Mon 210524 マッジョーレ追憶/ナマか映像か3/ナマのストレス/採点ストレス 4058回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 210524 マッジョーレ追憶/ナマか映像か3/ナマのストレス/採点ストレス 4058回

 冒頭、シリーズ「ナマか映像か」とは完全に無関係であるが、昨日発生したイタリア・マッジョーレ湖でのロープウェイ事故について言及しておきたい。湖畔の町ストレーザとモッタローネ山頂を結ぶ絶景のロープウェイのゴンドラが落下、14人もの人が亡くなった。ご冥福をお祈りする。

 

 このロープウェイについては、今井ブログの中でも何回も言及している。世界で一番好きなロープウェイであって、この20年で2回もマッジョーレ湖を訪れたのは、モッタローネ山頂からの絶景を眺めたい一心だったからだ。

 

 今井の長い外国旅行歴の中で、この山と湖の眺めが最も記憶に深く残るものであることは間違いない。今日の記事の写真として7枚、マッジョーレ湖の絶景を掲載することにしたい。湖と山の詳細は、以下の記事で。

 

Mon 080929 ポール・ニューマン死去 マッジョーレ紀行9

 

Sun 180513 ミラノ駅の混乱/10年ぶりのマッジョーレ湖(イタリアすみずみ12)M22

 

(2007年9月、マッジョーレ湖。こんな絶景の中で悲劇が起こった 1)

 

(スミマセン、ずっと「前回の続き」が続きます)、こういうふうで大教室でのナマ授業は、経験した人でなければ分からないストレスがいっぱいなのだ。最前列で居眠りする生徒もいれば、しょっちゅうトイレで出入りする生徒もいる。

 

 しじゅうスマホをいじっている子やら、大昔ならDSとかゲームボーイ、もっと昔は文庫本をペラペラ、そういうのにも遭遇した。50分でも90分でも何が何でも無表情に徹する生徒、「雑談だな」と判断するやいなや、別の参考書を取り出して自習を始める生徒もいる。ホントに最前列で、平気でそういうことをするのである。

 

 すると当然センセの側も不機嫌が募る。他のセンセがやっつけ仕事で作った出来の悪いテキストが目の前にあり、だから生徒だって当然つまらない。相手がつまらなそうなら、講師もつまらない。

 

 ボーシをかぶったままの生徒、やる気のなさそうな顔をウチワであおいでばかりの生徒、ガムを噛んでるヤツ、ずっと私語を続けている男子2名。「つまらない」と感じた瞬間から、教壇の上の講師はその種の生徒ばかりが目につき始める。

(2007年9月、マッジョーレ湖。こんな絶景の中で悲劇が起こった 2)

 

 その時、「ここで腹を立てれば増田師(仮名)みたいになる」と自分に言い聞かせるのだが、1990年代の若き今井君とか、朝の講師室で「ナマ!!」と叫んだヤンチャなセンセ(前々回の記事参照)なんかは、何しろギュッと熱しやすいから、「ダメなものはダメ♨」という厳しい態度に出る。

 

 もちろん、ググッと冷静な態度で、知らんぷりを続けることのできるセンセも多い。「そういう時、どうします?」と講師仲間で話が盛り上がることがあるのだが、今井君なんかが「ビシッと叱ります」と発言すると、「ええっ、叱っちゃうんですか?」「生徒が減っちゃいませんか?」と驚きの声が上がるのである。

(2007年9月、マッジョーレ湖。こんな絶景の中で悲劇が起こった 3)

 

「小教室でビシビシ」なら、ナマ授業はさぞかし楽しいのである。大学の授業だって、「対面授業じゃなきゃ♡」という時にイメージされているのは、ゼミ室で10名、研究室で5名、実験室で3名という世界であって、匿名性に守られた200名や300名が相手のナマ授業では、講師サイドのストレスもはかりしれない。

 

 1990年代の前半から中盤にかけて、若き今井君はそういう大っきなストレスを抱えながら、「いつか映像授業に出たい」と念じ続けた。あのころの駿台での担当授業は、50分授業で週40コマ。御茶ノ水・池袋・柏・大宮に福岡出張も含め、1日平均7コマを、そんなストレスの中でこなし続けた。

 

 そういう状況だったからこそ、同僚:大井師(仮名)との飲み会は毎週深夜まで熱く盛り上がったのである(スミマセン、これも前々回参照)。ストレスたっぷりの大教室。あんな狭苦しい空間に閉じ込められ、硬い椅子、狭い机、生徒諸君だってツラかっただろうが、講師の心も折れかけて不思議はない。

(2007年9月、マッジョーレ湖。モッタローネ山頂に向かうロープウェイ)

 

 駿台で「専任」という立場を受け入れれば、そりゃ生活は保障されるからストレスも小さくなるが、専任講師は模試制作やテキスト作成に加えて「採点」などという業務もこなさなければならない。

 

 当時の駿台模試は、「神」と崇められた伊藤和夫師による極めて厳密な採点基準があって、答案の訳文1つ1つを正確に採点するのは、普段の授業の数十倍とも思える集中力と忍耐力を要求された。

 

 そもそも世の中の人々は、「採点」という仕事をカンタンに考えすぎているのである。単なる「丸つけ」程度、小学校や中学校の教室なら「隣どうし答案を交換して丸つけしなさい」で済むかのように思っていらっしゃる。受験がテーマのテレビドラマの中であっても、採点とはそのような扱いだ。

   (2018年5月、再びモッタローネ山頂を訪れた)

 

 しかし諸君、難関国立大対象の模擬試験なんかになると、「について600字で論述しなさい」が主流。京大レベルの英文和訳や英作文、東大理系の数学なんかになれば、驚くべき知的な答案が頻繁に登場する。

 

 微積分の問題として出題した問題を、初等幾何で見事に解いてきた答案をどう採点するか。あるいは600字の論述100枚を「明後日までに採点してください」と言われた時、1枚に20分かけたとして1時間たった3枚、単純計算で30時間かかかる。徹夜しても追いつかない。

 

「答案たった1枚に20分もかけるんですか?」とおっしゃるかもしれないが、論述600字ともなれば、単に読むだけだって一苦労だ。受験生が心を込めて懸命に作成した答案、しかもほとんどの問題が自分の専門外なのだ。

 

 微に入り細を穿った採点基準があって、「があれば2点プラス」「がなければ1点マイナス」「という訳文は読解上の重大な誤解であるから5点マイナス」、それを全て頭に叩き込んで採点に取り組めば、1枚20分ぐらい、あっという間に過ぎる。

(2018年5月、モッタローネ山頂から、山の反対側の「オルタ湖」を望む。この直後に激しい雷雨に襲われた) 

 

 ワタクシは、入試本番の採点にあたる大学教員の皆さまのご苦労を思うと、頭が下がる思いがする。新聞社のカタガタは「本当の論理的思考力を試す」などと言ってそういう問題作成をあおり、また絶賛するけれども、「600字論述」を100枚も預けられた瞬間、ご自分の専門研究はおそらく10日も2週間も後回しになっちゃう。

 

 思わず、ドクター在籍中の弟子ならともかく、マスターコースの院生なんかに声をかけて、「ちょっと手伝ってくれないか?」と口走りたくもなるだろう。だって、教授だってその論述問題、やっぱり専門外。受験生たちが人生をかけて書いた答案に、「1枚20分」でも本来は足りないのだ。

(2007年9月、湖畔「ヴィラ・アミンタ」からのマッジョーレ湖。対岸はスイス。ヘミングウェイ「武器よさらば」の舞台にもなった)

 

 こういうふうだから、賢い受験生の方でも「どういう答案が求められているか」を考えるようになる。予備校の講師だって、やっぱり「どう書けば評価が高いか」を教えなきゃいけない。司法試験の論述問題ですら「論点ノート」「論点カード」の類いを予備校サイドで制作するのが常識だ。

 

 ごく初歩的には「読みやすいキレイな字で書きなさい」なのであるが、「積分で解いてほしい問題を、初等幾何で鮮やかに解いて悦に入るのは愚の骨頂」なんてのも入ってくる。どんなに素晴らしい発想でも、どんなに個性的な論述でも、採点者の負担になるようなものを提出すれば、大きな損失を被ることになりかねない。

 

 しかし難関国立大ともなれば、受験者の中には「数学オリンピックで金メダル」「物理オリンピックと化学オリンピックで両方とも銀メダル」なんてのがゴロゴロ存在する。英作文だって、ネイティブ教員がびっくりするような鮮やかな解答が頻出する。

 

 入試や模試の採点がどんなに難しい仕事か、分かってもらいたい。「新・共通テスト」の「記述式」が頓挫したのも、採点者の苦労を理解せず、「サクサク稼げるカンタンな仕事です」などという文言でアルバイト採点者を募集した、某BNS社などの無思慮と無理解が原因なのだ。

 

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