Sat 180310  入社式/うぐいすとメジロ/橋をわたる(またシドニーの12月 20)   | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180310  入社式/うぐいすとメジロ/橋をわたる(またシドニーの12月 20)  

 街には入社式を終えたばかりの新社会人が溢れている。「すがすがしい」とか「ういういしい」とか、テレビのニュースキャスターは、彼ら&彼女らの輝かしい未来を、いかにも先輩っぽい笑顔で讃えている。

 

 しかし諸君、新人社員の心の中を思いやるに、とても「ういういしい♡」「輝かしい未来が待っている」どころではないのである。すでに今日の段階で、恵まれた大企業の新入社員でも「こんなところに来るはずじゃなかった」という後悔でいっぱいのヒトも多いだろう。

 

 その証拠に諸君、ワタクシの大昔の1本のブログ記事に、昨日1日だけで合計92ものアクセスがあった。「Thu 130307 入社式直前の1日をどう過ごしたか とりあえずワイシャツ5枚買いに行く」である。悩んでいる人って、ホントに多いんであるね。

 

 大昔の記事の中にも人気の高い定番があって、「赤本 間違い」で検索、あるいは「新人講師 待遇」あるいは「入社式 直前」で検索すると、今井君のブログがポンと最上位近くに出現する。10年書き続けるというのは、やっぱりすげーことなのである。

 

 するとその今井君の記事のすぐそばに「入社式・直前・辞退」なんてのも出て来る。ありゃま、あんなに頑張って、シューカツにほとんど命を賭けたのに、「直前 辞退」で検索しちゃうヒトも存在するのでござる。

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(12月27日夕暮れ、シドニーのこの橋を対岸までわたって来ようと思う)

 

 まあ諸君、今井君はその気持ちがマコトによく分かるのであって、短気集中シューカツに成功した今井君は、わずか7日のシューカツで内定を手にした。

 

 最大手広告代理店D社であって、働き方改革が本格始動する一因となったのもその会社であるが、3月30日になっても31日になってもまだ、自分がホントに就職するのか半信半疑だった。

 

 だってワタクシの予定では、今になってみればバカバカしいというか馬鹿馬鹿Cというか、「大学在学中に作家デビューする」はずだったのである。

 

 高校では医学部志望。しかし「やっぱり弁護士もいいな」「学者♡」「いや、作家になって気楽にものを書いて暮らそうじゃないか」と、どこまでもヒヨッていき、気がつけば東京大学に入れてもらえない悲劇。親と対立して「文Ⅲじゃ就職がないぞ」と怒鳴られ、ムカついているうちにどんどんダメ人間になっていった。

 

 だからワタクシ、「人生メチャクチャ」なのである。どうせメチャクチャやってきたんだから、予備校講師でタップリ稼ごうじゃないか。30歳でPretty塾 + どうすんだい(仮名)へ。何だか異様に人気が出て、そのままこの世界から離れられず、気がつくと超ベテランに成長していた。

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(シドニーの橋の向こうには、こんな激しい遊園地がある)

 

 ピッカピカの新入社員だからと言って、何もそんなに「この会社に命を捧げます」みたいに、ヤタラに気張らなくていいのだ。今晩はこれから同期のパーティーかい? 明日からは新入社員研修かい? もちろん真剣にやらなきゃダメだけれども、顔の神経が引きつるほど夢中になっちゃ、かえって先が続きませんぞ。

 

 ピッカピカの彼ら彼女らに比較して、もう今井君はくたびれきった中年だ。いやはや、彼ら彼女らが午前11時の太陽だとすれば、今井君は17時半の夕陽な感じ。真っ赤に燃えて海に沈んで、あとは日付が変わるまでたった6時間、平和と安寧と人々の繁栄を祈るばかりである。

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(素直に橋を渡らずに、橋の欄干の上を冒険する人々も存在する)

 

 12月27日、シドニーの今井君もそうだった。あと2日で旅は終わり、めでたく帰国するばかりである。人生も夕暮れ、旅も夕暮れ、でも陽が沈む前に、新人じゃまだ誰もマネできないぐらい真っ赤に燃え上がろうじゃないか。シドニーでもそう思ったし、今回の「新講座E組」も、実はその闘志の現れなのである。

 

 でも諸君、悲しいことに、マコトに悲Cことに、12月27日の今井君のポンポンは、コカコーラとグリーンピースのマッシュでいっぱいだ(スミマセン、昨日の続きです)。

 

 確認のために、昨日の記事に掲載した「The Tiger」の写真を再び掲載する。ホントにこれがウールームールーの定番なの? ホントにこれがシドニー名物なの? パイ生地にギュッと詰め込まれてはいるが、見た目はまさに「ずんだ餅」じゃないか。

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(拡大版・うぐいす餡。ミートパイの上のこの量に注目だ)

 

 ワタクシは、仙台名物 → ずんだ餅なら、好んでワシワシやるのである。しかし諸君、ずんだ餅ならいいが、ずんだパイはイヤだ。ずんだ餡は、枝豆またはそら豆をすりつぶしたペースト。枝豆もそら豆も可愛らしいけれども、グリーンピースとなると諸君、何だか憎たらしい。

 

 子どものころ、パン屋さんでよく買った「うぐいすパン」は好きだった。中に入っているのが「うぐいす餡」。青エンドウの豆を使った餡であって、あれれ、今井君の旗色が悪くなってきた。青エンドウって …… おお、グリーンピースのことじゃないか。

 

 しかしまあ許してくれたまえ。「子どもの頃は好きだった」と書いただけであって、「今も好きだ」とは一言も言っていない。ふん。ぷん。ぷんぷんぷん。今よく考えてみたら、うぐいすパンもそんなに好きじゃなかったよん。

 

 うぐいすパンのルーツは、1929年。もともとはウズラマメが原料だったが、キレイな緑色を出すのに成功した木村屋が「うぐいすパン」と命名、今日に至る。その年の10月24日、世界大恐慌が始まった。

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(余りのことに、ワタクシはローストビーフサンドに切り替えた)

 

 しかし諸君、「うぐいすがキレイな緑色」というのは、「梅にうぐいす」「ホー&ホケキョ」という絵を長年見せられたのが原因。実際のうぐいす君はちっともキレイな緑色なんかじゃない。

 

 我々が「うぐいす色」と呼んでいる色は、あれはメジロの色である。おおメジロ君、可愛いですな。メジロ君、ホントにキレイな緑色ですな。何度も書いている通り、ワタクシは内田百間の大ファン。彼の全作品(文庫本42冊分)を25歳の1年間で読み上げたが、内田百間はメジロの大ファンだった。

 

 戦前から戦中にかけて、彼のオウチは鳥だらけ。ミミズクまで飼っていた。ヒコーキの操縦もこなし、随筆はスーパー名人。宮城道雄と親交があるほどの琴の名人、ドイツ語の大学教授で、お酒ならナンボでも飲み歩く。こういうタイプの人に、ワタクシはなりたかった。

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(夜の近づいたシドニー・ハーバーブリッジ)

 

 その内田百間が、1945年の空襲でオウチを焼かれてしまった時、右手に日本酒の4合ほど残った一升瓶をぶらさげ、左手にメジロの鳥カゴを下げて、猛火の中を悠然と避難するシーンがある。右と左が逆だったかもしれない。

 

「それなら何故メジロを鳥カゴから自由にしなかったか」であるが、「鳥は虫と同じように、暗闇の中の炎に飛び込んでいく習性がある」「いまメジロを自由にすれば、まっすぐに紅蓮の炎の中に飛び込んでしまう」というのだから、あんまり可哀そうで涙が止められない。

 

 以上諸君、4月2日、入社式の日の今井君は、むかしむかしの古い思ひ出と、うぐいすペーストと内田百間とメジロと、マコトにいろんな思ひ出が錯綜して、とてもとても1本スカッと筋の通った記事なんか書ける精神状態ではない。

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(シドニー・ハーバーブリッジ。徒歩20分で対岸に到着した)

 

 ま、とにかくシドニーの今井君は、お腹の中からこみ上げてくるグリーンピースのゲップに悩まされながら、「夕暮れのハーバーブリッジを往復してきますかね♡」と考えた。赤い夕陽に照らされた鉄の橋が、たいへん美しく見えたのである。

 

 往路はまだ夕焼けだろうけれども、きっと帰路はシドニー港の美しい夜景が堪能できそうだ。夜景の中のオペラハウスも絶品だろうし、夏の夜風の中、夜の海を突っ切って走りまわる小型フェリーの姿もまた可愛いだろう。

 

 18時、ワタクシはホテルの部屋を出て、青エンドウ臭い息を吐きながら、シドニーの港を半周。ハーバーブリッジの入り口を見つけるのに苦労はしたけれども、片道20分、無事に徒歩で対岸に到着することに成功したのである。

 

 なお諸君、入社式の日に「橋をわたって対岸へ」の話を書いたのは、もちろん最初からそういう意図があってのこと。まあ理解してくれたまえ。対岸にわたって、しかしどうしてもダメだったら、戻って来ればいいのだ。ヨメに行こうが、シューショクしようが、「帰っちゃいけない」など思いつめないでくれたまえ。理不尽なことは言いっこなしだ。

 

1E(Cd) Alban Berg Quartett:HAYDN/STREICHQUARTETTE Op. 76, Nr. 2-4

2E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE

3E(Cd) Fischer & Budapest:MENDELSSOHN/A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM

4E(Cd) Coombs & Munro:MENDELSSOHN/THE CONCERTOS FOR 2 PIANOS

5E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE 1/2

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