Sat 161224 北大でコアラ/発音はコゥアーラ/大意と設問解説(シドニー夏のクリスマス7) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 161224 北大でコアラ/発音はコゥアーラ/大意と設問解説(シドニー夏のクリスマス7)

 これから2〜3日、センター試験直後のスッタモンダが、多くの受験生を悩ませる。センターで失敗した人や、その周囲にいるオトナの人たちへのアドバイスを、今から6年前の1月にずいぶん熱く書いたが、この時期になるとそんな大昔の記事にもアクセスが増える。

 大寒波に日本中が包まれる中、30年も昔から変わらない「センターリサーチ」の光景。あっちの予備校からこっちの予備校に、勉強そっちのけでかけずり回らなければならない。

 たとえ数日のこととは言っても、50万人も60万人もの有為な若者たちが、数字だのデータだので大事な進路をいじくり回されるのは、ホントに可哀そうでならない。

 ま、半世紀近くも続いてきた制度なのだ。制度変更まであと3年、数字に振り回される最後の世代として、雄々しく戦い続けていただくしかない。そして出来るだけ早く、国公立でも私大でも、自らの最終志望校に向かって最大限の努力を再開してほしい。
コアラ1
(シドニーのコアラ代表 1)

 北海道の諸君にとって、北海道大学は「東大に入るよりむしろ北大のほうがいい」というぐらいの憧れの的である。北大の入試で「コアラ」がテーマの英文が出題されたのは2012年だったはずだ。そのコアラ君に、ワタクシはシドニーで直接面会してきた。

 スペルは「koala」。そんな超重要頻出単語ではないけれども、見れば誰でも一目で分かる。Koala。そりゃコアラであって、コアラ以外の何ものでもない。

 しかし諸君、受験用の単語集にkoalaが掲載されている可能性は極めて低い。ビックリしたコンピュータ君たちは、「北海道大学でとんでもない珍しい単語が出題された」「さすが最難関大学の入試だ」と判断したらしい。

 ある単語集によると、koalaは「レベル6」「大学学部以上の水準」「大学入試では最難関大対策レベル」。英検でも「準一級以上合格のために必須」。TOEICでも「730点以上取得に必要な単語」。おやおや、koala君、ずいぶん持ち上げられたもんですな。
コアラ2
(シドニーのコアラ代表 2)

 確かに諸君、「コアラって、正しく英語で発音できますか?」と尋ねられたら、ほとんどの日本人が「えっ」「うぐっ」「げろっ」と詰まってしまうに違いない。誰でも知っているのに、「発音は知りません」、そういう単語は少なくない。

 日本語では誰が何と言っても「コ」にアクセント。天空高く「コ」の音をポンと置いてから、まるでオマケのように「アラ」をくっつける。

 ところが英語の発音は全く違うのだ。研究社の「新英和中辞典」に掲載された発音記号は【koʊάːlə】。まず地面すれすれの感じで「コゥ」と低く唸り、アクセントはあくまで真ん中の「ア」であって、しかもそれをチョイと長く伸ばす。「ラ」なんかほとんど付け足しみたいに、語尾に短くくっつける。

 天下の研究社さまが、辞書にデカデカと掲載している発音記号だ。まさか間違いではないだろう。眠ってばかりのコアラどんは、英語で発音すればコゥアーラ。諸君、これからは間違ってはならん。コゥアーラ、コゥアーラ。あーら、何だか難しいじゃあーりませんか。

 2012年、北海道大学入試に出題されたコゥアーラどんの生態について、ここに大意をまとめておこう。ホントは英文をそのままここに掲載したいのだが、アメブロに英文を掲載すると、英単語の真ん中でプツリと改行されてしまったりして、マコトに読みにくくなる。大意でガマンしてくれたまえ。

 ついでに、やっぱりこれはブログであって、「大意」とか「解説」とか言っても、普段どうりのオフザケもたくさん挿入されている。キチンとホントの問題に取り組みたい人は、我々の「過去問解説講座」を受講していただきたい。
コアラ3
(シドニーのコアラ代表 3)

【大意】コゥアーラはオーストラリアの国民的アイコンであるばかりでなく、生物多様性のシンボルでもある。

 オーストラリアには100万種を超える植物や動物が存在し、その多くは世界の他の場所では見つからないものである。希少種も多い。タスマニアンデビル・ワラビー・エミュー・ウォンバット、そして憎っくきカンガルーである。

 毎年何百万ものツーリストがオーストラリアを訪れる。キュートでユニークなコゥアーラを見るためである。日本からは今井クマ蔵なんかもノコノコやってくる。

 しかしコゥアーラの数は減少を続けている。今井クマ蔵に食われたからではない。農地化や住宅地化のために、森林が伐採されたせいである。コゥアーラの生息地の80%以上がすでに消滅しちゃった。

 コゥアーラを守るのが急務なのは、観光業のためだけではござんせん。コゥアーラは国全体の自然の豊かさを示す生物であって、もしコゥアーラの数が減少すれば、それはエコシステム全体が危機の中にあることを意味している。コゥアーラとその生息地を守ることは、同じエコシステムの中で生きる他の動植物を守ることでもあるのでござるよ。

 コゥアーラの数は少しずつ減り続けている。農地化・宅地化・狩猟・疾病・山火事などが原因だ。都市化と農業の発展のせいで、生息地はますます小さく寸断されてしまった。

 コゥアーラはユーカリの葉っぱしか食べない。1日で何と1キロものユーカリの葉っぱを貪り食う。1日で生牡蠣40個や、ステーキ500グラムを喰らう今井クマ蔵といい勝負だ。

 コゥアーラは夜行性である。しかしコゥアーラの場合、1日のうち18時間から20時間を寝て過ごす。いやはや、要するにずっと眠りこけている怠け者だ。

 ユーカリの葉っぱは有毒であるが、コゥアーラの消化システムはその有毒物質を除去し、最大限の栄養素を吸収することが出来る。しかしユーカリの葉を食べてもたくさんのエネルギーは得られない。だから1日のうちのほとんどをあまり活動的に過ごせず、眠るしかないのだ。

 もしも森林の一定地域がいっぱいになれば、コゥアーラの中には別の森林に移動しなければならなくなる者もある。こうしたコゥアーラはさらなる難問に直面する。移動中にクルマにひかれたり、犬やキツネに襲われたりする。

 Stress, injury, or lack of food may make koalas vulnerable to disease. 森林の伐採とともにこうした難問もあって、コゥアーラは今や危険にさらされ、保護が必要な状況にあるのだ。
コアラ4
(シドニーのコアラ代表 4)

 ま、以上のような大意の英文に、設問が6つついている。そのうちのいくつかを紹介しよう。
【設問4】コアラがユーカリを主食とすることと長時間眠ることとの間の関係を,本文に即して,65字以内の日本語で述べなさい。

 こりゃカンタンだ。大意のうち、下から3つ目の段落を要約すれば、たちまち誰でも正解を導ける。

【設問5】最終段落の第1文を日本語に訳しなさい。

 おお、これもカンタンだ。
主語はStress, injury, or lack of food「ストレスやケガや食料不足が」
残りは第5文型でmakeがV、koalasがO、vulnerable to diseaseがC。「コアラを病気にかかりやすくする」。

 以上をまとめて和訳すれば、「ストレスやケガや食料不足のせいで、コアラは病気にかかりやすくなる」。問題文全ての中で、最も和訳しやすいセンテンスといっていいぐらいだ。
コアラ5
(シドニーのコアラ代表 5)

【設問6】英文本文のタイトルとして最も適切なものを次の(A)~(F)の中から一つ選び,記号で答えなさい。
(A) Clearing of Trees in the Koala Habitat
(B) Destruction of Australian Rainforests
(C) Ecology in Australia
(D) Extinction of Wildlife in Australia
(E) Protection of Australian Rare Animals
(F) Understanding and Preserving Koala Ecosystems

 これが最も組みしやすい問題。だって諸君、これだけコゥアーラ♡コゥアーラ♡コゥアーラと連呼した文章のタイトルに、まさかKoalaの一言を入れないわけにはいかないじゃないか。選択肢を見て、Koalaという単語があるのは(A)と(F)のみだ。

 あとは(A)の「木の伐採」がテーマなのか、(F)のエコシステムの理解と保全がテーマなのか。そんなの誰だって分かるはずだ。もちろん(F)が正解でござるね。

 諸君、旅行記と名づけたわりに、北海道大学の問題の紹介に終わってしまった。しかし許してくれたまえ。センター試験の結果で受験生諸君が右往左往しているのを知っていながら、入試問題と完全にかけ離れたブログにすることは、今日のワタクシにはとても出来なかったのだ。

 そしてもう1つ、こうしてコゥアーラどんたちの危機の本質を知っていただくことも、シドニーで直接コゥアーラ代表2名に面会してきた今井君の使命でもあるわけだ。早く第1志望に合格して、眠たげな可愛いコゥアーラ諸君を守る活動に参加してくれたまえ。

1E(Cd) Midori & Mcdonald:ELGAR & FRANCK VIOLIN SONATAS
2E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9②
3E(Cd) Alban Berg:SCHUBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
4E(Cd) Richter & Borodin Quartet:SCHUBERT/”TROUT” “WANDERER”
5E(Cd) Akiko Suwanai:SOUVENIR
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