Mon 090209 安易な気持ちで浪人するな(2/4) まず、目の前の試験に全力を尽くせ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 090209 安易な気持ちで浪人するな(2/4) まず、目の前の試験に全力を尽くせ

 この時期の新聞はキライである。どの新聞を開いても、浪人生対象の予備校の広告がいっぱいで、現役高校生対象の塾ならいいが、2月のこの時期に「浪人生募集」「高卒生募集」の広告は少し早すぎるのではないか、フライイングなのではないか、少なくとも受験生が夢中で最後の仕上げに励んでいるときに「浪人したら、うちへいらっしゃい」と声をかけるのは残酷すぎないか、そういう疑念でいっぱいになる。もう20年もこういう世界で生きてきた身として、ここで綺麗事を言うのもまた怪しいのかもしれないが、たとえ企業としての生き残りがかかっているにしても、浪人生募集を2月上旬からかけるのは余りいいこととは思えない。「フレーフレー受験生」とか「最後まで諦めるな」「がんばりぬいたキミが誇りです」とか、そんなことを言って笑顔で受験生を送り出しておいて、裏ではコッソリ(というか、堂々と新聞の目立つところや、駅のホームの一番目につく場所に)「新年度生募集」「高卒生クラス、いよいよ募集開始」「春期講習募集開始」「さあ、逆襲だ」「今度は、キミが攻める番だ」とか広告を出すのは、どうも納得できない。「早すぎます、せめてあと2週間待ってあげられないの?」である。

 

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(激寝 1)


 こういうことをいうのは、「じゃ、浪人覚悟で」「この際、ヒトナミ(一浪をヒトナミと読み、「人並み」にかけてみるというイヤな習慣が昔あったのだ。Sun 090118参照)ということもある、浪人して捲土重来を期そう」「今年はチャレンジに過ぎない、本番は来年」などという極めて安易な発想を、若い受験生の胸にいだかせてほしくないからである。


 何よりもまず明らかなことは「浪人覚悟」「来春に捲土重来」という考えをもった途端に、「今年の受験で合格してしまう」という最も望ましい可能性(それがどれほど小さいものであっても)が、その瞬間に音を立てて消滅し、ゼロになるということだ。「合格しなくてもいいや」という萎えた精神が、「意地でも合格してやる」という勇敢な張りつめた精神に勝利できるとは考えられない。「明日やればいいや」「あとでやるからいいや」と一度でも思ったことを、今までの人生で最後までやり遂げたことがあるかどうか、胸に手を当ててよく考えてみるべきだ。同じように「これから1年やるからいいや」「来年でいいや」がうまくいく可能性は極めて低いはずである。


 だから、ここで安易に「じっくり1年やってみよう」などと考えて、安易な夢にくるまってはいけないのだ。「じっくり」「みっちり」「慌てずに」など、経験の少ない若者を慰める言葉はいくらでもあるし、親も教師も、傍にいる人ほど厳しすぎることは言えないものだから、ついつい甘いお菓子のような夢想で受験生をいっぱいにしてしまう。私はいま(あくまで物理的な意味では)傍に切実な悩みを抱える受験生がいないから(この季節の講演会は高2生高1生対象のものばかりなのだ)、冷たく、ごく冷静に、キツい憎まれ口を、躊躇せずに叩いてあげられる。「浪人覚悟」「捲土重来」などと甘いことを言っている諸君は、よく聞きたまえ。

 

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(激寝 2)


「あと1年あるって? ええっ、ウソだろ? 今日の段階で、次のセンター試験まで、残り11ヶ月しかないよ。48週間しかないよ。そんなことにも気がつかないウッカリ君が、厳しい浪人生活に耐えられるものですかねえ。」


「残り11ヶ月って、どういうことか解る? センター試験が英数国理社の5科目として、単純に割り算すれば、1科目2ヶ月なんですよ。数学に2ヶ月しかない。英語も2ヶ月。あくまで単純に言いますが、そのたった2ヶ月で、単語熟語もやって、文法もやって、センターと国公立と私大の読解対策を全部やって、リスニングもやって、英作文対策もやって、それを全部8割9割正解できるところまで上昇させなきゃいけないんですよ。本当にできるんですか? とても『じっくり』とか言ってウデグミしているヒマはないんですよ」


「じゃ、早速一番苦手な数学から始めるとして、数学Ⅰの苦手分野をこれから2~3週間のうちにマスターしてしまいなさい。2月いっぱいで数Ⅰを完成するぐらいでないと、2ヶ月で数学8割9割達成は無理ですよ。ということは、そのぐらいのことが出来ない人は、1年浪人しても、どうせ大したことにはならないんじゃないの?」


 ま、厳しすぎるようだが、「浪人覚悟」と「1年じっくり取り組んで」の甘い囁きの裏にある現実は以上のようなものである。1科目2ヶ月。今すぐ始めて、4月上旬に数学が完成、6月上旬には英語も完成。そのぐらいの厳しいペースで受験勉強に取り組む覚悟がないと、「センターまで残り11ヶ月」という現実を突破することは出来ないのだ。


 実際、高2生諸君は(少なくとも私が講演に出かける校舎の東進生は)すでに全国どこでもとっくにスタートを切って、どんどん単語も覚え、英文法もマスターし、全国800校の校舎の壁には(例えそれが雑居ビルのみすぼらしい校舎であっても)「センターまで残り340日」の貼り紙が、日めくりカレンダーのように飾られて、目の色をかえて受験勉強に取り組んでいる。つまり、「浪人生に負けないように」「現役生がどんどん追いついてきている」のだ。

 

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(激寝 3)


 それなのに、いったい浪人生の予備校のスケジュールは何なのだろう。「4月16日開講」だ? 今年は4月20日が月曜日だから、浪人生本科クラスの開講は、キリのいいところで4月20日までずれ込む可能性だってある。本来なら、すでに1科目完成していなければならない時期に、実にのんびり「開講」である。4月20日なんて、残り9ヶ月、センター試験まで38週しか残っていない、そんな時期になって「開講」とは、冗談ではないか?「 開いた口が塞がらない」とはそのことではないか、だって、その頃には、全国の現役生の多くがとっくに浪人生に追いついてしまっている。


 ゴールデンウィーク間近の「もう手遅れ」の時期になって、講師の自己紹介からゆっくり始まり、英語が完成していなければいけない時期に「5文型」「SVOC」からスタートいた授業は、講師の雑談と自慢と身辺雑記ばかりで、いつまでたっても進まない。1学期のテキストが7割終わればいい方、ひどいときには半分ちょっとで7月が来て、「残りはプリント配布」。そういう世界に入るのは、特にかつてその現場に身を置いていた人間だからこそ、ぜひ「ちょっと待て、と言ってあげたい。」


「いや、3月下旬には春期講習会がある」って? え? は? 春期講習会って、あの自己紹介と雑談で終わっちゃう遊びみたいな5日間? 去年現役生として通った春期講習を思い出して、あの時、力はついたの? 自分に少しだけ厳しくして、この1年のことを思い出してみれば、春期講習から4月中旬の予備校の開講まで、実際には怠け放題怠けていたことに気がついて愕然とする人が多いはずである(明日に続く)。