Tue 180424  ミサンガ売りとサクラ/柴犬流行中/墓地を散策(フランスすみずみ32) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 180424  ミサンガ売りとサクラ/柴犬流行中/墓地を散策(フランスすみずみ32)

 外国を旅していれば、言葉だって日常とは違うんだから、そりゃ不安感はギュッと高まるに決まっている。モロッコにキューバ、アルゼンチンにブラジル、それなりにハードルの高いところを回るようになってからも、パリのど真ん中で「治安が悪いな」と思うことだってある。

 

 それにしても、やっぱり日本の人たちは「治安」「治安」と言い過ぎるのである。どこでもいい、どこか外国の地名を検索してみたまえ。検索候補の上から3つめか4つめに、必ず「治安」がセットで登場する。

 

「ボローニャ 治安」「リスボン 治安」「サンパウロ 治安」「アテネ 治安」と言う具合であるが、これだけ「治安」で検索している人が多いということは、よほどビクビク&おっかなびっくり旅している人が多いんじゃないか。

 

 しかし今井君なんかは、鏡に映った自分のお顔をジッと眺めながら、「地元の人から見れば、オマエが一番治安を悪くしているんじゃないか?」と自問自答するのである。町の雰囲気を最も悪くしているのは、実はこのサトイモ小僧なんじゃないか。

20065 雑貨屋のねこ

(モンマルトルの猫。雑貨屋のオジーサンに大切にされていた)

 

 実際には、ちょっと治安が悪い感じの場所を闊歩するのも、味わい深いものである。パリ地下鉄2号線・アンヴェールの駅を降りて(スミマセン、昨日の続きです)、モンマルトルの坂道を登っていくと、まずミサンガ売りの集団と出くわす。

 

 アフリカ系の若い男子諸君である。ワタクシは身長172cmしかないから、おそらく190cmを超えているであろう彼らからは、上から目線で見下ろされることになる。そういう男子が5〜6人で坂道を降りてくる。

 

 こっちはきつい上り坂を3〜4分登ってきて息が上がり、すでにヒーコラ言っている。向こうは集団で勢いよく坂を降りてくる。まさに「多勢に無勢」であって、彼らをかわすのはなかなか難しい。

20066 ムーラン

(モンマルトル、ムーラン・ド・ラ・ギャレット)

 

 今はすっかり少なくなったが、13年前のパリには、こういうミサンガ売り諸君がナンボでもいた。人々はみんな取り囲まれて、右往左往したものだ。囲まれて立ち止まると、ミサンガを手首に巻かれちゃう。無言で巻いておいて、ギュッと両端を結んじゃう。

 

「結んだから、もうほどけない」「ほどけないんだから、◯◯ユーロ支払え」と、集団が口々に要求し始める。多勢に無勢、上から目線で声高に要求してくるわけだ。ミサンガと言ったって、要するに毛糸を何本かクルクル絡めただけのものであるが、その◯◯ユーロがなかなか高額なのである。

 

 ワタクシは難を逃れ続けているが、断りきれずにオカネを払った人も少なくないようだ。しかもこういう話は一人歩きするうちに雪だるま式に大っきくなるから、マユツバ系の逸話もいろいろ加わってくる。いつの間にか「モンマルトル 危険」ということになるわけだ。

20067 モンマルトル墓地

(モンマルトル墓地。散策ツアーの人々も多い)

 

 路上では、賭博もやっている。賭博と言ったって、3つの茶碗を伏せて並べ、茶碗の1つにタマを投げ込み、3つを素速く移動させた上で「さあ、タマはどの茶碗の中でしょう?」「はい、賭けてください♡」という類い。まあ罪のないゲームにすぎない。

 

 しかしこういう路上ゲームには、必ず「サクラ」がいる。サクラが何度もオカネをたっぷり儲けてみせて、その上で近くにいるシロートを誘い込む。「オレはこんなに儲けたぜ、オマエもやってみろよ」というわけだ。

 

 もちろんシロートには当てられない仕掛けがあって、儲かるのはサクラだけである。見たところ、男子のサクラより、派手めの中年オバサマ系サクラが多いようだ。サクラの数は相当なもので、アンヴェールの駅からしばらく続くダラダラ坂に、同種の人だかりが4つも5つも出来ている。

20068 ベルリオーズ

(ベルリオーズのお墓) 

 

 ま、そういうのをいろいろかいくぐって、サクレクール寺院にお参りを済ませ、山の上でランチということにした。それが昨日の写真の5枚目「クレープ」である。店先で買ってかぶりついてもいいが、さすがに中年サトイモである今井君は、ちゃんとお店のテーブルで、ナイフとフォークでいただいた。

 

 実は諸君、これがワタクシのクレープ初体験である。まだ中学生の頃「原宿でクレープをパクリ」という行動が大流行して、雑誌の記事なんかでよく立ち食いの様子を読んだりしたものであるが、いやはや、何しろ今井君は田舎者だ、「原宿」などと言われると、それだけで萎縮しちゃったのである。

 

 しかし今モンマルトルの店でクレープを食べてみると、「おやおやこれなら、大学生のころ自分で作ったのと同じじゃないか」の感が深い。諸君、ワタクシは18歳から29歳まで長い自炊生活を体験している。基礎基本の料理はマコトに上手なのである。

 

 このブログに乗っけた「目玉焼き」、写真を目撃した人も多いだろう。黄身はトーロトロ&白身の端っこはカーリカリ、理想の目玉焼きをいつでも作ってご覧に入れる。「豚汁」「タケノコの味噌汁」については「Wed 180418  おお早い!! E組テキスト印刷が完了/浪人も高3も迷わず受講すべし」を参照してくれたまえ。

20069 ゾラ

(ゾラのお墓)

 

 19歳か20歳の最も貧しかったころ、間違いなく自分でクレープを焼いたのだ。電熱器とフライパンだけが頼りの「松和荘時代」である。冷蔵庫にタマゴが2つ、何ヶ月も前に買ったブルーベリーのジャム。冷蔵庫の上に小麦粉が半分ほど。「これだけで何とかならないか」と腕組みしたのを覚えている。

 

 あれから幾星霜、幾多の経験を積み、人間性もすっかり角がとれてオトナになった今井君は、ミサンガ売りもサクラの勧誘もくぐり抜けて、こうして今モンマルトルでクレープをワシワシやっている。思えば遠くへきたもんだ。まさに「大いなる旅路」でござった。

 

 しかし諸君、何のことはない。こうして7ユーロだか8ユーロだか払ってありついた「アプリコットジャムのクレープ」は、あの20歳の晩、つのる食欲に耐えかねて焼き上げた小麦粉とタマゴの1枚と、味にも食感にもさしたる違いはなかったのである。

20070 デュマ

(デュマのお墓)

 

 こうして腹も満たされた。あとは丘を下って、モンマルトルの墓地を散策するだけである。反対方向に坂を降りていくと、どんどん人影が少なくなってくる。4月の風にマロニエの葉が揺れて、マコトに気持ちのいい午後である。

 

 出会う人の多くは犬を連れてお散歩中。雰囲気のいい穏やかな街であって、こういう街で雑貨屋なんかをやる人生も悪くなさそうだ。もちろん儲からないだろうが、「儲からなくていい」という前提なら、店の名は「柴犬軒」または「柴犬庵」、「SHIBAINU-AN」の看板を小さく出して、昼寝をして過ごしたい。

 

 そのぐらい、柴犬と多く出会う。チワワもポメラニアンもパピヨンも多いが、パリではどうやら柴犬が流行らしい。みかんかコッペパンみたいな背中の陽気な柴犬をつれて、みんな心から嬉しそうに笑っている。

 

 さてモンマルトル墓地であるが、入り口がなかなか見つからない。そりゃ墓地なんだから、入り口が簡単に見つかる必要はないが、明らかに墓地とわかる高い塀をぐるぐる回って、ほぼ1周した後にやっと入り口にたどり着いた。

 

 方向を間違えば、本来1分で済む道のりに30分もかかる。おお、素晴らしい教訓だ。緑の濃い穏やかなモンマルトル墓地には、墓地散策ツアーのグループも多く訪れ、もちろん個人で散策している人々もいる。

20071 オッフェンバック

(オッフェンバックのお墓)

 

 政&財界の有名人や著名文化人の墓がズラリと並ぶ中、ワタクシがお参りしたいのは、文学系がゾラとデュマ、音楽系がベルリオーズとオッフェンバック、美術系がドガである。何しろ大っきなお墓がたくさん並んでいるから、よほど頑張らないと見つけられない。

 

 最初に発見したのがベルリオーズの墓。墓地のメインストリートに「ベルリオーズ通り」と名前がついているぐらいだから、発見は容易だ。「モンテ・クリスト伯」「三銃士」「黒いチューリップ」の大流行作家デュマは、墓地のずっと奥の方で眠っていた。

20072 ドガ

(ドガのお墓)

 

 入り口付近に、ゾラの墓もあった。「ナナ」と「居酒屋」が有名だが、ワタクシは「ジェルミナール」の圧倒的な迫力が好き。狭く暗い炭鉱の奥の生活を、全集本500ページにわたって描き切った。炭鉱の暗闇の圧迫感が凄まじい。

 

 オッフェンバックについては、2〜3日前の記事に書いた通り、彼が大活躍した劇場「ブッフ・パリジャン」の目の前でテロ事件が発生したばかり。ワタクシの墓参りしたのはその2週間前であったが、今頃はさぞかし悲しんでいることだろう。

 

 最後に見つけたのが、ドガのお墓。日本では「ド」にアクセントを置き、その後から軽く「ガ」を添えるが、墓碑銘には「de Gas」とある。フランス語の「de」は前置詞、英語の「of」に該当する。「Gas」が、彼の姓の本体のようである。

 

1E(Cd) Tomomi Nishimoto:TCHAIKOVSKY/THE NUTCRACKER(2)

2E(Cd) Pešek & Czech:SCRIABIN/LE POÈME DE L’EXTASE  + PIANO CONCERTO

3E(Cd) Ashkenazy(p) Maazel & London:SCRIABIN/PROMETHEUS + PIANO CONCERTO

4E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 1/3

5E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 2/3

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