Thu 090528 大量のハムエッグ、タマゴ6個分 トマトで煮込んだ具だくさんスープ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 090528 大量のハムエッグ、タマゴ6個分 トマトで煮込んだ具だくさんスープ

 大学生当時によく作った料理は、他に3~4種類(昨日と一昨日の続きです)。1つは「トマトで煮込む、具だくさんスープ」。自称「鳥のエサ」というのもあったし、ハムを焼いただけの「ハムステーキ」というのもあった。ハムステーキは、日曜日の大量の買い物(Fri 090522参照)のあとで10日近くが経過し、そろそろハムの消費期限が迫ってくれば、その消費期限との戦いに確実に勝利するために最も有効な方法。タマゴの消費期限も同時に迫ってきていれば、ハムエッグに姿を変えるが、この場合「消費期限との戦いを一気に勝利に導く」という目的が災いして、「焼いたのはいいが消費しきれない」という悲劇を招くことが多かった。


 考えてもみたまえ。昔のスーパーでは、今みたいに「タマゴ4個パック」「2個パック」などというエコと単身者に優しい売り方はしていない。最小でも「6個パック」。6個をパックで買えば、消費期限も当然6個セットで迫ってくる。すると、戦いでの勝利だけを目指す軽率な戦士(私のことであるが)は、フライパン上に「残ったハムありったけ+タマゴ6個をぶちまける」という非常識な行動に出る。軽率もいいところであるが、その軽率を叱る上官もいないし、押しとどめる同僚も、諌める部下も存在しないのが、この戦いの悲しさである。

 

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(特製和菓子・とらロール 2)


 我が戦友・黒こげフライパン君も、電熱器くんも、意地でも融けないマーガリンちゃんも、まあタマゴぐらいなら何とか「熱によるタンパク質の固形化」に成功するし、ハムを「焼く」という所まではキチンとできないにしても、まあいくらかホットにすることはできる。にっくき東京電力が不承不承に供給してくださる600Wの電力を駆使して、見よ、フライパンの中にはありったけのホット・ハムとタマゴ6個が固まった、巨人の朝食のようなものが完成する。


 「ロッキー」の中で(ただし正確には「ロッキー3」の中で)、シルベスター・スタローンが朝ムックリ起きるなり、ビールのジョッキか何かに生タマゴ5個を割り、それを一気に豪快に飲み干し(ただし1個分ぐらいはTシャツにダラッとこぼし)、観る者を唖然とさせつつ丸1日の筋トレに出かけるシーンがあるが、それとは全く別の話である。


 松和荘の台所には、フライパンの中の化け物を呆然と見つめつつ、しばし立ち尽くす若き日のクマさんがいる。これを「他には何もなし」「パンなし(6枚ともとっくにカビている)」「サラダなし(レタスはワカメの色に、キュウリはコンニャクの手触りに変じている)」で、ひたすら同じ味と同じ食感で、すべて平らげなければならない。私が決定的に酒好きになったのはこの頃であるが、おそらく塩とコショウ(マコーミックのブラックペッパー)を大量に振りかけたこの6つの目をもつ怪物は、酒でもなければ完食なかったからである。

 

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(ベンツタオルの上の「とらロール」)


 「トマトで煮込んだ具だくさんスープ」は、新聞の「男の料理・簡単レシピ」か何かの入れ知恵である。数日前に書いた通り、当時の首都圏の水は信じがたいほどの泥臭さとカビ臭さでたいへんだったのだが、もしも水を使わずに「トマトで煮込む」などという離れ業が本当に可能なら、あの恐ろしい水道水のカビ臭に悩まされずに済む。


 そのことだけにカッとなって、「4~6人分」を一気に作るのがまたバカげているのだが、カビ臭い水にさえ悩まされなくていいのなら、そんなことはどうでもいい。詰め込んだ材料が鍋のてっぺんまで首を出して、「スミマセン、ちょっと狭すぎると思います」「野菜や肉の人権も考えてもらわないと困ります」と盛んに抗議の声を上げているのは、一切聞かなかったことにする。


 鶏モモ肉、タマネギ(みじん切り)4個、椎茸、ピーマン、イカ、その他「入りたくない」といって押し返してくるそういう生意気な連中を、力ずくで鍋に押し込んで、最後にトマト4個を詰め込む。詰め込んでも入らなければ、「どうせすぐに煮くずれて水の代わりになるのだから」ということで、トマトをみじん切りにして具材のすき間すき間にはめこんでしまう。「煮ればみんな液体化して減るだろう」「煮くずれれば、口答えしなくなるだろう」という、たいへん結構な発想があるわけだ。


 あとは、時間との勝負。ただし、普通の時間との勝負ではなくて、電熱器クンに東京電力めが恵んでくれる600Wで「果たしていつまでかかるやら」「何時間でトマトが水に変わるやら」「それに耐えていけるかどうか」という勝負。これに勝利するのは、おそらく約2~3時間経過後なのである。

 

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(ちぢんだ「とらロール」)


 ただし、何度もやってみたのだが、トマトだけで煮汁が確保できるわけでもなかった。一計を案じて「ならばトマトジュース一缶を加えよう」と思いつく。ひと煮立ちして、鍋の底が焦げはじめ、ビーマンとタマネギが絶叫しながら炭化していくのを食い止めなければならないのが1時間後。ここで、「よしよし待っていたぞ、今回は抜かりなし」、そうほくそ笑んで、トマトジュースを一気に注ぎ込むのである。
 もともとトマトはキライ、トマトジュースはもっとキライ、私の一生でトマトジュースの缶を手に持ったのは、あの料理を作った10回(!!!)ほどに限られる。一気に鍋が冷え、電熱器は冷却の急激さにムクれ、「こんなに盛り上がっていたのに、どうして盛り上がりに冷水を浴びせるようなことをするんですか」と抗議する。再び熱し始めるのに30分もかかり、浮き立っていた戦士の心も急激に冷めていく。
 しかし、そうした悪戦苦闘を経て出来上がった鍋いっぱいの野菜の残骸は、これは今思い出しても「結構いける」と言っていいものだったと思う。ま、レシピになかったイカがいいダシになっていたんですかねえ。

1E(Cd) Hilary Hahn:BACH/PARTITAS No.2&3 SONATA No.3
2E(Cd) Kirk Whalum:COLORS
5D(DvMv) THE GODFATHER partⅡ 2/2
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