く。古い予備校の広報責任者なんだから、大新聞の取材ならもちろん断ることはない。新聞社側の都合のいいように切り貼りされても、別に抗議することだってない。

 

 疲れてしまった記者たちは、もうそれ以上広く意見を求めることはしない。今井君を始め「そうではない」という反対意見なんか、積極的に聞いて回るエネルギーは残っていないし、万が一それを採用しても、どうせ上司に切られてしまう。

   (お花屋さんにもたくさんのブタが並んだ)

 

 例えば2020年1月、某テレビ局のインタビューに対して述べた今井君の意見は、完全に無視。事前に用意されたテレビ局側の原稿を読み上げる部分以外、全く放送されなかった。

 

 今井君は「どうせ『センター試験』から『共通テスト』に、名前が変わるだけ」「中身なんか大して変わりませんよ」「記述式なんて、絵に描いたモチみたいなものですよ」とニヤッと笑い、この世界の大ベテランの意見を10分も述べてみせたのだが、100%「なかったこと」にされた。

 

 その時の状況は、詳しくは「Mon 200113 今日も力作/ラストのセンターが迫る/上級A組、ますます順調  3903回」を参照。誰か当時を知る人が、ワタクシ自身より先に早速この記事を見つけてくれた。

 

 もっとひどい経験もある。もう20年以上も昔の1月末、某テレビ局がS予備学校・福岡校の入試壮行会を取材に来た。

 

 ちょうど福岡出張中だった若手超人気講師♡今井君は、超満員の受験生諸君を前に

「時間との勝負だ、などと焦ってはいかんよ」

「問題用紙が渡されたらスカして見てみろ、などというバカなアドバイスにしたがってはいかんよ」

と力説し、大喝采を受けた。

 

 ところが実際に放送されたのは「時間との勝負だ」「スカして見てみろ」まで。「なんてのはいかんよ」は切りとられて、アトカタもなし。その映像を引き継いだレポーターが「...と熱いエールを送っていました」ということになっちゃった。

 

 最後に男女2名のキャスターが顔を見合わせて、「ああいう熱いパワーの溢れる先生に、我々も教わりたかったですねえ♡」と、笑顔で頷きあったのである。いやはや、いやはや、こういうのは、ホントに困ったものなのだ。

 

1E(Cd) VellardDUFAYMISSA ECCE ANCILLA DOMINI

2E(Cd) OortmerssenHISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM

3E(Cd) Patricia BarberNIGHTCLUB

4E(Cd) Yohichi MurataSOLID BRASS 

7D(DMv) PATTON

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