Thu 130307 入社式直前の1日をどう過ごしたか とりあえずワイシャツ5枚買いに行く
冷たい雨の中、日本中が年度末を迎える。明日はマコトにおめでたい年度はじめであって、あんなに苦労して合格した大学の入学式もまもなくだし、あれほど泣く思いをして内定を勝ち取った企業の入社式は、おそらく絶対に明日なのである。
諸君、サトイモどんは「明日が入社式」という数百年前の3月31日を決して思い出したくない。「明日が入社式」ということは、当時の今井君にとってみれば
「明日からは一切の自由が消滅する」
「1日24時間会社に拘束される」
「新入社員なんか土日も祝日もない。事実上ほぼ365日、出社を強要されるも同然だ」
など、ほぼ「明日から監獄行き」の感覚であった。監獄ならば刑期が終われば出獄が許される。
(地球を吸い込みそうな、ニャゴの大アクビ)
しかし入社ということになれば、退職しないかぎり連日連夜同じ場所に出かけ、連日連夜同じ顔の上司や先輩にペコペコし続けなければならない。それを怠れば、たちまち「人生の敗者」ということになって、「あいつはダメなヤツ」としてリングの外にポイッと投げ捨てられて終わりだ。
連日連夜同じ電車で出勤。同じルートを通り、下手をすれば隣で吊り革を握っているヒトの顔だって同じ。昼飯はこれから40年近くにわたって同じ社員食堂。窓からの風景も同じ、呼吸する空気も、鳴り響く電話のベルの音も、これから40年変わることはない。
(ナデシコがお顔を洗う 1)
当時のサトイモ君としては
「そんな人生を生きても、何にもならないじゃないか」
「そんなんじゃ監獄に等しい。うんにゃ監獄以下だろう」
「もはや地獄と択ぶところがないじゃないか」
という思いだった。
ここまでの22年間が無類に楽しかったというわけではないが、少なくとも
「キライなヤツとは付き合わずにいられる権利」
「イヤな電話は受話器をたたきつけるように切ってしまう権利」
「誰に向かってでも『タバコはキライです、私の近くで吸わないでください』と発言する権利」
は確保してきた。明日からは、そのレベルの権利も奪われ、40年近い長い忍耐を要求されるのだ。
(ナデシコがお顔を洗う 2)
「そんなこと言うなら、何のために就職活動なんかしたの?」であるが、うーん、あれからすでに数百年の時間が経過したから、シューカツ当時の今井君の心情をここに正確に描写することは出来ない。
そもそも、卒業年度の10月1日にようやく重たい腰をあげて5~6社の超一流企業を訪ねてみる気になったのは、単なる見栄のせいである。
早いヤツは5月の連休までに内定を獲得、チョイと遅くても夏休みに入る前には「内定とれたよ」とホッと胸を撫でおろしていた時代である。「10月1日にスタート」などというのは、シューカツにマジメに取り組む気がそもそも皆無だった証拠である。
そういうヤツが、どういう因果か超一流人気企業なんかに内定をもらって「明日は入社式」の3月31日をどう過ごしていたかと言えば、冷たい雨の降っていたあの朝、若きサトイモ君は何と「あれれ、あした着ていくワイシャツがないや」と気づいたのである。
確かに、スーツは1着もっていたが、ワイシャツなんか、衿のホツれたのや袖のチギれたのが3~4枚ある程度。チャンとした会社員が着るようなチャンとしたワイシャツは1枚もない。驚くなかれ、3月31日の段階でもっていたネクタイも、シューカツを始める前日に早稲田大学生協で購入した1500円のが1本あるだけであった。
(続いて「2日酔いスッキリうこん緑茶割」をグビグビ)
ワイシャツがなければ、通勤も出社もできない。毎日同じワイシャツというわけにもいかないから、今日のうちに1週間分ぐらい買っておかないと、入社式から1週間も経過せずに「着ていくものがない」というたいへんな事態に立ち至ることになる
3月末の冷たい雨の中、カサをさして北松戸のアパート「松和荘」を出たのが午後2時。当時は松戸駅東口駅前に大きなイトーヨーカドーがあって、とりあえず若きクマ蔵が目指したのはその紳士服売り場である。
何の工夫もオシャレもない真っ白いワイシャツを5枚購入した後、「そういえば通勤に使うカバンがない」と気づいて、これまた何の工夫もオシャレもない、マコトにツマラン安物のバッグも1つ購入。ワイシャツは、確か1枚1500円だったと記憶する。
スーツだって、まさか1着で済ますわけにはいかないし、ネクタイ1本で超人気一流企業での勤務が続けられるはずもない。しかし寂しさと悲しさでいっぱいの3月31日の今井君としては、「別にそれでかまわない」「何とかなるだろう」と考えるのが精一杯であった。
あのころは、「いったん入社したら勤務は40年続く」という現実に気づいていなかったのだ。明日にでもヤメられる、来週にでもヤメられる。せいぜい続くとしても2~3年のこと、すぐにこの境遇から脱出できる。
サトイモ君の頭の中は「ヤメる」「脱出する」という発想ばかりで出来ていたので、ワイシャツは5枚でOK、スーツにネクタイは1つずつでOK。今考えればマコトにアホもいいところだが、そういう3月31日であった。
(以上、マコトに地味な渋谷区幡ヶ谷の飲み屋でござった)
2013年3月31日、以上のような記憶をたどりながら「ホントにアホだったな」「ホントにバカだったな」とニヤニヤ苦笑しながら過ごした。ニャゴは世界を吸い込むような大アクビで呆れ、回復著しいナデシコも気持ちよさそうにお顔を洗いながら、バカだった数百年前の今井君の思い出話を聞いて、白くて長いオヒゲを不思議そうに震わせるのだった。
1E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
2E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM②
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM②
5E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
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諸君、サトイモどんは「明日が入社式」という数百年前の3月31日を決して思い出したくない。「明日が入社式」ということは、当時の今井君にとってみれば
「明日からは一切の自由が消滅する」
「1日24時間会社に拘束される」
「新入社員なんか土日も祝日もない。事実上ほぼ365日、出社を強要されるも同然だ」
など、ほぼ「明日から監獄行き」の感覚であった。監獄ならば刑期が終われば出獄が許される。
(地球を吸い込みそうな、ニャゴの大アクビ)
しかし入社ということになれば、退職しないかぎり連日連夜同じ場所に出かけ、連日連夜同じ顔の上司や先輩にペコペコし続けなければならない。それを怠れば、たちまち「人生の敗者」ということになって、「あいつはダメなヤツ」としてリングの外にポイッと投げ捨てられて終わりだ。
連日連夜同じ電車で出勤。同じルートを通り、下手をすれば隣で吊り革を握っているヒトの顔だって同じ。昼飯はこれから40年近くにわたって同じ社員食堂。窓からの風景も同じ、呼吸する空気も、鳴り響く電話のベルの音も、これから40年変わることはない。
(ナデシコがお顔を洗う 1)
当時のサトイモ君としては
「そんな人生を生きても、何にもならないじゃないか」
「そんなんじゃ監獄に等しい。うんにゃ監獄以下だろう」
「もはや地獄と択ぶところがないじゃないか」
という思いだった。
ここまでの22年間が無類に楽しかったというわけではないが、少なくとも
「キライなヤツとは付き合わずにいられる権利」
「イヤな電話は受話器をたたきつけるように切ってしまう権利」
「誰に向かってでも『タバコはキライです、私の近くで吸わないでください』と発言する権利」
は確保してきた。明日からは、そのレベルの権利も奪われ、40年近い長い忍耐を要求されるのだ。
(ナデシコがお顔を洗う 2)
「そんなこと言うなら、何のために就職活動なんかしたの?」であるが、うーん、あれからすでに数百年の時間が経過したから、シューカツ当時の今井君の心情をここに正確に描写することは出来ない。
そもそも、卒業年度の10月1日にようやく重たい腰をあげて5~6社の超一流企業を訪ねてみる気になったのは、単なる見栄のせいである。
早いヤツは5月の連休までに内定を獲得、チョイと遅くても夏休みに入る前には「内定とれたよ」とホッと胸を撫でおろしていた時代である。「10月1日にスタート」などというのは、シューカツにマジメに取り組む気がそもそも皆無だった証拠である。
(このところ、健康のために強い酒は我慢している。安い飲み屋でも「カテキンたっぷり 緑茶割」から入る)
そういうヤツが、どういう因果か超一流人気企業なんかに内定をもらって「明日は入社式」の3月31日をどう過ごしていたかと言えば、冷たい雨の降っていたあの朝、若きサトイモ君は何と「あれれ、あした着ていくワイシャツがないや」と気づいたのである。
確かに、スーツは1着もっていたが、ワイシャツなんか、衿のホツれたのや袖のチギれたのが3~4枚ある程度。チャンとした会社員が着るようなチャンとしたワイシャツは1枚もない。驚くなかれ、3月31日の段階でもっていたネクタイも、シューカツを始める前日に早稲田大学生協で購入した1500円のが1本あるだけであった。
(続いて「2日酔いスッキリうこん緑茶割」をグビグビ)
ワイシャツがなければ、通勤も出社もできない。毎日同じワイシャツというわけにもいかないから、今日のうちに1週間分ぐらい買っておかないと、入社式から1週間も経過せずに「着ていくものがない」というたいへんな事態に立ち至ることになる
3月末の冷たい雨の中、カサをさして北松戸のアパート「松和荘」を出たのが午後2時。当時は松戸駅東口駅前に大きなイトーヨーカドーがあって、とりあえず若きクマ蔵が目指したのはその紳士服売り場である。
何の工夫もオシャレもない真っ白いワイシャツを5枚購入した後、「そういえば通勤に使うカバンがない」と気づいて、これまた何の工夫もオシャレもない、マコトにツマラン安物のバッグも1つ購入。ワイシャツは、確か1枚1500円だったと記憶する。
(続いて「ビタミンCタップリ 柿の葉緑茶割」。いやはや、写真ではほとんど区別がつきませんね)
スーツだって、まさか1着で済ますわけにはいかないし、ネクタイ1本で超人気一流企業での勤務が続けられるはずもない。しかし寂しさと悲しさでいっぱいの3月31日の今井君としては、「別にそれでかまわない」「何とかなるだろう」と考えるのが精一杯であった。
あのころは、「いったん入社したら勤務は40年続く」という現実に気づいていなかったのだ。明日にでもヤメられる、来週にでもヤメられる。せいぜい続くとしても2~3年のこと、すぐにこの境遇から脱出できる。
サトイモ君の頭の中は「ヤメる」「脱出する」という発想ばかりで出来ていたので、ワイシャツは5枚でOK、スーツにネクタイは1つずつでOK。今考えればマコトにアホもいいところだが、そういう3月31日であった。
(以上、マコトに地味な渋谷区幡ヶ谷の飲み屋でござった)
2013年3月31日、以上のような記憶をたどりながら「ホントにアホだったな」「ホントにバカだったな」とニヤニヤ苦笑しながら過ごした。ニャゴは世界を吸い込むような大アクビで呆れ、回復著しいナデシコも気持ちよさそうにお顔を洗いながら、バカだった数百年前の今井君の思い出話を聞いて、白くて長いオヒゲを不思議そうに震わせるのだった。
1E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
2E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM②
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM②
5E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM①
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