Wed 180307  中年とカンガルーどんがカワイイと言ふこと(またシドニーの12月 18) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 180307  中年とカンガルーどんがカワイイと言ふこと(またシドニーの12月 18)

  ワタクシが中年のオジサマであることは論をまたないが、しかし中年のオジサマというものは、よーく観察してみるとマコトにカワイイものである。

 

 別に、ワタクシ自身がオジサマの代表格だから言うわけなのである♡ いやはや諸君、観察してみたまえ。電車の中でも、ファミレスの中でも、もしもいかにもオジサマっぽいオジサマを発見したら、まさにその時が深い観察のチャンスなのだ。

 

 もちろん、オウチの中にもオジサマは存在するだろう。担任のセンセがオジサマだ、英語とか世界史とか数学のセンセがオジサマだ、そういう人はマコトに幸せであって、直ちにその可愛らしさを認識しなおしたまえ。

 

 かく言う今井君も、公開授業の冒頭なんかに、高校生女子の感にたえたような「カワイイ♡」「カワイイ♡」という歓声に励まされることがある。そりゃカワイイさ。こんなに完璧な楕円形が可愛くなかったら、スーパーにズラリと並んだキウィ軍団を見ても、何にも感激しない人に違いない。

 

 適度にお腹も丸く突き出て、ちょっと恥ずかしそうにニヤニヤ&ニタニタ、こんな中年オジサマこそ、21世紀的シュールな可愛さの極致だとは思わないかね。

19728 カンガルー

(ふてぶてしく&憎々しいカンガルー君。可愛さの極致なんじゃないか)

 

 むかしむかし、清少納言の時代には「かわいらしいもの」と言えば「瓜に描きたる稚児の顔」であったのだが、21世紀にカワイイのは、何と言っても楕円オジサマだ。

 

 ちょいと清少納言「枕草子」151段「うつくしきもの」を読んでみたまえ。感性の鋭敏な彼女が「かわいらしい」と思ったものが、小気味よく次々と示される。

 

「うつくしきもの。瓜にかきたる稚児の顔。スズメの子の、鼠鳴きするに踊りくる。2つ3つばかりなる稚児の……いと小さきチリのありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。......稚児の、目に髪のおほえるを搔きはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつくし」

 

 どうですか諸君、今井君は高校生の頃の古文の勉強を、徒然草と枕草子と奥の細道と平家物語の音読だけで済ませたけれども、18歳のタマシイは数百年が経過しても衰えることはない。有名な一節なら、いまだにこうして暗唱できるほどだ。

19729 ワラビー1

(ワラビー君。こっちは間違いなく「カワイイ」の対象だ 1)

 

 さらに「うつくしきもの」を読み進めていくと、「8つ、9つ、10ばかりなる男児の、声は幼げにて書よみたる、いとうつくし」という一節も出てくるはずだ。

 

 おお、「音読している姿は、いとうつくし」ときましたよ、諸君。音読すると、たとえ「幼げ」ではあっても、ただの「うつくし」ではなくて、「いとうつくし」。ただの「pretty」じゃなくて、「very pretty」と清少納言のオネーサマに褒めてもらえる。

 

 諸君、幼くても下手でもいいから「音読してればカワイイ」ってさ。平安の昔の8歳9歳10歳は、平均寿命が2倍近くになったことを考えれば、21世紀の16歳18歳20歳に当たるんじゃないか。若者諸君、カワイイといってもらうためにも、古文も英語もどんどん音読だ。

19730 ワラビー2

(ワラビー君。こっちは間違いなく「カワイイ」の対象だ 2)

 

 要するに、むかしの日本人が可愛いと思ったのは、「小さきもの」なのだ。清少納言も「何も何も、小さきものは、みなうつくし」と結論づけていらっしゃる。

 

 スズメの子、稚児、8歳9歳の男児、ひよこ、雁のヒナ、雛人形の道具、蓮の葉のまだ小さいヤツ。確かに諸君、共通点は小ささだ。たった1つ、冒頭にあげられた「瓜に描きたる稚児の顔」だけ、異質な楕円形が混じってくる。おお、楕円形、平安時代にも食い込んでますな。

 

 ところで諸君、枕草子の時代から1000年、21世紀に深く入り込んでくると、可愛さの概念の中に、「小ささ」以外の様々な要素が入り込んでくるんじゃないか。リスよりネコ。イケメンよりオジサマ。おしゃまなジーチャン。お茶目なバーチャン。どうですか、やっぱり変化を感じませんか。

19731 コアラ1

(コアラ君。これもまたカワイイの対象に違いない 1)

 

 シドニー旅行記なのに、どうしてこんなに長々と愚にもつかない駄文をものしているかと言うに、今井君は12月27日、シドニーのタロンガ動物園でカンガルーを眺めながら、いかにも憎たらしい態度のカンガルーが可愛くてならなくなったのである。

 

 まあこの辺で、今日1枚目の写真をつくづく眺めてみてくれたまえ。おお、憎たらしい。おお、ふてぶてしい。この面倒くさげな表情。「なんだよ?」「なにか文句でもあんのかよ?」「うぜ」「うぜ」「うぜんだよ」。もしも日本語が話せるカンガルーなら、そのぐらいのことは言いそうだ。

 

 そして諸君、決して起き上がらないいのである。周囲でオーストラリアの幼児がどんなに歓声をあげても、中国人カップルがセルフィーにくっつけたスマホで何十枚写真を撮ろうと、起き上がってポーズをとるとか、ちょっとVサインぐらい作ってあげるとか、そんなサービスが1つもナシなのだ。

 

 そのくせ、腹は搔くのである。そりゃ腹も痒くなるだろうから、短い腕をイヤイヤ持ち上げて脇腹をポリポリやっても、文句を言われるイワレはない。それは分かっている。しかしそのポリポリの動作がマコトにふてぶてしい。

 

 まるで「お前らが見てるから痒くなるんだよ」と呟いているかのようである。そして、憎たらしくソッポを向く。いったんソッポを向いたら、意地でもこちらを振り返らない。「オメエらの視線がうぜえんだよ」。背中がそう言っている。

19732 コアラ2

(コアラ君。これもまたカワイイの対象に違いない 2)

 

 そこへ諸君、飼育員の人が大きなバケツを持って現れる。カンガルーどんのランチタイムなのであるが、ザク切りにしたニンジンだ。「えっ、カンガルーって、ニンジン食べるの?」「今井君より偉いじゃん」と一瞬感激するが、カンガルーどんは見向きもしない。

 

 最初から見向きもしないだけじゃないのだ。チラッと1度だけ目線でランチの中身を確認し、またすぐにソッポを向く。それも「見なかったことにする」というような態度ではない。「見た」「間違いなく見た」「見たけれど、ニンジンに関心はない」と、背中の表情でビシッと示唆するのである。

 

 カンガルーのランチの時間を知っている野鳥の群れが、恐る恐るやってくる。一羽がこわごわニンジンを一切れだけ盗むと、群れの中で激しい争奪戦が起こる。カンガルーどんは、それをすべて無視して、再び三たび脇腹を搔いている。

 

 そこへ、エミューがやってくる。エミューさんもニンジンを食べるのである。身体の大きな鳥であるから、ニンジンはどんどん減っていく。ここでようやく、「何すんだよ」「オレのランチだぜ」と、もっさり立ち上がって、やっとニンジンを3切れぐらい、マコトにイヤそうにかじってみせる。

19733 ランチ

(エミューとニンジンを分け合うカンガルーどん)

 

 そして諸君、3切れ食って、それでおしまいなのだ。もらったニンジンは20切れ近くあったが、残りは放置。いったん皿の外にこぼれてしまうと、もう見向きもしない。そして向こうへ行って、ソッポを向いて、また脇腹を搔くのである。

 

 これこそ、21世紀型の「カワイイ」なんじゃないか。マジ卍に中年オジサマの可愛さと一致するんじゃないか。憎たらしさに内心ムカつきながら、シドニーの今井君は思わず快哉を叫ぶ思いだった。ワタクシ公開授業の冒頭、「かわいい♡」と叫ぶ女子生徒の感覚が、マジ卍に理解できたのである。

 

 清少納言のオネーサマなら、カンガルーを決して「うつくしきもの」に入れなかっただろうし、むしろ「にくきもの」の代表格として、カンガルーと今井君を槍玉にあげたんじゃないか。

19734 乗船所

(タロンガ動物園には、このジャングルブック的な船で行く。「まめぞう君」とニックネームをつけた。こいつもカワイイの対象だ)

 

 タロンガ動物園での「うつくしきもの」は、小さなワラビー君。こちらは「ねず鳴き」なんかをしてやれば、それこそ跳んできそうである。オポッサム君というのもいる。こちらも「らうたし」の対象だ。

 

 そしてもちろんコアラ君である。しかし12月27日、もうワタクシはコアラ君をあまり「らうたし」とは思えなかった。やっぱり、中年オジサマ的な可愛さじゃなきゃいかん。

 

 もしも諸君、「コアラの写真がもっと見たい」ということであれば、さらに1年前の2016年12月、おなじタロンガ動物園を訪ねた時の記事がブログ内に存在する。Sat 161224 北大でコアラ/発音はコゥアーラ/大意と設問解説(シドニー夏のクリスマス7)この記事をクリックしてみてくれたまえ。

 

1E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 6/9

2E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 7/9

3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 8/9

4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 9/9

5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 1/10

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