Sun 190331 平成31年3月31日/千鳥ヶ淵のお花見を満喫/明日は入社式 3820回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 190331 平成31年3月31日/千鳥ヶ淵のお花見を満喫/明日は入社式 3820回

 敬称は全て略させていただくが、新元号の発表直前に、あまりに多くの昭和の著名人が亡くなっていく。萩原健一、織本順吉、双羽黒、白石冬美。1980年代、ワタクシが何をやってもうまくいかず、千葉県の松戸の奥であえいでいた時代に、慰めとなってくれた人々ばかりである。

 

 織本順吉は、クセのある名脇役として昭和を彩った。戦国時代ものでも江戸の捕物帳でも、織本順吉さえ登場すれば、謀反の誘惑に悩む中堅の部将、役人への贈賄を長年積み重ねるあくどい番頭、そういう二重三重に折りたたまれた切ない中間管理職の心理をマコトに見事に描き出してくれた。

 

 元横綱・双羽黒については、誰だって「双羽黒」としてより「北尾」としての思い出が強烈なはず。身長2メートル近い体躯は、道を踏み外しさえしなければ無敵の大横綱に成長する可能性を秘めていた。

 

 しかし今や相撲界は、優勝40回を超える史上最強の大横綱でさえ、「万歳三唱をした」「三本締めをした」と言ってはマスコミやら何やらにビシバシ、「品格がない」と情け容赦なく叩かれなきゃいけない世界になっちゃった。北尾であれ双羽黒であれ、早々に廃業したのは間違いではなかったかもしれない。

 (2019年3月30日、ドンピシャで満開の千鳥ヶ淵の桜 1)

 

 1980年代の後半、若き今井君はバイト気分で勤めていた中堅の塾で呻吟していた。いきなり「校舎長」に出世したのはいいが、校舎長とは名ばかり、完全ワンオペ職員だった。

 

 そのワンオペぶりたるや、1231日は「除夜の鐘特訓」で「ゆく年くる年」が終わる時間帯まで塾に張りついて1人で授業、そのまま埼玉県の校舎内で宿泊して、1月1日は朝9時から小6と中3の「正月模試」を1人で管理、答案用紙の束を東京の本部まで持参して、帰宅は夜10時を過ぎた。

 

 まさにその時期に大活躍していたのが北尾、後の横綱・双羽黒である。1985年1月に大関に昇進。5月の夏場所では後の大関・小錦に「サバ折り」の荒技で重傷を負わせる。

 

 その夏場所で12勝3敗。次の名古屋場所で14勝1敗。ともに優勝は千代の富士にさらわれたが、2場所連続で準優勝の実績を認められて横綱に昇進した。優勝ナシでの昇進に、マスコミからそれなりの文句がつけられたのは言うまでもない。

 (2019年3月30日、ドンピシャで満開の千鳥ヶ淵の桜 2)

 

 当時の横綱審議委員には、ドイツ文学者の高橋義孝がいた。トーマス・マン「ある詐欺師の告白」の翻訳でも有名。トーマス・マンの一人称を「おれ」にしたことについて、ワタクシ今井は大失策ないし英語で言うfiascoだと信じるが、ま、横綱審議委員になるのにはその種のfiascoは無関係なのである。

 

 ついでにこのオカタ、内田百間の弟子でもある。百間の溺愛する野良猫「ノラ」が失踪した時、余りに悲しみが極端で「身体を壊しはしないか」と周囲の人々が真剣に心配している真っ最中に、高橋どんは泥酔して百間に電話をかけ「今頃は三味線の胴と化してますよ」と発言したことでも有名だ。 

 

 横綱審議委員などになって、横綱の品格がどうのこうのと言っている人々というのは、要するにこの種の人物が少なくないのである。トーマス・マンほどの作家が、「作家=詐欺師」と自己告発している小説なのに、その1人称を「おれ」としたのだって、「だって詐欺師でしょ?」というレベルの発想なんじゃないのか。

 (2019年3月30日、ドンピシャで満開の千鳥ヶ淵の桜 3)

 

 なお、「北尾」から「双羽黒」になった横綱昇進後は、うーん、精神的にさぞかし厳しい日々が続いたのである。食中毒、虫垂炎、靭帯損傷、肝臓疾患、頚椎捻挫。たった1年ちょいのうちに、ありとあらゆるケガと病気に苛まれ、しかも弟弟子たちの作るチャンコが口に合わなかった。

 

 口に合わないチャンコが理由の前代未聞の脱走事件が発生したのは、1987年の12月。横綱昇進から1年半しか経過していなかった。優勝はゼロ。名誉ある「引退」ではなく、悪意たっぷりのマスコミ報道の中、マコトに不名誉な「廃業」という結果になった。

 

 ワタクシが河合塾の講師になったのは、双羽黒廃業の4年後のことである。肉体的な不摂生と、身近な人間関係の破綻について、当時の今井君の状況は双羽黒に「勝るとも劣らない」ないし「劣るとも勝らない」という体たらく。彼の存在に慰められることが少なくなかった。

 

 ただしその後の双羽黒については、残念なことにまったく関心がなかった。さすがの今井君だって、そこまでエキセントリックな生き様を見せつけられては、「オレはそこまで激しくはなれないや」と、ほんの少し模範生的な方向へとカジを切り、いささか行動基準を修正したのである。

 (2019年3月30日、ドンピシャで満開の千鳥ヶ淵の桜 4)

 

 さて、白石冬美であるが、これまたワタクシの最も辛い時代を支えてくれたオカタなのである。TBSラジオ伝説の深夜放送「パック・イン・ミュージック」については、すでに読者諸君もパパやママ、ないしはジーチャンやバーチャンの昔語りを聞いたことだろうと思う。

 

 放送されたのは、1967年7月から1982年7月。15年にわたる長い歴史の中で、若き今井君が午前1時から3時まで放送に夢中になっていたのは、1977年から1982年の最終回に至るまでの6年間である。

 

 当時のラジオ深夜放送は、オールナイトニッポンの一人勝ちになりかけていた時代。何しろある夜はタモリが2時間、次の夜はビートたけしが2時間。松山千春が2時間かと思えば中島みゆきが2時間。よしだたくろうなんてのもあれば、所ジョージが2時間の日もあった。

 

 何しろ明石家さんまが第2部の午前3時から午前5時台を担当していた時代もある。これでニッポン放送が一人勝ちにならないはずはないのだが、そこに割って入ったのが、TBSの野沢那智&白石冬美だった。

 

 リスナーからのハガキをひたすら読み上げるだけの声優2名。しかし諸君、ぜびパパやママ、ジーチャンやバーチャンの思ひ出話を聞いてみたまえ。少なくとも「いだてん」で苦戦中の北野武どんより数段上のパフォーマンスが、あの頃は1週間に一度の深夜の時間帯に聞けていたと確信する。

  (2019年3月30日、満開の千鳥ヶ淵の桜と菜の花)

 

 ま、そういうわけで寂しいことこの上ないが、2019年3月30日の今井君は「平成最後のお花見」と張り切って、午前11時の地下鉄千代田線に乗り込んだ。

 

 お花見は本来、悲しいからこそするのであって、「明日で卒業だ」「明日から新入社員だ」「明日からは自由がちっともなくなるのだ」「今日で1つの時代が終わる」「明日からは新しい時代に慣れていかなきゃいけない」、そういうツラい思いとともに、ひとひら&ひとひら悲しく散っていく花びらを見つめるのである。

 

 満開の桜を見る前に、悲哀でいっぱいのサトイモ君は、まず胃袋を満タンにしていくことに決めた。前日に予約したお店は赤坂・一ツ木通り「ルナ・ロッサ」。一ツ木通りの名店をいくつも通り過ぎた先にある、目立たない地味なイタリアンである。

 

 あんまり寂しいから、個室を予約した。パスタをすすりながら、織本順吉や双羽黒や白石冬美の思ひ出が込み上げて、思わず熱い涙でも流れ出したらたいへんだ。ここは個室にギュッと隠れている方が無難である。

(赤坂「ルナ・ロッサ」で久しぶりのアマローネを満喫する)

 

 草を食べない肉食のワタクシとしてはマコトに珍しく、新鮮なサラダの歯ざわりを楽しんでいるうちに、ワインリストの一番下に「アマローネ」の文字を発見。おお、昨年5月&9月のイタリアで、合計20本を飲み干した濃厚&濃密な赤ワインと赤坂で遭遇することになった。

 

 いやもちろん、こんなに赤ワインにうるさい東京のど真ん中に生活しているのだ。イタリアから帰国した後の東京でも、何度かアマローネと遭遇したことはある。しかしどれもこれもイタリアで味わうホンモノのアマローネとは味が微妙に違っていたのである。

 

 しかし諸君、「福島市の出身です」とおっしゃるたいへん気さくなマダムが「ワインセラーの奥の奥から掘り出してきました」と呵々大笑したアマローネは、昨年5月にコモ湖のベラッジョで味わった時にすっかり魅せられてしまったアマローネと同じ銘柄。いやはや真昼にボトル1本を痛飲して、完全にお花見の気分が整った。

(満開は老木も同じだ。渋谷区指定の老いたる桜ジーサンは、今年も見事な花を咲かせてくれた)

 

 こうして千鳥ヶ淵の今井君は、9分咲きないし満開のドンピシャを味わうことになった。昨年の千鳥ヶ淵は、3分咲きから4分咲きのフライイングだったし、わざわざヒコーキに乗って出かけた奈良の吉野の一目千本は「とっくにみんな散っちゃいました」という残念な展開。そのリベンジを、今年は着々と果たしつつあるようだ。

 

 さて諸君、年度末の季節外れ寒波で「明日は雪になるかもしれない」という状況の中、我々はひたすら新しい元号の発表を待つのである。思えば30年前、昭和64年のワタクシは、内面も外面もマコトにミジメなありさまで「平成元年」の発表を見届けた。今の読者諸君はいかがだろうか。

 

 4〜5年前まで今井君の授業を受けていて、ついに明日が入社式という読者も少なくないだろう。中には社会に出る直前、何故か訳のわからない熱い涙にくれている人も多いはずだ。

 

 そういう諸君は、Thu 130307 入社式直前の1日をどう過ごしたか とりあえずワイシャツ5枚買いに行くを読んでくれたまえ。今井が経験した入社式前夜の悲嘆&悲哀の物語は、間違いなくそういう諸君の支えになるはずだ。ニャゴロワの大アクビ、ナデシコがお顔を洗う可愛らしいしぐさとともに、十分な慰めになるだろう。

 

1E(Cd) Luther VandrossLUTHER VANDROSS

2E(Cd) David SanbornINSIDE

3E(Cd) David SanbornTIME AGAIN

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5E(Cd) David SanbornHIDEAWAY

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