Mon 171127 ボルサリーノ/ベンタン市場/回転アジア/氷が危険(速攻ホーチミン6) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 171127 ボルサリーノ/ベンタン市場/回転アジア/氷が危険(速攻ホーチミン6)

 20世紀がどんどん遠くなる。「お帽子といえば、ボルサリーノ」「誰が何と言ってもボルサリーノ」だったのに、そのボルサリーノの破産手続きが始まってしまった。

 映画と言えば「カサブランカ」であり、カサブランカと言えばハンフリー・ボガートである。彼が映画かぶっていたのも、ボルサリーノ。2017年1月、今井君は激しい口内炎に悩まされながらも、カサブランカを訪問した。列車の狭いコンパートメントで、ボガートどんの勇姿を思った。

 1970年代の日本で、沢田研二と言ふオカタが「カサブランカ・ダンディー」というタイトルのお歌を熱唱していた。阿久悠作詞。「ボギー、ボギー、あんたの時代はよかった」の一節、「ボギー」とは、ボガートの愛称である。

 阿久悠どんと沢田研二どんによれば、「聞き分けのない女のホホを、1つ2つ張り倒して、背中を向けてタバコを吸えば、他に何も言ふことはない」。おお、そりゃほぼ&ほぼデートDVでござるよ。いけません&いけません。

 しかし諸君、その時のボガートがかぶっていたのが、ボルサリーノのお帽子。マッチョ系というか、共和党タイプというか、要するにその種の男子が愛用してきたのが、ボルサリーノなのである。

 会社名がそのまま映画のタイトルにもなった。アラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドが果てしない殴り合いを演じる。冒頭シーンでは不気味なほどケンカに強かったはずのアラン・ドロンが、殴り合いになると、実は大したことないことにガッカリさせられる。
ハンチング
(ワタクシが愛用するボルサリーノ)

 しかしとにかく「マッチョ系ならボルサリーノ」。一種の象徴的アイテムなのだ。だから「インディ・ジョーンズ」のハリソン・フォードもボルサリーノ。ついでに、日本の副将軍・アソーさんもボルサリーノ。ボルサリーノさえかぶればアラ不思議、みんなダンディに変身できる。

 別に「だから」と言ふわけではないが、今井君もボルサリーノの愛用者である。ボーシぐらいかぶらないと、楕円形が目立ちすぎる。キウィやサトイモが街を闊歩していると、目撃した人の驚嘆ぶりがSNSに溢れかえることになる。

 そこで今井君は、10年ほど前からボルサリーノを愛用中。モトはグレーだったのだが、愛用しすぎてアタマのアブラがボーシに染み込み、気がつけば少し茶色く変色して来た。「そろそろ新しいのを買わなきゃ」と思っているうちに、ボルサリーノが破産しちゃった。

 ただしコイツは冬用のボーシ。ムワムワ蒸し暑い9月のベトナムには、ボルサリーノではなくて、むかしむかし沖縄で購入した(という記憶のある)ゴルフ用のお帽子をかむって出かけた。どんなお帽子か確認したいヒトは(そんなに多くはないだろうけれども)、「Thu 171123 速攻ホーチミン3」を参照してくだされ。
市場
(ベトナム・ホーチミンシティ、「ベンタン市場」を訪れる)

 さて、そういうおボーシをかむったベトナムのサトイモ君は、とりあえず「ベンタン市場」を訪問することにした。ワタクシは、どこの国でも市場が大好きなのだ。

 5年ほど前のアテネでも、一番気に入ったのはモナスティラキの市場だった。ブダペストでもマドリードでも、バルセロナでもリヨンでも、何が何でもまず市場を訪ねなければ、街の本質は分からない。

 アテネの市場の精肉売り場では、「何やってんだ、このウスノロ!!」「どけよ、バーカ!!」と罵声を浴びせられたが、そのぐらいの激しさがいいじゃないか。ボルサリーノのハリソン・フォードが「観光客の来るところじゃないぞ!!」と絶叫するシーンがインディー・ジョーンズにあったけれども、地元民の市場は、まさにそれである。

 しかしホーチミンのベンタン市場には、そのレベルの激烈な魅力はない。大量の中国人観光客が、破格の安売り商品を大量に買い込んでいるだけである。懐かしの「爆買い」は、日本では終息し、今はベトナムで火がついているようだ。

 ベンタン市場周辺で、「何かもっと面白いものはないか?」「爆買い以外の感動はないか?」と、鵜の目&鷹の目でしばらく歩き回ってみたが、うーん、アテネのモナスティラキに匹敵する見ものには、なかなか遭遇しない。
お肉
(回転アジア「KICHI・KICHI」で豪華お肉を追加する)

 やっぱり、アジアなのである。あまりに近いのである。あまりにそっくりなのである。「何だ、秋田市民市場と同じじゃないか」「何だ、アジアって1つじゃないか」であって、モロッコやキューバみたいなギュッと強烈な感激はなかなか得られない。

 ま、無理やり「地元の店でメシを食ってみる」という手がないこともない。ほぼ地べたに近い高さの低い椅子。黄緑色のプラスチックの食器。アルミのテーブル。テーブルに付着した分厚いホコリ。至近距離を走り回る無数のバイク。これなら間違いなく感動できそうだ。

 しかしこの段階のワタクシは、ベトナムに到着してまだ18時間しか経過していない。何もそんなに無理する必要はない。というか、あんまり頑張りすぎると、お腹をこわす可能性だってある。

 諸君、事前に読みすぎたネット情報では、「お腹をこわした経験」「アメーバ赤痢にかかる危険性」について、マコトに赤裸々な告白が多かった。

「サラダを食べてはいけません」「プールに入ってはいけません」。サラダを洗った水、プールで思わず飲み込んじゃう水、その程度でお腹を強烈にこわしちゃった経験を、綿々と綴った記事が溢れかえっている。
キチキチ
(回転アジア「KICHI・KICHI」を試すことにする)

 だとすれば、何しろ「全身これ繊細」、繊細きわまるサトイモ君なんかが、あわてて黄緑色の食器からフォーなんかをズルズルやれば、テキメンにポンポンをやられるに決まっている。もしも激しくゲリッちゃったら、旅の感激どころの話ではない。

 そこでワタクシは、慌てずゆっくりホテル近くまで引き返し、旅の初日の晩飯は「ヴィンコムセンター」内のフードコートで済ませることにした。回転寿司屋もあれば、韓国系 ☞ それなりの焼肉屋も揃っている。

 勇んで選択した店は、「KICHI・KICHI」。看板のサブタイトルには「EXPRESS」「ROTARY」「HOTPOT」とあって、要するに「回転アジア鍋料理」なのである。

 この種の店と最初に出会ったのは、7年前のドイツ・ミュンヘンである。寂れた街はずれに寿司屋・インド系カレー屋・中華料理店があって、その並びに「回転アジア」と言ふ看板を発見した。

 2015年12月、同じドイツのライピツィヒで、「おにぎり」という赤提灯がたくさん揺れているのを発見、同じタイプの「回転アジア」であった。回転寿司屋のベルトコンベヤに、アジア独特の食品がのっかってグルグル回っているのである。

 韓国色が強ければ、生々しいキムチも回っている。タイ色が濃厚ならタイの食品、中国色が強ければ中華系の食品、日本色が濃厚なら、もちろん寿司の比率が高くなる。
回転
(ありとあらゆる食材が回転している)

 ホーチミン「KICHI・KICHI」は、特に「どこの国系」はナシ。得体のしれないいろんな肉も回っているし、生タマゴやらお刺身やら中華麺やら、野菜やらイカやらエビやら、何でもかんでもお皿に載ってグルグル回っている。

 中華麺は「出前一丁」か「明星チャルメラ」を1/2にパキッと割ったものもあれば、生麺も一緒にグルグルやっている。回転寿司の要領で椅子にチョコンと座ると、目の前には直径20cmぐらいの深い鍋があって、そのお鍋に食材をドボン&ドボンと落とし、自分でグツグツ煮て食らうという趣向である。

 回っている肉だけでも十分だが、別料金で豪華なお肉も注文できる。しゃぶしゃぶみたいな要領であって、実際に注文してみると、おお、なかなか豪華なお肉である。あっという間に1皿平らげて、あとは回転お肉で間に合わせることにした。
ホットポット
(ホットなポットにお肉を投入する)

 それにしても、頭の中は「危険です」「ご用心」のゲリッちゃう系ネット情報でいっぱい。目の前を回る生タマゴ・生イカ・生エビ・生肉、全て熱湯の中で思いっきり煮てから食するとは言え、めいめいがみんな「ワタシを食べると危険ですよ」とさえずっているような気がして、なかなか手を出しかねる。

 ビールは、何と常温である。氷のタップリ入ったグラスを一緒に出てきて、「ビールはその氷で冷えるだろう」というスタンス。しかし諸君、ネット情報では「その氷が最も危険」であって、氷こそお腹を交わす元凶と書かれている。

 向かいのテーブルには、いかにも常連らしく、店員と笑顔で語り合うオジサマ。生タマゴをナンボでもガッツリ、別料金のお肉なんか一切注文せずに、自信タップリで回転お肉や回転海鮮をワシワシ。さすが地元民、こんなに自信に満ちたオジサマを、今井君は日本でも見たことがない。

 こうして諸君、生ぬるいビールを3本も4本も飲み干し、回転お肉で破裂しそうになったお腹を抱えて、ベトナムのサトイモ君は大満足。「また来よう!!」と自らに誓って、夕暮れのサイゴンに再び足を踏み出したのであった。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 6/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 8/10
6D(DMv) SNOWPIERCER
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