Fri 090522 学部時代、「マルエツ」でどんな買い物をしたのか 「水を買う」以前の泥臭い水 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 090522 学部時代、「マルエツ」でどんな買い物をしたのか 「水を買う」以前の泥臭い水

 では、そうまでして(どこまでいっても昨日の続きです)学部時代の松和荘で、いったいどんな料理を作っていたというのだろう。日曜日の午後には駅前のマルエツで買いだめをする。毎週レジ袋2つ満杯になるほど安物を買い込んだ記憶があるから、買い物をするときだけは、料理ということにそれなりに熱意があったのである。飲まない牛乳1リットルパックを2つ。缶詰メーカーの国分かSSKが作っていた、粒入りオレンジジュース「こつぶ」は、必ず1缶88円の特価だったから、これも4缶。


 野菜を食べなければならないから、大嫌いなトマト4個、小キライなキュウリ4本。なぜ4個?なぜ4本?かと言えば、もちろん4個パック&4本パックだったからである。タマネギ、鶏モモ肉、豚ひき肉。何だかわからないが、万が一料理するときには使いそうな可能性のかけらが、買い物に夢中の大学生の、前頭葉ではなくて、より原始的な本能をつかさどる脳幹をかすめるのである。炊かないとわかっているコメ、カビが生えるのは運命とあきらめている食パン、しなびるとわかっているリンゴ。2ヶ月後に茶色い水になっているレタス、同じ予想におびえているモヤシ。

 

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(ニャゴ姉さんの代理で、独り占め 1)


 ボンレスハム1パック。スライスチーズ1パック。おそらく絶対食べないことが最初からわかっている納豆4パック。腐らせるということではいい勝負のバナナ、5~6本のを1房。おそらく腐らせるタマゴ6個パック。あとはひたすら冷凍食品。大好きな冷凍グラタン4つ。何に使うか、自分でも全く予測のつかない「ミックスベジタブル」を1袋。


 これにオレンジジュースかアップルジュース1リットル。今ならおそらくミネラルウォーターもたくさん買い込むところだが、昔は「ただの水」をお金を払って購入するという習慣が存在しなかった。今思えば「エビアン」などの基本的なミネラルウォーターが売り出されはじめたのが、ちょうどあの頃。「北松戸のマルエツ」というのでは、売っていたかどうか微妙なところであるが、見たことだけはあったような気がする。大いに微妙で、微妙すぎてうまい例えが見つからないが、もし今で言うなら、浦和か立川の伊勢丹のチーズ売り場で売っているヤギのチーズみたいな感じ。休日のパパが「何もお金を出して、そんなもの買う必要はないだろう」と言いながら口を尖らせるような商品に過ぎなかった。

 

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(ニャゴ姉さんの代理で、独り占め 2)


 ただ、もしもあの頃ミネラルウォーターがもっと一般的なものだったら、率先して買うのは自分だっただろうというのもまた確かである。1980年代、東京の水道水の耐えられないマズさは、当時同意しない者のいないほどのもの。一口コップから口に含めば、お口に広がる泥臭さとカビ臭さは、一生忘れることの出来ないほど強烈なものだった。それが東京東部ではひどくて、私の記憶では、上野駅構内の立ち食い蕎麦屋と、松戸市全域(金町浄水場の水が蛇口から流れる地域)が一番強烈だった。そういう水だから、せっかくのコーヒーも紅茶も泥臭く、水道水で炊いたコメはカビの臭いが強烈で、飲めず、食べられず、「日本の一番ひどい時代は、あの頃だった」と断言したいほどである。


 同じカビ臭さ&泥臭さを、1993年、日本全域で冷害と旱魃が起こり、タイからコメを大量輸入した年の首都圏で経験することになる。群馬のダムが空っぽになる大旱魃で、首都圏の水道水に渡良瀬遊水池の水が混入したことが原因だったはずであるが、この話は今の話題からそれすぎるから今日は遠慮しておく。ただ、飯の炊ける温かい湯気が泥臭く、炊けた飯をシャモジでかき混ぜると、顔にカビ臭さがモワッとくるのは、大きな不幸である。「赤水」というのも一時問題になったが、何だかゴハンの色が薄赤く見えたりするのも不気味だった。

 

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(気づけば、背後に来ている)


 で、北松戸のマルエツから松和荘までレジ袋で運ばれる商品の話に戻れば、以上のようなものに、おそらく使用されることはないジャム、バター、ハチミツ。何故かさまざまなスパイス類。「マコーミック」というブランドのスパイス類が、いかにも旨そうに並べられていて、どういうスパイスでどういう旨さなのかサッパリ見当もつかないが、何だかたくさん買いそろえて、松和荘の黒電話の横に列を作っているのだった。塾講師や家庭教師のバイトで稼いだ大金は、実はこういうところに浪費されていたのだ。


 マルエツからの帰りは、両手に荷物が一杯である。その重さは想像を絶する。雨でも降れば、これに傘が加わり、レジ袋が両手に食い込んで正直泣きそうである。「鳥獣保護区」の朽ちかけた看板や、得体の知れない神社や、「五味会館」という看板の掘建小屋(実際は市議会議員の事務所)や、早朝にお世話になるビールやネクターの自動販売機や、そういう見慣れたもの全てが、今や不倶戴天の敵にしか見えない。そうやってたいへんな努力をして食品を購入して、どんな自炊をしていたか、もちろんそれは興味深い話に違いないが、その話は明日に回すことにする。

1E(Cd) Candy Dulfer:LIVE IN AMSTERDAM
2E(Cd) Hungarian Quartet:BRAHMS/CLARINET QUARTET・PIANO QUINTET
5D(DvMv) THE GODFATHER
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