Sun 180422 人間関係は難しい/フォンテーヌブローを散策(フランスすみずみ30)
人間関係はマコトにむずかしい。起業したばかりのまだ小っちゃな会社、「仲間たち4〜5人で始めてみました」などという段階がいちばん危ないので、ごく些細なことであっという間に会社は雲散霧消する。
「パリでラーメン屋をやってみようか?」
「いや、ラーメン屋はもう飽和状態だから、オレたちの大好きなうどんをウリにしよう」
「おお、うどん屋、いいねえ」
「蕎麦やラーメンも食べられる店にしようぜ」
「丼物もいいじゃないか」
「カレーうどんを1番の売り物にしないか」
「いいね、いいじゃん&いいじゃん」
「やろうぜ」
「やろうぜ&やろうぜ」
諸君が若ければ若いほど、飲み会の席なんかでカンタンに衆議一決してしまう。それは素晴らしいことであって、ワタクシはそういう積極性には大賛成だ。やりたまえ、どんどんやりたまえ。
(フォンテーヌブロー風景 1)
ただし、その「衆議一決」、意外なほどモロいものである。ちょっとしたイサカイで簡単にボロボロ崩壊してしまう。崩壊は、信じがたいほどあっけない。
あんなに頑張ったシューカツのおかげでやっと入社した大企業、そこに退職願まで出して船出したうどん屋も、「じゃ、オレは抜けるから」「じゃあな」のホンの一言で、あれれ、翌月にはもう跡形もなくなっている。
客の前での会話には、特に注意したほうがいい。今回のパリ滞在で、「これは危ないな」と思った日本料理店が一軒あった。店のスタッフ7〜8人で、「昨日、売り上げの20ユーロが消えた」という話を大声で続けていたのである。
店内には、ワタクシを含めて十数人のお客。フランス人が2/3、残り1/3が日本人。ただしうどん屋にくるぐらいのフランス人だ。日本語の会話だって、十分に理解できると思わなきゃいけない。
(フォンテーヌブロー風景 2)
それなのに、誰にでも聞こえる大っきな声で「そうだ、昨日なくなった20ユーロ、見つかったのか?」と言い出したのは、おそらく現場の責任者と思われるオジサマである。
「見つかってませんよ」
「そういえば◯◯君が、自分のチップを金庫のオカネで両替してました」
「あー、そういうのって、絶対やめてね」
「両替したのは〇〇君ですよ、ワタシに言われても困ります」
「でもさあ、見たら『やめなよ』ぐらい言ってくれないと」
「でも、そういう雰囲気じゃなかったっす」
「みんな、絶対こういうの気をつけてね」
諸君、こんな会話を客のアタマ越しに交わすようでは、お店は遅かれ早かれ破綻する。
(フォンテーヌブロー風景 3)
ワタクシはむかしむかし、あるバイト先で「客の前では絶対に走らないように」という指導を受けた。バイトであれ正社員であれ、事務所の中でバタバタ走り回る様子を見せれば、顧客は決して店に好感を居抱かない。「慌てているな」という印象は、好印象にはつながらないのである。
今井君はおせっかいであるから、食べていたカレーうどんからふと目をあげて、「そういう会話をお客に聞かれてはいけないんじゃあーりませんか?」と、キツい口調で言いたくなった。
もちろんギュッと心を抑えて沈黙を貫いたが、まあ諸君、もしも諸君が起業を考えるようだったら、むかしから「上手の手から水が漏れる」とも言う。名人と思われる人でも、思わぬところでミスをして、今までの努力が台無しになりかねない。注意オサオサ怠りないようにしなきゃいけない。
(問題のお店のそばにて。ネコが一部始終を見守っていた)
さてフォンテーヌブローであるが、パリからTransilienで40分、マコトに快適な小旅行である。諸君もパリ滞在の1日、大混雑のルーブルやオルセーやヴェルサイユにムカついたら、翌日は丸1日フォンテーヌブローを散策することをオススメする。
この10年、パリやミラノやヴェネツィアの混雑は尋常ではなくなった。東京や大阪もそうであるが、同じところに観光客が殺到しすぎて、どこもかしこも長蛇の列。団体ツアーの皆様が「そこのけ&そこのけ」をやるから、旅をしていてムカつくことこの上ない。
そういう時、パリならスッキリ出来る抜け道があって、それが「森」である。地下鉄で20分も行けば、深い静かな森が待っている。地下鉄で東に20分なら、ヴァンセンヌの森。西に行けばブーローニュの森。もっと西に20分行けばサンジェルマン・アン・レーの森もある(Fri 180413 中距離列車が苦手/サン・ジェルマン・アン・レー(フランスすみずみ22)参照)。
(Fontainebleau Avon駅。ここで降りてバスに乗り換える)
ワタクシは、森がちょいと苦手である。静けさは好きでも、森には「虫」というものがたくさん存在する。ムシと名のつくものは、足が6本だろうと8本だろうと100本だろうと、いや足に該当するものをもたないヤツらも、すべて嫌悪の対象だ。ムシできない。見ただけでムヒが欲しくなる。
コドモの頃はこれでも昆虫採集が大好き。低木にムッとたかった黒いカナブンを、一度に30匹も40匹も虫かごに詰め込んで、一気に昆虫標本にしちゃったものだった。その標本が梅雨時にすべて腐敗し、信じがたい悪臭を放った。ムシをムシできなくなったのは、あの頃だったと記憶する。
それでも森は大好きだ。3日前にサンジェルマン・アン・レーを散策したから、今日はパリから南に向かい、フォンテーヌブローのお城と森を散策してこようという趣向である。鉄道のストライキでどこもかしこも大混雑のパリに、よほどムカついていたんだろうと思う。
リヨン駅を出た電車は、フォンテーヌブローまで2駅しか止まらない。近郊電車RERとの乗り継ぎ駅になっているMelun(ムラン)にまず止まり、次に森の入り口「Bois le Roi」に停車する。フランス語で「王の森」。おお、そのものズバリである。
(森の入り口、Bois le Roi駅)
ホントはこの駅で下車して、中距離電車の一駅分、森の中をブラブラ歩いて行けばいいのだ。ほぼ満員だった電車の乗客は、半分ほどがこの駅で降りていった。コドモの姿はあまりない。「オトナの森」という位置づけなのかもしれない。
ワタクシはもう1駅、Fontainebleau Avonまで乗っていく。駅前からすぐフォンテーヌブローのお城までバスが出ている。バスチケットは運転手さんからも買えるが、パリのメトロやバスで使っている回数券カルネがそのまま使用できる。
お城まではバス15分ほど。お城の入り口にホテルや飲食店がズラリと並んでいて、1泊2日の小旅行にピッタリだ。日本なら、「鎌倉」のイメージ。さっきのBois le Roiが北鎌倉、オトナは北鎌倉から鎌倉まで、ブラブラ森の散策を楽しんでいくじゃないか。
昨日の写真に何度も繰り返しておいたが、お城も庭園も「小型ヴェルサイユ」と考えればわかりやすい。ヴェルサイユの鏡の間に似た広大な一室があり、舞踏会用の豪華絢爛なお部屋もあって、お城を見て回るのに駆け足でも2時間近くかかる。
(フォンテーヌブローの森は、マコトに広大である)
だって諸君、ここは12世紀から19世紀にいたるフランス王の離宮である。カペー朝からナポレオン3世まで、700年もの豪華建築様式がギュッとここにまとめられている。ルイ9世もフランソワ1世もルイ14世も、みんなここでいろいろヒソカに楽しんだ。
パリから大勢の家臣を引き連れて、この森に狩猟にいらっしゃる。日本で言えば、平安末期から明治時代までの長い長い時代の積み重ねだ。どのぐらいの酒が消費され、どれほどの豪華ディナーなりブランチなりが王族&貴族のポンポンに消えていったか、思うだけで胸焼けしそうだ。
しかしどんなに豪華でも、森の散策の楽しさにはかなわない。そりゃ、ムシできないほどのムシが700年の歴史を貫いている。フォンテーヌブローの森の700年の歴史の中で、どれほど大量のムシたちが王族の耳元をブンブンとんでいっただろう。
小学2年の今井君1人で、初夏の日曜日にカナブン40匹を捕まえたんだ。700年じゃ、カナブンだけでも浜辺の砂つぶより多いんじゃないか。考えただけでメマイがする。もちろん諸君、そんなことを考えるワタクシのほうがアホなのは言うまでもない。
1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 14/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 15/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 16/18
4E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 17/18
5E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 18/18
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