Tue 150908 地中海岸を走る ニース到着 エズ村とシャトー・エザ(また夏マルセイユ15) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 150908 地中海岸を走る ニース到着 エズ村とシャトー・エザ(また夏マルセイユ15)

 マルセイユからニースまでは、TGVで2時間半。ニースを訪ねるのは8年ぶりだが、ノロノロ運転の新幹線にどうも覚えがあると思ったら、盛岡から秋田までの秋田新幹線「こまち」がまさにこの感覚である。

 もっとビュンビュン高速で走る能力があるのに、インフラを整備してもらえなかったばかりに、田舎の風景の真ん中でフテくされ放題にフテくされ、マコトに不承不承にチンタラ&チンタラ走っていく。

 さっきまで時速300kmで疾走していたのに、厳しい速度制限が課されていて、最高でも130km/hしか許されない。能力の半分も発揮することを許されない時、ヒトでもクマでも電車でも、ぷっくり膨れっ面でムクれてみせるしか鬱憤の晴らし方はないのである。

 ま、秋田新幹線「こまち」に比較すれば、まだニース行きTGVのほうが恵まれていて、それは爽快な車窓風景にある。マルセイユを出たTGVは、自らに課された速度制限にムクれながらも、海辺にズラリと並んだヨーロッパ選りすぐりの高級リゾートを走っていけるのである。
絶景
(鷲の巣村・エズからの絶景)

 トゥーロンまでは、カシスとかラ・シオタとか、プロバンスを代表するリゾート。トゥーロンを出ればもう「コート・ダジュール」であって、最高級リゾート ☞ サントロペの経由地であるサン・ラファエルからは、息をのむほど鮮やかな赤い岩の海岸に、これまた息をのむ青い海の波が打ちつける。

 やがてTGVはカンヌに到着。実はこの辺から「もう飽きた」「そろそろいい加減ニースに着いてくれないかな」と、ウンザリした気分になるのであるが、通路の反対側に席を占めたドイツ人家族の興奮ぶりを眺めていれが、退屈はなんとか凌げるのであった。

 そりゃ興奮もするだろう。この海の青さは、ドイツの北海沿岸とは比較にならない。一昨年はフランスのルアーブルで、昨年はオランダのスケベニンゲンで、荒れ放題に荒れた北の海を見てきたばかりだ。地中海リゾートの海を見て、ドイツの人が心の底から熱くなるのは当たり前である。

 4人家族のうち、最も激しく盛り上がっているのはパパである。40歳代後半か。息子と娘は中学生ぐらいで、「パパといっしょにハシャぐ」ということに激しい羞恥を感じる年頃。コドモたちに無視されつつも、パパは満面の笑顔で車窓の写真撮影にいそしんでいた。
エントランス
(シャトーエザ、エントランス)

 ママはマコトに賢そうなヒトで、マルセイユから延々と2時間、真剣に読書に励んでいる。タマに視線をあげて、カンヌからアンティーブにかけての海岸線に目をやるが、パパみたいにダラしなく興奮したりはしない。

 アンティーブはかつてピカソが大活躍した街であって、ガイドブックによれば「アンティーブを訪れるヒトは、ピカソ美術館だけが目的である場合も多いが…」とある。いやはや、絶対にそんなことはないのであって、今回の旅でチャンスさえあれば、クマ助はアンティーブで丸1日、海を眺めて過ごす計画であった。

 ニース到着、11時すぎ。ドイツ人家族はちょうどセンベイ1袋を4人で食べ終えたところであった。一応「センベイ」と書いておくが、見た感じはポン菓子、漂ってくる香りは海老煎餅。この翌々日、リヨンから帰る電車でも、フランス人カップルがマコトに楽しそうにパリ&ポリやっていた。

 そんなに旨いなら、ぜひトライしてみたいじゃないか。実はこの後、マルセイユのスーパー2軒で血マナコになってこのポン菓子&海老煎餅を探しまわり、ついに発見して購入してみたのであるが、いやはや、何の味もしない。お麩を煎餅かポン菓子の形に固めた類いのものにすぎなかった。
テラス
(絶景を眺めつつ、テーブルに案内されるのを待つ)

 8年ぶりのニースに到着して、クマ助は直ちにタクシーに乗り込んだ。久しぶりのニース観光もいいが、ここからタクシーで30分ばかり山の中に入った所に「鷲の巣村・エズ」という集落があって、その超有名店「Château Eza」にランチの予約をしてきたのである。

 鷲の巣村とは、8世紀から17世紀ごろにかけて、地中海岸の険しい山の上に無数に作られた村のことである。海岸には、北アフリカからの海賊が頻繁に押し寄せる。家は焼かれ、ヒトは暴行と殺戮の餌食になり、奴隷としてチュニスやアルジェの奴隷市場に売られ、果てしない奴隷労働を強要される。

 そういう時代が1000年も続いて、人々は海岸線から離れていった。険しい山の上に上がり、海賊から見つけられずにヒッソリ暮らせる小さな村を形成する。さすが雲霞のごとく押し寄せる海賊も、海抜400メートルまで一気に駆け上がって金品を強奪し、ヒトを奴隷にして連れ去ることはしない。

 つい半年前、ナポリ周辺各地を訪ねて、かつてサラセン海賊を見張った「サラセン人の塔」が林立しているのを見てきたばかりだけれども。コート・ダジュールもまた同じ運命に1000年もさらされてきたのであった。

 地図を見れば、この地域はシチリア・サルデーニャ・コルシカの3つの島によって、北アフリカとは厳然と隔てられているのが分かる。しかし諸君、そのシチリアもコルシカもサルデーニャも、すべてサラセン勢力の手に落ちてみたまえ。3島全てが海賊の砦になって、海賊は無数に出現しつづけたのである。
ロゼ
(エズでもやっぱりロゼワインが主流)

 いやはや驚くべき歴史であるが、その鷲の巣村エズがこの十数年、一気に脚光を浴びるようになった。日本でも雑誌「CREA Travellers」の表紙を飾って以来、「ニースを訪れたら、もちろんエズもMust」と考えられるようになったらしい。

 8年前、ニースに10日滞在したクマ助は、乗合バスに乗って初めてエズを訪問。山のテッペンからの地中海の眺めに感激したものだが、「高級レストランのランチを予約」などというコマシャクレタ行動とはまだ無縁であった。

 エズでタクシーを降りると、すぐ目の前に「ニーチェの道」の看板を発見。8年前、この看板を信じたクマ助は、21世紀のニーチェになりきって山道をどこまでも海岸に向かい、「あと50メートルで海岸か」という所で、「実は行き止まりである」という恐るべき絶望的事実を突きつけられた。

 その「ニーチェの道」の顛末については、このブログですでに2度にわたって詳細を記している。興味のあるヒトはお隣の欄「旅行記・ウワバミ文庫」から「ヨーロッパ40日の旅」をクリック、「Sun 140413 鷲の巣村エズ ニーチェの道で途方に暮れる(ヨーロッパ40日の旅 拡張編2) 」を熟読していただきたい。

 もちろん、今はもうあの「行き止まり状況」は打開されているのかもしれない。しかし諸君、8年前のクマ助は、標高400メートルの山道をほぼ海岸まで降り、そこで「行き止まり」を確認し、8月の炎天下、まさに熱中症の危険をおかして、再び400メートルの山を一気に登りきったのである。
カフェとお砂糖
(エスプレッソとお砂糖がなかなかオシャレである)

 懐かしいといえば懐かしい、おぞましいといえばおぞましい。ニーチェの道の入口を眺めつつ、思わず口をついて出たのは「クワバラ&クワバラ」である。「こんな山道に挑戦してスズメバチ軍団にでも襲われたらどうすんだ?」と冷や汗を垂らしながら、高級レストラン「シャトーエザ」を目指した。

 5つ星+Lの超高級ホテル&レストランではあるのだが、「有名になるのが早すぎた」「あんまり有名になって、自分たちでも慌てふためいている」という類いの店がよくあるものだ。シャトー・エザもその表現が当たっていたようで、従業員がまだこの大繁盛に対応しきれていない。

 あらゆる要求を、何度も繰り返さないとならないのは、お客としてマコトにメンドーである。ワインも、それを冷やす氷も、お願いしても従業員がすぐに忘れてしまう。

 2度も3度もお願いして、やっとお願いしたものがやってくるのだが、その時はもうタイミングを逸している。別のテーブルでは、なかなか料理が来ないのでイライラしたオカタたちが、苛立たしそうに文句を言いはじめた。

 料理それ自体も、沢尻エリカさまよろしく「別に♨♨」と言うか、オシャレすぎてポンポンが一杯にならない。このクマ助が料理の写真も掲載せず、「おいしゅーございました」のヒトコトも書かないとすれば、その料理の中身については「推して知るべし」としか言いようがないじゃないか。

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